アワ栽培の復活と文化の復興
「アワを植えなくなってから、この祭事暦は意味がなくなってしまいました」と、久美小学校のサブンガツ‧タナピマ校長(Savungaz Tanapima、漢名は田春梅)はこう語る。「アワを植えなければ…と思ったんです。アワを植えてこそ祭事暦が伝えようとすることが理解できると」
近年、文化復興運動の高まりで、原住民はアワに関する文化と祭祀に注目し、再びアワを植え始めるようになった。
ブヌン族とツォウ族がともに学ぶ民族実験学校の久美小学校は、5年前から校庭にアワを植え、季節の儀式を授業計画に取り入れてきた。天地を敬い、自然を大切にして、環境の永続性を守る原住民の文化をそこに結び付け、原住民族の歴史、アワに関する知識、アワ栽培などをテーマにして学び、祭事暦を読み解こうとしている。
学校では夏休みにブヌン族5大グループの一つである卓社群 (take-todo)に伝わる「Pasuntamul(感恩祭)」を行い、アワの伝統的な儀式を再現することで学習の成果発表としている。
儀式は地元の長老の祈りで始まる。続いて教師のタンピリクさんが「Andaza(倉入れ祭)」の進行役となると、子どもたちが列を作って収穫したアワ、トウモロコシ、インゲン、パパイヤなどを伝統的な建物に運び入れる。積み上げられた農作物は豊作を象徴するもので、続いて火を熾し、ブタを屠ってその血を戸口の梁に塗る。これは病気や魔物が入ってくるのを防ぐ意味がある。
その後、女子は室内でアワ酒を濾し、男子はアワの豊作を祈る歌を歌いながら、タロイモ畑に入って茎を矢で射る。肉を切り分けて焼き、アワを炊いて食事の仕度をするグループもある。伝統に従って焚き火で炊くアワには、ラードと水を入れ、水分を吸ってモチモチするまでかき混ぜる。
そして天地と万物の霊に感謝し、一族が平和に新しい節目を(あるいは新年を)迎えられるよう、濾しとったアワの酒糟をみんなで天に向かって投げる。最後に長老が古い歌を歌って人々を励まし、戦果を称えてブタ肉を分ける。食べ物を分かち合う、古の共食文化を追体験するのだ。
ブヌン族の「芋射り祭」では、タロイモにエネルギーを注入して収穫が増えるよう、男性が弓矢でタロイモの茎を射る。