台南の新たな文化スポットに
幼い頃から忠義街の路地で育った呉健豪にとって、鶯料理はもともと生活の一部であった。いかに多くの人の参画を促し、この鶯料理の看板を立て直すかが、彼のチャレンジとなった。
建物の他に、最も有効な方法は食である。呉建豪は、かつて鶯料理の看板料理だった鰻の蒲焼と阿霞飯店の看板である「おこわ」を結び付け、それを桃の葉で包んでおにぎりとすることにした。また、庭園にある樹齢90年のピンポンノキの実を使った季節限定の「ピンポンノキおこわ」もおいしい。「ピンポンノキの実でモンブランも作ってみました。色もきれいでおいしかったのですが、クセがあって口に合わないという人もいて、あきらめざるを得ませんでした」と言う。
料理店の主である呉健豪は、料理に対する情熱と創意にあふれている。利益を出すのは非常に難しいと分かっていながら入札に参加し、古民家修復を専門とする張玉؟Xに表棟の修復を依頼した。予算も当初の400万から1000万に増えたが、乗りかかった舟、と完成まで頑張った。
呉健豪は、建物の細部には言い尽くせない物語があると言う。入り口のカウンターと床の羽の模様や2階の鳥の形の照明、天井の鳥の造形など、いたるところに「鶯」が散りばめられている。
鷲嶺食肆は鶯料理の美食文化の精神を受け継ぎ、新旧が融合した空間に来訪者を招き入れる。そして庭園や建築物の間を歩きながら、音楽会や茶会を楽しみ、名物のおこわを食べ、白蓮霧茶を飲む。雨の日は軒下に座って雨だれの音を聞き、夜は庭園の灯りを愛でる。鶯料理は台南の新たなスポットとなり、歴史空間が再現された。
阿霧飯店が経営する鷲嶺食肆の2階はパブリックスペースで、呉健豪は各界との共同利用を歓迎している。
サツマイモと米で作った「甘藷米金磚」は2018年全国特色米製ギフト賞の3位に入選した。
呉健豪にとって、鶯料理の再生はビジネスであるだけでなく、後の人々に残したいというロマンでもある。(鷲嶺食肆提供)