主軸1:動物用ワクチン
屏東農業生物科技園区に入居した企業を見渡すと、主な産業は動物用ワクチンと鑑賞魚、農産物加工の三つに分けられる。
動物用ワクチン産業においてはドイツのローマン社が大きな役割を果たす。ローマン社を誘致するために黄金城は6年をかけた。家畜衛生試験所でワクチン開発に従事していた黄金城は、台湾の動物用ワクチン産業を熟知している。ワクチンは非関税障壁の影響を受けにくいため、何としても台湾のワクチンを国際市場に売り出したいと考えていた。「販売ルートが開かれてこそ、研究費を投じることができます」と黄金城は言う。現在、台湾には動物用ワクチンメーカーが7社あるが、大部分は原料を輸出しているだけで、完成品としての輸出はなかなかできていない。国際市場に打って出なければ、研究開発に力は注げない。
だが、台湾の市場は小さく、ローマン社も当初は台湾での工場設立は考えていなかった。豚の数を見ても、台湾には600万頭しかいないが、ベトナムは2400万頭、中国大陸には6億頭いる。
しかし台湾には研究開発面で利点が多い。黄金城によると、世界ではアヒルやガチョウが35億羽飼育されているが、そのためのワクチン開発が進んでいるのは台湾だけなのである。
台湾で8項目のワクチンのライセンスを得ているローマン社は、最終的に黄金城に説得されて屏東農業生物科技園区への入居を決めた。
黄金城によると、ローマン社の進出によって台湾のワクチンは世界市場に出ていくことになり、将来的に、協力するにせよ独自開発するにせよ、園区に入居する他のワクチンメーカー3社も世界市場に進出することとなる。
主軸2:観賞魚のブルーオーション
農業生物科技園区のもう一つの重点は観賞魚とその周辺産業で、現在12社が進出している。
すでに完成している「アジア太平洋アクアカルチャー運営センター」の標準的工場の年間賃貸料は100万台湾ドルで、18社が入居できる。
最初に進出した台湾福蝦実業公司は、主に観賞用のエビと魚と、飼料や水質調整剤などの周辺製品を生産している。
同社の廖年靖董事長は7年前に福建省のアモイで観賞用エビの養殖場を開いたが、過当競争に陥って大陸から撤退し、昨年帰国して高雄市大樹区に養殖場を開いた。そして農業委員会に申請して農業生物科技園区に入居し、ここを研究開発と育種、輸出入の中継地とすることにした。
福蝦実業は自社で改良した高単価のレッドビーシュリンプの仲間を30種余り養殖しており、韓国、イギリス、ドイツ、フランス、シンガポールなどに輸出している。その観賞用エビはイタリアのコンクールでもチャンピオンに輝いた。
廖年靖によると、技術面で優位性を保つには海外から良い品種を輸入して交配する必要があり、自由経済示範区であれば輸入規制されている2000種余りのエビを輸入して改良できるため、鑑賞エビ産業には大きな発展が見込める。
「一年半前までは成功するかどうか自信がありませんでしたが、今はあります」と黄金城は言う。台湾の観賞魚産業は研究開発力があるため、シンガポールや香港より条件が良い。
これまで台湾では、海外から輸入した品種が国内に入って生態に影響を及ぼすことを心配し、300~400品種しか扱えなかったため、世界シェアは1%に満たなかった。それが自由経済示範区が設立されて、企業は注文があれば外国の品種を輸入して園区内で扱うことができるようになり、国内に流通する心配はない。これによって4000種もの品種が扱えるようになったのである。
主軸3:農業の高付加価値化
原材料の輸入と加工という強みに目を付け、高雄市大樹区で50年の歴史を持つ台湾農畜産工業公司も屏東農業生物科技園区への入居を決めた。同社は3.5億台湾ドルを投じて年末に工場建設を開始し、来年末に完成する予定だ。
同社屏東工場の黄存后工場長によると、従来の屏東工場は建物も古く空間が不十分なため、もともと新工場建設の計画があった。また、農業生物科技園区に入居すれば、輸入加工と輸出の分野を伸ばすことができると考えたという。
同社は香港と中国大陸へ製品を輸出しているが、そのシェアは10%に過ぎない。今後、原価の低い米国産豚肉を輸入してハムやベーコンなどに加工して輸出すればシンガポールや日本の市場も開拓できる。
2000年に農業生物科技園区に入居した万宝禄バイオは、規制緩和を利用して貴重な漢方薬材を輸入加工し、輸出できるようになった。最近は酵素ブランド文化館を設立して観光工場へと転換し、酵素の生産を見学に提供している。
万宝禄の林淑恵董事長によると、酵素は健康産業であるだけでなく、農業や自然保護の向上にもつながる。こうした多元的な経営モデルは発展中の農業生物科技園区に変化をもたらしている。
「農業も工業と同様に転換できます」と黄金城は言う。台湾では従来の方法で農業を維持するのは難しく、加工と国際化に力を注ぐ必要がある。今後は自由経済示範区を活かし、国際化を進めていかなければならない。