偏見は理解の無さから
2014年のひまわり学生運動で、朱冠蓁、巫彦徳、張書懐は座り込みに加わった。その間、路上生活者が物資をもらおうとして制止されるのを目にした。物資は充分にあるのに、路上生活者は怠け者、酒を飲んでは騒ぎを起こすといった先入観から、必要とする人に分け与えようとしないのだった。それが朱冠蓁等の関心を引いた。
なぜ路上生活者になったのか。本当に生来の怠け者なのか。路上の生活はどんなだろう。たくさんの疑問と路上生活者を知りたい気持ちが、人生百味の創設者3人を動かした。朱冠蓁、巫彦徳、張書懐が若いアイディアで、今までにない活力を路上生活者の暮らしに注ぎ込む。最初のうちは、余暇を利用してイベントを催し、ウェブサイトを立ち上げ、「リサイクルをお年寄りに」「人生雑貨店」「石のスープ」などのプロジェクトを推進した。イベントの規模はどんどん大きくなり、2015年には共同出資で、社会的企業「人生百味」を設立した。
メンバーが調査したところ、路上生活者の実に8割が働いていた。だが、プラカード持ち、ビラ配り等のアルバイトで得られる賃金では都市の家賃は払えず、路頭で暮らすしかない。
「路上生活を抜け出すことは絶望的です」巫彦徳は言う。一般的な認識「努力しないから路上生活者になる」とは異なる。路上生活者の多くが、社会との繋がりを断たれ、目標を失ったことで、転落したのだという。これは因果関係の既成概念を覆す。忌避・無視・排斥。これが路上生活者に対する社会一般の態度である。貧困を脱するには、社会の誤解を解かねばならない。
「人生百味」は今では人気商品をもつ。マレーバクの「LAIMO」「小学校教科書の逆襲」、デザインポチ袋や、イラストレーターと提携した玉蘭花の香りのカードなどだ。