居心地のいい場所を離れる
「居心地のいい場所(コンフォートゾーン)にいるより、そこを離れて自分を解放する方が好きです」と言う通り、アジアに来たのもコンフォートゾーンを離れるためだった。
Graafさんが2015年にマカオを訪れたのは、マカオ科技大学で「中国文化通論」を教える楊雅雯・助教授とネットで知り合ったことがきっかけだった。
楊雅雯さんが台湾人だと知った時、台湾と聞いて思い浮かぶのは、子供の頃に遊んだロボットの玩具が台湾製だったことだけで、グーグルで台湾について調べたと言う。後に自分が台湾人になるなどとは思いもしなかった。
二人は毎日ビデオ通話をし、2~3時間も話すこともあった。1か月後、一度もアジアに行ったことのなかった彼は、彼女に会うためにマカオを訪れ、3カ月の交際を経て結婚を決めた。まるで賭けのようににも思えるが、「いま思えば、こうして良かったと思います」と言う。
恋で目がくらんでいたという楊雅雯さんは間もなく妊娠し、2016年に娘のSkyさんが生まれると台湾に引っ越すことにした。マカオから台湾に移ることを決めた理由をGraafさんはこう話す。「マカオにはあまり自然景観がなく、面積も狭いので時々逃げ出したくなります。一方、台湾は自然景観や文化が豊富で、人も穏やかです」と。
しかし、楊さんにとってはそれからが大変だった。「人生で最も落ち込んだ時期でした」と言う。子供の頃から成績優秀で、台湾大学の薬学科を卒業後、北京大学で中国文学の博士号を取得し、大学で孟子や荘子の思想を教えていたのが、子育てと家事に追われるようになったのである。実家しか頼れるところはなく、台南の新営に戻ることを決めた。
折り紙は、まさに制限がある中でより大きな自由を探索する過程と言える。