希少疾患の診断治療における台湾の実力
医療に国境はない。先端的な診断と治療のツールが開発されれば、世界中の希少疾患患者も利益が得られる。
従来、患者は国際シンポジウムや支援団体から医療やケアの最新情報を得ていた。2000年に希少疾患基金会は、「米国希少病協議会(NORD)」の団体会員になった。2006年には「ヨーロッパ希少疾患団体(EURORDIS)」と相互に会員になり、情報を共有している。世界における希少疾患情報の落差を縮小するべく、ヨーロッパ希少疾患団体の働きかけで、国連も「NGO Committee for Rare Diseases (希少難病に関するNGO委員会)」を2016年に設立している。
健康保険、法令、民間団体の力により、台湾の希少疾患環境の発展に世界が注目している。
曾敏傑は、希少疾患治療薬は特殊なため、健保適用で患者の医療費負担が軽減されたと話す。法令については『希少疾患法』『心身障害者権益保障法』『優先保健法』等が患者に医療、社会福祉、人権の保障を与えている。こうしたことから、希少疾患基金会は国連の希少難病に関するNGO委員会に招かれ、台湾・アジア地域を代表して国連本部で「委員会」設立に立ち会い、米国とEUの代表と共に講演することになった。
基金会は「台湾は国連の2030年までの持続可能な発展目標に、どのような貢献ができるのか。希少疾患に関わるNGOを例として」と題する基調講演で具体的な提言を行なうはずだった。
20年の成果を凝縮した10分間の講演は政治的要因で阻まれてしまった。だが、患者を支援してきた基金会はあきらめることはない。曾敏傑は、国連の招請があったのは、台湾の希少疾患分野における様々な努力が認められ、国際的に注目されていたからであり、我が国の専門性も世界に貢献していることを意味しているという。
着実に患者を支えていれば、台湾は永遠に世界の舞台を欠くことはないと曾敏傑は信じている。他国の経験に学ぶ段階から、台湾らしさのある新しい支援スタイルを作り上げるまで、台湾の希少疾患の医療とケアの経験を、曾敏傑は世界の中で光る一粒の真珠に喩える。
芸術は人の身体と心を癒してくれる。基金会では絵画教室を開き、創作を通して患者の人生を豊かにしている。(希少疾患基金会提供)