頼みの綱で狙うチャンス
新ブランドが認知されるための最良の方法は、コンペティションで賞を獲得することだ。南投蒸溜所では、海外コンペティションで受賞を狙うべく、10名からなる品評チームを立ち上げた。歴年の各コンペティションの受賞記録や審査員の好みを研究し、毎年ボトリングされる3000丁のオーク樽の中から、年数が経過しているウイスキー樽600丁を選び、うち上位3丁を選んでコンペティションに参加している。
オマーのシングルモルト・ウイスキーは、2014 年以来、ISC、SFWSC、MMA、IWSC、WWA、CMB などの多くの世界的な酒類コンペティションに参加しており、既に200個以上のメダルを獲得した。世界のウイスキーの中で確実に存在感を放っている。
南投蒸溜所訪問の際は、積み重ねられた市価2億元を超えるオーク樽の「壁」も見逃せない。ここには1918年製のソレラシステムPXシェリー樽と記されたウイスキーが貯蔵されている。
シェリー樽の数は希少で、世界でその数がどんどん減少する中、台湾菸酒公司は2015年にスコットランドの蒸留所を出し抜き、スペインで300年近い歴史のある醸造所・ヒメネス・スピノラからシェリー樽一式を購入した。シェリーの熟成地である「へレスの三角地帯」にあるこの醸造所では、オーナーの息子の妻が台湾人ということで、「縁があるから問題ない」と取引が実現した。
この珍しく貴重なシェリー樽に詰まっているのは、2008 年に南投蒸溜所が生産ラインを開発した初年度に蒸留されたウイスキーだ。「天使の分け前」のせいで、樽の中の水位は年々減っていく。2018年以来、ウイスキーは選ばれた4丁のオーク樽からクリスタルボトルに詰められている。各樽にはカスク・ストレングス250本分が入っており、定価は1本1万元だ。樽1丁に200本分しか入らなかった2023年のボトルは、台湾の画家・馬白水の作品、「太魯閣の美」「墾丁」「南海岸」「美濃の村の家」とのコラボレーションデザインが施され、コレクションや投資用として高価値を持つ。現在の市場価格は4本セットで8万元を超える予定だが、市場に出回る前に予約購入で完売してしまったそうだ。
世界のウイスキー市場の先行きを前向きに見込む台湾菸酒公司は、現在13億元を投じてウイスキー蒸留所を建設中だ。3万丁のオーク樽を貯蔵できる尖塔型のウイスキーのシャトー2棟と、消費者が五感で体験できるミニ博物館を併設するとし、多くの「台湾ウイスキーファン」に、台湾の風土に根ざした良質のウイスキーの熟成を楽しんでほしいと、2025年の完成を目指している。
オマー・ウイスキー・ブランドアンバサダーを務める余政彦さんは、毎年約 150 回のテイスティング会で講師を務める。
フルーツウイスキーには、台湾の風土や果物王国としての特長が込められている。
台形のように並べられ、枕木だけで支えられるソレラ1918のシェリー樽の価値は2億元だ。2015年にスペインの醸造所のオーナーが、設置のため台湾を訪れた際、スペインで設置されていた枕木の位置を再現したそうだ。地震の多い台湾で崩れてしまわないのか気になるところだが、あえて動かそうとはしていないという。
南投蒸溜所の蒸留室には玉ねぎ型の蒸留器が4基設置されており、サトウキビの芳醇な甘い香りと、麦芽を蒸留した華やかでフルーティなエステル香が漂う。