ただのせっけんも、彰化県の花壇地域のヨモギや台北金山のパチュリ、陽明山の湧き水で作れば、体の汚れだけでなく心も洗えるものになる。
「台湾は山が多く、山にはハーブがあります」江栄原は、この土地から抽出したエッセンスで、大地と植物と人間を潤し、「阿原せっけん」を国際ブランドしたいと考えている。
ロクシタン、クラブツリー&イヴリン、ラッシュ、ボディショップなど欧米ブランドのコスメが並ぶ中、「台湾ハーブの手作りせっけん」と書かれた「阿原せっけん」が目を引く。わずか3年で、品質面でも価格面でも国際ブランドと肩を並べられたのは、ピュアでさわやかな郷土の力による。

阿原せっけんは18の工程を経て作られる。水汲み、ハーブ栽培、収穫、洗浄、処理、油の用意、攪拌、添加、型入れ、熟成、型抜き、乾燥、切断、選別、磨き、刻印、包装、完成。
地元産へのこだわり
飾り気のない素朴な外観、作り手の江栄原(阿原)のワイルドな容貌、淡水の仕事場や金山の工場、わかりやすく落ち着いたデザインなど「阿原せっけん」はナチュラルなイメージを前面に押し出している。
阿原せっけんは台湾の農村ブランドの路線を行くが、値段は「国際的」だ。普通のせっけんは10数元だが、阿原せっけんは台湾製でありながら200〜300元でも売れている。
2008年、阿原がアイディア月餅コンクールに出品した自慢の作品―「鏡花水月」は、蜂蜜、ごま油、ゲットウの葉など台湾産の材料を使ったせっけんだった。満月のように丸く、鶯歌の陶磁器工場で作った箱を加え、1セットで1500元である。
台湾全体を見回しても、台湾製のせっけんをこれほど「崇高な」地位に押し上げたのは、江栄原が初めてである。
江栄原は2005年5月に「阿原ワークショップ」を立ち上げ、自然素材、手作りのせっけんを作り始めた。当初の従業員は4人だったが、江栄原にも意外なことに、現在は64人にまで増えた。

阿原せっけんは18の工程を経て作られる。水汲み、ハーブ栽培、収穫、洗浄、処理、油の用意、攪拌、添加、型入れ、熟成、型抜き、乾燥、切断、選別、磨き、刻印、包装、完成。
身も心もきれいに
当初、江栄原にとってせっけん作りは世間を離れる言い訳だった。それはまた体と心の傷を洗い流すためだった。
「大地のあらゆるものに心があるが、その中で生きている人間たちはよく人の心を裏切る」江栄原の文章からは、彼が過去に受けた心の傷が見える。長年、選挙活動や宣伝に尽力した後、彼は政治家や革新を目指す仲間たちのうそや裏切りに気付いた。各地の文化芸術イベントを受け、心をこめて作品を仕上げても、他人の名前で出品されていたこともあった。
中年になってそうした世界を離れると、彼は力が抜けた。それまでに体に溜め込んだものが一気に噴出し、発疹やアレルギー性皮膚炎などの症状が出たのである。肌は乾燥し赤く腫れ、水泡やかさぶたができ、自分の体に不安を覚えた。防腐剤など化学物質の入った入浴用品に触れると、ひどくかゆくなるのだ。敏感な皮膚を守るため、江栄原は漢方薬を使ってせっけんを作り出した。当初自分用のものだったのが、「阿原せっけん」として発展したのである。「植物のやさしさとパワーが、私たちの体に備わっている治癒力を呼び起こすのかもしれません」と江栄原は言う。
せっけんは、ただ油と水と苛性ソーダ、添加物を混ぜたもので、何も難しくはないと思われがちだ。だが、阿原ほど手をかけている人はいないだろう。
阿原せっけんは台湾の陽明山国立公園の天然の水に、食用油(オリーブオイル、ココナツオイル)に、菊、茶葉、レモン、よもぎ、パチュリなど台湾のハーブを加えたもので、界面活性剤など化学添加物は一切使わない。彼のせっけんはどれも18の工程を経、45日熟成される。水汲み、植物栽培、採集、オイル投入、攪拌、型取り、熟成、型抜き、45日間の自然乾燥、切り分け、刻印などすべて手作業だ。硬化を速めるパラフィンや機械も使わない。
阿原せっけんが台湾の農作物や「土地のモラル」を応援する態度は感動的だ。台湾で生産されている物なら、コストを度外視し台湾の農家から有機栽培の品を買う。彼が購入するのは、菊なら600g150元の中国産ではなく台東産の800元の小菊、洛神花(ローゼル)なら40元の中国産ではなく、150元の花蓮産のものだ。
地元産を求める阿原せっけんの慎重な態度は、台湾の有機栽培の果物やハーブの供給者に間接的に影響している。また地元の農協や荒野協会、オーガニック商品のショップなどにも認められつつある。さらに阿原せっけんと提携し「有機農業の体験教室」などイベントを催す業者も出てきた。江栄原は「面白くなってきました」と笑う。

肌の友達
天然ハーブのせっけんなら、ハーブの栽培や研究は基本だ。
阿原は台湾各地の有機農場と協力し、また自分の農場を創設した。最初の金山農場に続き、2008年には陽明山に20年間休耕していた棚田3ヘクタールを借りた。国立公園のすばらしい自然の中、茶樹、レモン、桑、グァバ、よもぎ、ランタナ、パチュリなど台湾原生のハーブや草花を育てている。
ハーブせっけんには、研究開発の手間も省けない。江栄原の家は漢方一家だ。曾祖父やおじたちは漢方の医師で、祖父は薬草師だった。小さい頃から漢方薬に親しみ、江栄原自身も漢方薬と鍼灸の基礎がある。
阿原せっけんは種類が多い。レモンせっけんは、レモンの天然の殺菌力で古い細胞を取り除き、色素を薄め、毛穴を引き締める。パチュリは、以前はお年寄りが消炎、解熱や解毒、血行改善に使っていたハーブだ。吹き出物や肌のくすみ、肌荒れ、アレルギーの人に適している。
他に、食べると利尿作用のある緑豆とハトムギを用いたせっけんがある。これは色素を薄め、肌をしっとりさせる。また色も香りもすばらしい「紫草洛神」は、消炎作用のあるアラントインが含まれ、湿疹、あせも、かゆみなどに最適だ。
よもぎせっけんは、阿原せっけんのベストセラーで、江栄原の自慢の一点でもある。
「よもぎせっけんは特に変わった所はありませんが、私の製品よりいい物を見たことはありません」阿原では、よもぎの部分ごとに異なる方法でエッセンスを抽出する。根は酒に漬け、茎はゆで、葉は日に当てて乾燥させ、芽の部分は冷凍乾燥させる。さらに相性のいい緑茶を加える。緑茶のカテキンと葉緑素がよもぎの抗酸化成分を引き出すのだ。緑茶、バーベナ、レモングラスなど相性のいいハーブを加えたよもぎせっけんは、湿疹や皮膚糸状菌症に効く。

天然の手作り石けんは一般のものより柔らかく、さまざまな形に作れるので子供たちにも大好評だ。
タイミング
2005年12月、誠品信義店オープン時、阿原せっけんは入り口に店舗をかまえ、高い業績を上げた。オープンから毎月200個のせっけんを売り上げ、その後も成長、2008年には毎月7〜8万個が売れている。
提携業者も増えており、現在台湾全体で400余りのオーガニックショップ、6つの自営テナントがある。海外では、シンガポール、マレーシア、香港、北京、上海に総代理がある。
同業者は、広告業界出身の江栄原は宣伝がうまいだけだと妬む。せっけんをうまくロハスのブームにのせ、台湾ブランドを打ち出しただけだと言うのだ。
江栄原自身は、阿原せっけん成功の最大のポイントをタイミングだと分析する。
「台湾社会が浮つき、自由になり過ぎた後の、反動の時期なのです。阿原せっけんが表現するのは安定の力です」当初「ケアは一種の修行」と宣伝した江栄原だが、阿原せっけん人気のきっかけをこう語る。「私が舞台を作ったのではありません。誰もいない舞台に私が飛び乗っただけなのです」
せっけん作りは難しくないが、江栄原は類似品の出現を恐れない。「心配どころか、歓迎です」阿原は、カンフー映画が流行したから徐克が現れ、アジアがブームになったから張芸謀、李安など映画監督が有名になれたと言う。「多くの人が自然のせっけんを作れば、台湾の土地や川、消費者が恵みを受けるのです」市場が奪われることに不安はないのだろうか。「ブランド力が勝負です」阿原は、ただいい物を作ればいいと考える。

阿原せっけんは18の工程を経て作られる。水汲み、ハーブ栽培、収穫、洗浄、処理、油の用意、攪拌、添加、型入れ、熟成、型抜き、乾燥、切断、選別、磨き、刻印、包装、完成。
台湾のおみやげ
実際、阿原は事業を拡大し始めている。創業5年目で「阿原せっけん」から「阿原ショップ」へ、「ケア」から「ライフスタイル」へと発展し、台湾のセンス、香り、味をテーマにした製品を売りたい考えだ。
現在テスト中で発売間近の製品にはシャンプーや化粧水、クリームがある。また2008年、阿原は台南や宜蘭の農家と黒豆、苦茶の種などの有機栽培を契約、自らタイで砂糖の作り方を学び、醤油、苦茶油、蔗糖など食品の開発も準備中だ。
江栄原は、自分の製品を台湾を代表する「おみやげ」にしたいと言う。琉璃(ガラスの装飾品)やパイナップルケーキ、黒橋のソーセージなどのように、台湾人が海外の客に贈れる代表的な物にしたい。
完全に台湾製の阿原せっけんを、台湾人にとって思い入れがあり、贈る時も誇りを感じられるものにしたいのである。


阿原せっけんは18の工程を経て作られる。水汲み、ハーブ栽培、収穫、洗浄、処理、油の用意、攪拌、添加、型入れ、熟成、型抜き、乾燥、切断、選別、磨き、刻印、包装、完成。

広告マンや文化関係の仕事を経て石けん職人になった江栄原さんは、今までとは別の方法で郷土を愛し、社会に関心を寄せ続けている。各ページの背景写真は彼の作品。

阿原せっけんは18の工程を経て作られる。水汲み、ハーブ栽培、収穫、洗浄、処理、油の用意、攪拌、添加、型入れ、熟成、型抜き、乾燥、切断、選別、磨き、刻印、包装、完成。

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天然の手作り石けんは一般のものより柔らかく、さまざまな形に作れるので子供たちにも大好評だ。

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陽明山にある阿原農場にはブルドーザーや耕運機などは持ち込まないので、開墾には労力と時間がかかる。

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天然の手作り石けんは一般のものより柔らかく、さまざまな形に作れるので子供たちにも大好評だ。

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