小さな風景を大切に
三角地域の民宿「禾楽居」は、大林の生活リズムを体験できる場所である。オーナーで弁護士の劉炯意と妻の謝媛玲は、大林鎮の町づくり運動の先駆者でもある。
ここの朝食は宿泊客が自分たちで作る。民宿では鶏を飼っているので、生みたての卵と畑の野菜を自分で採ってくる。食材の産地と食卓の距離はゼロで、スローフードの精神にかなった最も健康的な食と言える。
民宿の部屋にはエアコンはなく、夏の夜も涼しい風を感じ、窓の外のカエルの合唱を聞きながら寝ることができる。
夜は北勢文化発展協会の劉易錩と一緒に諸羅樹蛙を探しに行く。田舎道を歩いていくと、まず目に飛び込んでくるのはホタルだ。
アオガエルの仲間の諸羅樹蛙は台湾の固有種で、1995年に命名された。最初に発見されたのが嘉義だったため、嘉義の旧地名である「諸羅」の名がつけられた。諸羅樹蛙は生息環境を選ぶが、大林の各地域でその姿が見られることからも、大林の自然保護の成果が見て取れる。
劉易錩は、泥に足を踏み入れることを恐れずに竹林に分け入らなければ諸羅樹蛙には出会えないと言う。そうして静かに待っていれば、鳴嚢を膨らませて鳴く姿が見られるのである。
ゆっくり滞在するスローな旅で、時間をかけて歩いてこそ、非凡な美が目に入る。
人生もまた同じではないだろうか。

大林の商店もガイドに参加し、自分たちの物語を旅行者に語っている。上は「十信鐘錶眼鏡行」、下は「十大珈琲店」。

青空の下に緑があふれる民宿「禾楽居」の一角。オーナーは「大林の生活リズム」を愛する人の来訪を歓迎している。

(右)大林鎮にある樹齢500年のアカギ。見事な枝葉と濃い緑が美しい。