鉄道文化の里としてよみがえる
現在の平渓線に乗ると、右には韓国人、左は香港人、向かいにはシンガポール人が座っていて、十分駅のホームに降り立つと日本人女性のグループもいる。国際的な雰囲気は台北にも勝る。外国人観光客10人に聞くと、8人は天灯を上げに来たと答える。天灯だけでは観光には不十分だが、幸いなことに平渓にはかつての石炭輸送の鉄道があり、線路沿いには昔ながらの街並みが残っている。「平渓線はまるで活きた博物館です。沿線にはポットホールや滝、炭坑跡、山林などがあって、さまざまな景色が楽しめ、天灯も上げられます」と王瑞瑜は言う。
瑞芳を起点とする平渓線は、一度は廃線の話も出たが、多くの人の働きかけで残されることとなった。平渓線は三貂嶺駅で宜蘭線と分岐する。古めかしい魚腹鉄橋を渡るとエメラルドグリーンの川の流れが美しく、大華ポットホールの奇観を通り抜けると、軒を連ねる「十分」の古い町並みへ入っていく。列車の走る音が町に染み込んでいるかのような線路沿いの古い町並みは生活感に満ちている。昔はこの線路沿いで、住民がタケノコの皮を剥いたり、野菜を洗ったり、ビーフンスープや麺を売ったりしていたが、今は天灯を扱う店が多い。観光客は線路上で天灯を上げ、列車が来るたびに蜘蛛の子を散らすように周囲へ逃げる。住民には見慣れた光景で、鉄路局も見て見ぬふりをしている。傍らで見ている者は冷や汗をかくが、これも観光地ならではの奇観と言える。
列車はカーブした嶺脚駅を過ぎ、平渓の町に到着する。台湾では誰もが知っているインスタント麺のCFはこの街で撮影された。「張君雅ちゃん、お家でインスタント麺がゆで上がりました。おばあちゃんが、1分以内に帰るように呼んでいます!」という町内放送が流れると、おかっぱ頭のぽっちゃりした女の子が走り始める。その通りには雑貨屋や菓子屋、農具店、古めかしい医院、豆花店や漢方薬の店が並んでいる。その道をさらに行き、鉄橋を渡ると、理髪店、郵便局、平渓小学校がある。逆方向の石底街に行けば、手作りのタロイモ団子の店があり、基隆河にかかる石底橋の辺りでは、釣りをする人や、子供たちの遊ぶ姿が見られ、まるで時間が止まったかのような感覚を覚える。
古い鉄道の終点、菁桐駅には、1929年に建てられた日本式の木造の駅舎が残されている。菁桐の古い町並みの近くには炭鉱記念公園や炭坑跡、日本風の家屋や石底大斜坑などがあり、100メートル先には太子賓館もある。当初は必要のために建てられたこれらの建築物が、今では貴重な文化遺産となっている。
味わい深い歴史を持つ山間の町、平渓は外国人観光客にも非常に人気がある。