屏東農業生物科技園区(台湾グリーンバイオパーク)は昨年8月に自由経済示範区の列に加わって以来、ドイツのローマン・アニマル・ヘルスや日本のアリアケジャパン、台湾農畜産工業など17社が入居している。
中でも代表的なローマン社は世界トップ4に入る家禽用ワクチンのメーカーで、投資額は5億台湾ドルを超え、将来的には年間25億台湾ドルの輸出額を台湾にもたらすと見られる。
南台湾に位置する屏東農業生物科技園区は自由経済示範区に加わったことで、どのような魅力を備えることとなったのだろう。
3月中旬、瀚頂バイオ公司は屏東農業生物科技園区で新工場の開幕式を行なった。敷地面積2.38ヘクタールの工場は台湾初の海洋生態循環設備を持つ温室である。
台一グループの許守信董事長と技術開発専門家の頼玨光が共同で設立した瀚頂バイオは、魚類との養殖と海藻や野菜の水耕栽培を一体化して行なう。ウナギやハタなどの高級魚やアツバノリやウミブドウなどの海藻類の他に、レタスや小松菜、春菊、チンゲン菜など、安心して食べられる野菜を育てるという。
魚と海藻と野菜を育てるシステムというのは、生態養殖池と藻類培育池、野菜農場の3つのエリアをつないだもので、魚類養殖エリアの水を物理的濾過システムと生物濾過システム、紫外線殺菌システムに通した後、その水で海藻類と野菜を栽培するというものだ。農薬や化学肥料を使わずに野菜や海草をおいしく育てることができる。
瀚頂バイオの孫凡・総務課長によると、同社は5年以内に魚類750トン、海藻および野菜400トンを生産できるようにし、年間生産高は13億台湾ドルに達する見込みだという。農産物の他に、将来的には養殖プラットフォームのプラント輸出も大きな事業にしたいと考えている。
すでに操業を開始した瀚頂バイオの周囲では各企業が工場を建設している。
農業生物科技園区の総面積は233ヘクタール、現在すでに84社が入居を決めており、まだ10~20社が入居するスペースがある。自由経済示範区の第二段階の計画では、ここをさらに167ヘクタール拡張することになっており、今年その環境アセスメントが行なわれる。
「入居申請案件が増えています」と話す屏東農業生物科技園区準備処の黄金城主任によると、企業にとって自由経済示範区の魅力は、規制緩和によって生じる各種利点である。

屏東農業生物科技園区準備処の黄金城主任は、台湾農業の研究開発の強さに自信を持っている。
ここは台湾で唯一の農業生物科技園区で、もともと関税および貨物税が免除される保税区とされていた。昨年8月に自由経済示範区に指定されてからの最大の強みは、輸入規制対象の原材料を輸入して加工輸出できることである。
例えば、中国大陸からの輸入が禁止されている農産品830品目、あるいは国内産業にダメージを与えるとして輸入が制限されている農産品が、ここでは全数輸出することを条件に扱うことができるのである。
黄金城によると、この規制緩和によって台湾の農産物の加工レベルが向上するが、最大の目的は台湾の農業を国際化する点にあるという。
輸入規制品目の輸入において最も心配されるのは、それらが国内市場に流入することである。農業生物科技園区は他の7ヶ所の自由経済示範区と違って内陸にあり、港湾も空港もないため、その規制は比較的難しい。
そこで、税関と通関貨物・検疫ステーションを設け、審査と電子帳簿をもって原材料の輸出入量を管理する。入居企業が輸入規制品目を原材料として輸入する場合、工場内に「保税区」を設け、入庫と使用の過程をすべてモニタリングする。「製造工程管理」も行なわれ、規制品目を使った製品は全て輸出されるよう監視する。

屏東農業生物科技園区(台湾グリーンバイオパーク)のアジア太平洋アクアカルチャーセンターに最初に入居した福蝦実業公司。自社で飼育したレッドビーシュリンプは国際市場でも人気がある。
ここでは産学協力の条件も整っている。
黄金城によると、台湾の農業技術レベルは世界でも上位に位置する。中南部には屏東科技大学、成功大学、中興大学など30余りの大学があり、いずれも園区産学学会のメンバーで、協力関係が築かれている。例えば、屏東科技大学は農学が盛んで関連学科も人材も多い。高雄医学大学は生薬の研究が盛んでメーカーに協力できる。
現在工場を建設中のローマン社と入居が決まっている農業委員会の家畜衛生試験所は、台湾の動物用ワクチン産業を世界の市場に打ち出すことができる。さらに産学協力を通してワクチン開発人材を100名以上育成する計画もある。
工場建設中の山汰科技(サントワードテック)が園区への入居を決めたのは、土地の取得が容易で輸出に免税措置があり、産学協力の機会が得られるからだという。
同グループは傘下に飲食産業や電子部品包装、食品梱包材などのプラスチック産業を持つ。バイオ部門の鍾朝欽ディレクターによると、同社は日本から技術を導入した野菜工場で寒帯の野菜を育て、傘下のイタリアンレストランに供給する。輸出部門では主にシメジを栽培するという。

ウナギやハタなどを養殖した水を濾過・殺菌すれば野菜栽培に用いることができる。
屏東農業生物科技園区に入居した企業を見渡すと、主な産業は動物用ワクチンと鑑賞魚、農産物加工の三つに分けられる。
動物用ワクチン産業においてはドイツのローマン社が大きな役割を果たす。ローマン社を誘致するために黄金城は6年をかけた。家畜衛生試験所でワクチン開発に従事していた黄金城は、台湾の動物用ワクチン産業を熟知している。ワクチンは非関税障壁の影響を受けにくいため、何としても台湾のワクチンを国際市場に売り出したいと考えていた。「販売ルートが開かれてこそ、研究費を投じることができます」と黄金城は言う。現在、台湾には動物用ワクチンメーカーが7社あるが、大部分は原料を輸出しているだけで、完成品としての輸出はなかなかできていない。国際市場に打って出なければ、研究開発に力は注げない。
だが、台湾の市場は小さく、ローマン社も当初は台湾での工場設立は考えていなかった。豚の数を見ても、台湾には600万頭しかいないが、ベトナムは2400万頭、中国大陸には6億頭いる。
しかし台湾には研究開発面で利点が多い。黄金城によると、世界ではアヒルやガチョウが35億羽飼育されているが、そのためのワクチン開発が進んでいるのは台湾だけなのである。
台湾で8項目のワクチンのライセンスを得ているローマン社は、最終的に黄金城に説得されて屏東農業生物科技園区への入居を決めた。
黄金城によると、ローマン社の進出によって台湾のワクチンは世界市場に出ていくことになり、将来的に、協力するにせよ独自開発するにせよ、園区に入居する他のワクチンメーカー3社も世界市場に進出することとなる。
主軸2:観賞魚のブルーオーション農業生物科技園区のもう一つの重点は観賞魚とその周辺産業で、現在12社が進出している。
すでに完成している「アジア太平洋アクアカルチャー運営センター」の標準的工場の年間賃貸料は100万台湾ドルで、18社が入居できる。
最初に進出した台湾福蝦実業公司は、主に観賞用のエビと魚と、飼料や水質調整剤などの周辺製品を生産している。
同社の廖年靖董事長は7年前に福建省のアモイで観賞用エビの養殖場を開いたが、過当競争に陥って大陸から撤退し、昨年帰国して高雄市大樹区に養殖場を開いた。そして農業委員会に申請して農業生物科技園区に入居し、ここを研究開発と育種、輸出入の中継地とすることにした。
福蝦実業は自社で改良した高単価のレッドビーシュリンプの仲間を30種余り養殖しており、韓国、イギリス、ドイツ、フランス、シンガポールなどに輸出している。その観賞用エビはイタリアのコンクールでもチャンピオンに輝いた。
廖年靖によると、技術面で優位性を保つには海外から良い品種を輸入して交配する必要があり、自由経済示範区であれば輸入規制されている2000種余りのエビを輸入して改良できるため、鑑賞エビ産業には大きな発展が見込める。
「一年半前までは成功するかどうか自信がありませんでしたが、今はあります」と黄金城は言う。台湾の観賞魚産業は研究開発力があるため、シンガポールや香港より条件が良い。
これまで台湾では、海外から輸入した品種が国内に入って生態に影響を及ぼすことを心配し、300~400品種しか扱えなかったため、世界シェアは1%に満たなかった。それが自由経済示範区が設立されて、企業は注文があれば外国の品種を輸入して園区内で扱うことができるようになり、国内に流通する心配はない。これによって4000種もの品種が扱えるようになったのである。
主軸3:農業の高付加価値化原材料の輸入と加工という強みに目を付け、高雄市大樹区で50年の歴史を持つ台湾農畜産工業公司も屏東農業生物科技園区への入居を決めた。同社は3.5億台湾ドルを投じて年末に工場建設を開始し、来年末に完成する予定だ。
同社屏東工場の黄存后工場長によると、従来の屏東工場は建物も古く空間が不十分なため、もともと新工場建設の計画があった。また、農業生物科技園区に入居すれば、輸入加工と輸出の分野を伸ばすことができると考えたという。
同社は香港と中国大陸へ製品を輸出しているが、そのシェアは10%に過ぎない。今後、原価の低い米国産豚肉を輸入してハムやベーコンなどに加工して輸出すればシンガポールや日本の市場も開拓できる。
2000年に農業生物科技園区に入居した万宝禄バイオは、規制緩和を利用して貴重な漢方薬材を輸入加工し、輸出できるようになった。最近は酵素ブランド文化館を設立して観光工場へと転換し、酵素の生産を見学に提供している。
万宝禄の林淑恵董事長によると、酵素は健康産業であるだけでなく、農業や自然保護の向上にもつながる。こうした多元的な経営モデルは発展中の農業生物科技園区に変化をもたらしている。
「農業も工業と同様に転換できます」と黄金城は言う。台湾では従来の方法で農業を維持するのは難しく、加工と国際化に力を注ぐ必要がある。今後は自由経済示範区を活かし、国際化を進めていかなければならない。