水中文化遺産の博物館を
「動くな!」と、刑事ドラマでは混乱した事件現場に刑事が立ち、息を凝らして散乱した手掛かりに合理的なつながりを見出していく。考古学の仕事は事件捜査によく似ている。
数々の努力の末、ようやく新たな発見があった時、考古学の最も大切な仕事がようやく始まる。専門家たちは、現場の手掛かりの中から目標物の内容と意義を推論し判定し、そこにつながりを見出さなければならないのだ。2020年12月現在、水中考古学チームは、台南の安平、澎湖、緑島などのエリアで97ヶ所の具体的な目標物を発見した。確認後、そのうちの20ヶ所には歴史的な沈没船があり、6ヶ所は文化遺産としての価値が非常に高いとされ、法に従って保護されることとなった。
台湾で正式に水中考古学研究が始まってから今年で13年目になる。臧振華は委託を受けて専門チームを結成し指揮しているだけではない。現在はさらに水中文化遺産に関する教育の推進と産業発展に関心を注いでいる。海外に目を向けると、スウェーデンには沈没船をテーマとしたヴァーサ号博物館、イギリスにはメアリーローズ博物館があり、文化遺産の保存の役割を果たすとともに、教育の機能も果たし、また観光産業の発展にも貢献している。
海底から出土した遺物の処理は容易ではない。洗浄し塩分を除くだけで数年から数十年かかることもある。水中文化遺産保護条約は、水中文化遺産について「原位置保存」を原則としているが、台湾のチームでは、計画に従って指標となる遺物を適度に取り出し、台湾独自の水中文化遺産博物館を設立する準備を進めている。国民に、海底に眠る宝物に触れる機会を持ってほしいからである。
海底から取り出した遺物の洗浄や塩分を取り除く作業には数年から数十年かかることもある。
単純な文物のように見えるが、それぞれの背後には貿易や航海技術、工芸、生活習慣など、豊富な歴史情報が詰まっている。(林旻萱撮影)
映画などの影響で、水中考古学は人々の好奇心をかき立てる。近年台湾で幾度も開かれている水中考古学展には多くの見学者が訪れる。(林旻萱撮影)