食の新たな選択肢に
「世界の人口の5%がベジタリアンですから、もし残りの95%が植物肉を食べるようになれば、環境に大きく貢献します」と、大成グループ「新食成」社の詹金和‧総経理はまず二つのキーワードにふれた。つまり、サステナビリティと市場規模だ。
台湾で一二を争う食品大手の大成は、早くから積極的に植物肉市場に進出していた。2021年にはNeo Foodsを設立、「大成は将来のニーズを早くから見越していました」という。近年、植物肉が国際的に注目を浴びると、マクドナルド、ケンタッキー、モスバーガー、フライデーズ、バーガーキング、スターバックスなどの名だたる飲食店が次々と植物肉を扱い始めた。「技術の大きな進歩で、ぐっと肉の味に近づいたからです。菜食を敬遠していた人も受け入れやすく、食べる人がじわじわ増えています」と詹金和は言う。
確かに台湾では宗教的理由で菜食の人が多く、彼らは豆の風味の強い第一世代の肉でも気にしていなかった。だが、ターゲットをベジタリアン以外に据えるとなると企業戦略も大きく異なる。「我々Neoでは、一般消費者の新たな選択肢としての植物肉であることを強調しています」と詹金和は言う。そのためマーケティングも工夫する。例えば大葉高島屋にあるGino Greenはベジタリアン料理を出す店だが、見かけもメニューも普通のレストランのようにしてあり、常に菜食というわけではない客をターゲットにしている。
Neoは技術面の向上に力を入れ、第二世代の技術をもとに、多種の代替肉を開発してきた。詹金和は「第二世代が大切にしたのは本物の肉そっくりにすることでした。肉の風味や繊維をよく理解した人にしか作れません」これは難しい技術だった。思い通りの繊維や口あたりにするために、温度や圧力、機器の回転速度、水分などの条件を少しずつ変えて実験を繰り返し、繊維の強度も計測してグラフ化し、牛や豚、鶏肉と同様の曲線を描くようにした。大成グループ企画広報マネージャの趙敏夙が詹金和の後を続けて言う。「だから我々がやるのが一番いいのです。一番肉のことをわかっているのですから。大成は台湾の鶏肉の重要なサプライヤーです。肉のおいしさの秘密を最もよく知っています」しかも大成は「美味研究室」を設立、おいしさを科学で追究する。
取材中、Neoのスタッフが牛肉麺や鶏細切り入りライス、ツナのきゅうり巻きを出してくれた。牛肉から良い香りがし、鶏肉はベテラン主婦でも騙せそうな歯ごたえ、ツナの味も本物そっくりだ。味は美味実験室の担当で、加工の最後に酵母エキスで植物肉に風味を加えるという。
「最も難しいのはエビです。味だけでなくプリッとした歯ごたえや、身に赤い筋もつけなくてはいけませんから」「でも間もなく完成です」と詹金和は嬉しそうに語った。
Neo Foodsブランドは肉を食べたい人にもう一つの選択肢をもたらすと語る詹金和。