台南沙崙のスマート‧グリーンエネルギー‧サイエンスシティにある緑能科技示範場域(グリーンエネルギーテクノロジー‧デモ‧サイト)は、クリーンエネルギー技術を取り入れた未来の生活を展示している。(工業技術研究院提供)
家は風雨を避けるためだけの空間ではなくなり、インテリジェント‧ハウスキーパーへと進化するなどと考えたことがあるだろうか。あなたの暮らしに関わるこまごまとした情報を収集して分析してくれるのである。雨が降れば窓を閉めてくれるのは当然のこと、屋内の二酸化炭素濃度が高ければ自動的に換気もしてくれる。外との気温差が大きければ、省エネを考慮しつつ快適な室温に調節してくれ、設備が故障しそうな時はあらかじめ教えてくれる。こうした「インテリジェンス」は、すでに私たちの暮らしに入り込み、至れり尽くせりの生活環境を実現しつつある。
情報通信技術(ICT)の発達した台湾では、センサー技術やビッグデータ、モノのインターネット(IoT)、5G、人工知能(AI)、AIとIoTの組み合わせ(AIoT)、スマート建材、クラウドコンピューティングなどがインテリジェントビルに応用され、さまざまなソリューションを打ち出すことで、生活の質とサステナナブルな省エネを両立する未来を実現しつつある。

温琇玲は、使用者を中心に据えたサステナブルなサービスこそ、インテリジェントビル発展のカギだと考える。
人を中心に据えたデザイン
「建物になぜインテリジェンスが必要なのか。それは価値を創造するためです。『人間性の価値』と『産業の価値』の創造です」と話すのは、社団法人台湾インテリジェントビルディング協会理事長の温琇玲だ。
携帯電話メーカーのNokiaは「Connecting People」というキャッチフレーズを打ち出したことがある。この言葉をインテリジェントビルに当てはめると、まさに「人と人をつなぐ」という意味が理解できる。例えば、高齢の親と離れて暮らしている場合、その健康状態が気になる。そんな時、ネットにつながった血圧計やIoTセンサーを内蔵した照明器具などを通して親の健康状態や起居を知ることができ、通常と違う情報があれば、すぐに電話をかけることができる。テクノロジーが距離を縮めてくれるのである。
インテリジェントビルには産業面での価値もある。ICT産業で世界的に重要な位置にある台湾では、通信インフラやシステム、革新的サービスも整っている。例えば、スマートエアコン、スマートエネルギー管理システム、スマートロック監視システム、AI言語識別、スマート家電などの分野で、すでに多くの企業が実験的な応用に取り組み、実績を上げている。
政策面では、2005年に行政院産業科技戦略会議において、各産業におけるスマート化応用が提示され、インテリジェントビルの応用も掲げられた。また、インテリジェントビルの評価制度も早くから設けられてきた。1999年にグリーン建築標章の推進が始まり、2003年にはインテリジェントビル標章が制定され、2004年にはグリーン建材標章、2010年にはスマート建材標章が設けられた。今後は国際的な脱炭素化への要求に応え、2050年までには「インテリジェント‧ゼロカーボン建築」を目指すこととなる。これらの制度の推進は公共建築からスタートし、建設費が5000万元以上の建築物はグリーン建築標章を、2億元以上の建物はインテリジェントビル標章を申請しなければならないと定められている。これによって流れを引き起こして産業をリードし、インテリジェントビルや関連建材などを発展させている。

情報通信技術(ICT)が発達した台湾では、自律センシング技術を生かしてさまざまなソリューションが出されており、こうした「インテリジェンス」が少しずつ生活に導入されている。
「インテリジェント」とは?
インテリジェントビルと言えば、ビッグデータやIoT、AIoTなどの言葉は思いつくが、具体的なイメージは湧きにくい。温琇玲は「探知→表示→連動」のプロセスだと説明する。さまざまなセンシング‧デバイスを通して大量のデータを収集し、それを統計分析してデータ間の関係を理解する。「あらゆるデータは解読できるもので、それによって、これまで知られていなかったものごとを知ることができます」と温琇玲は言い、自身が一人暮らしの高齢者のために建てた住宅を例に挙げる。冷蔵庫を開ける回数、トイレの回数、睡眠時間、照明をつけている時間などがすべてがセンサーで収集記録される。「例えば5分の間に冷蔵庫を20回も開ければ、何か焦燥感があることがわかります。トイレに行く回数や時間、暗いのに照明をつけていないなど、あらゆるデータに意味があるのです」と言う。これらのデータから人の心理や生理的状況が分かり、問題の発生を防止し、高齢者の安全を守ることができるのである。
消防や防災にも役立つ。従来の火災報知器は室温が70度に達しないと警報音は鳴らないが、それでは避難が間に合わないこともある。だが、インテリジェントビルの場合は、AIoTの自己学習を通して、室内温度が通常とは異なる時に災害の発生を推測して換気扇をつけたり、エアコンや電源、ガスを止めたりするという連動ができる。さらに続いてドアをアンロックし、発火点を推測して正しい避難方向を示すことも可能だ。

スマート省エネとサステナビリティ
インテリジェントビルのもう一つの特色は省エネを具体化することだ。「インテリジェントビルの非常に重要な役割は『管理』です」と温琇玲は言う。センサーが収集したデータを分析し、エネルギーの浪費をなくすのである。
「インテリジェントビル」と「グリーンビル」を融合させれば、さらなる省エネが可能になる。工業技術研究院グリーンエネルギー‧環境研究所の鄭名山‧副所長は、台南沙崙のスマート‧グリーンエネルギー‧サイエンスシティにある緑能科技示範場域(グリーンエネルギーテクノロジー‧デモサイト)を例に挙げる。ここでは設計当初から太陽光と空気と水と生態を考慮し、建築物の向きを利用し、通風や採光のための天窓を設けるなどして建築物のエネルギー消費量を減らしている。また、立体の遮光設備や断熱壁、雨水回収、再生建材などのグリーン建築の手法も採り入れている。域内にはグリーンエネルギー生活体験コミュニティがあり、モデルハウスは南台湾に多い一戸建てで屋上に太陽光パネル、リチウムイオン蓄電池を設置し、発電、蓄電と電力使用がシステム化され、ネットゼロエネルギーを実現している。「一戸建てでも集合住宅でも、5階建て以下の建物ならこのようなネットゼロエネルギーは可能です」と鄭名山は言う。
このほかにエリア内には大型のオフィス空間が5棟あり、そこには氷蓄熱式空調システムが設けられている。鄭名山によると、これはエネルギーセンターのようなもので、センターで氷水を作って各棟に送り、冷気に転換するというものだ。こうした方法はスマート管理に向いている。エネルギーセンターで常に外気温や屋内の人数などを観察し、必要な氷の量を算出する。そして電力需要の少ない夜間に製氷して昼間にはコンプレッサーを動かさないようにし、氷をゆっくりと溶かして各棟に送り、冷気へと変えるのである。「これはインテリジェントビルの典型的な手法の一つで、工業技術研究院が独自に開発した成果です」と言う。建築物におけるサステナビリティの追求は、今後の大きな趨勢なのである。

快適な住環境
インテリジェントビルの概念はオフィスビルから始まり、少しずつ住居へも広がっている。台湾の家電メーカー禾聯(Heran)は近年、スマートホームの分野へと進出している。同社の蔡柏毅‧副董事長は、かつてオーストラリアに12年暮らした経験から、東洋と西洋の生活の違いを見てきた。西洋人はアウトドアのレジャーを好むのに対し、華人の家庭ではテレビが中心に据えられていることが多い。そこで彼らはテレビをプラットフォームとしたスマートホームの青写真を描いた。音声による操作を中心とするが、これは技術的なハードルが高く、空間のノイズの問題を解決しなければならない。だが、蔡柏毅は「私は面倒くさがりで、いちいちリモコンを探すのもいやなのです」と笑う。こうした消費者の使用状況に立って未来の生活の可能性を探り、早くから準備してきたのである。
早くも2015年、Heranは製品ラインナップを小型家電200項目余りまで広げ、さらに自社製品にブルートゥースやWiFiの機能をつけて付加価値とコストパフォーマンスを高めることにした。「自社の家電によるエコシステムを形成したいと考えたのです」と言う。
マーケットに対しては、蔡柏毅は電気自動車が今ほど注目されていなかった時期から、開発部門を率いて自動車用IoTの特許を取得した。車にアプリを搭載し、自宅まで数キロの地点に到達したら自動的に家のエアコンをつけたり、風呂の湯を入れたりできるというものだ。ここからもスマート家電の潜在力がうかがえる。Heranは早くから未来の暮らしのビジョンを描き、着々と準備をしている。

デモサイト内の亜熱帯グリーンエネルギー建築技術研究開発テストプラットフォームは世界で3つ目、亜熱帯では初めての回転する実験室だ。(工業技術研究院提供)
ラストマイルはインテグレーション
インテリジェントビルの運営も「探知→表示→連動」のプロセスで行なわれるが、中でも探知のシステムが最も重要である。建築物の中に設置された各種システムは、最終的に一つのプラットフォームに統合しなければならない。数十ものシステムを統合するには千以上のノードをつながなければならないのである。
1992年に創設された永録自動化公司(Lucon Automation)は、国内のインテリジェントビル業界の老舗である。総経理の陳勇誠はかつて台湾初のインテリジェントビル——台湾電力総管理処ビルのモニタリング&コントロールシステムのプロジェクトに関わった経験がある。
以来、Luconの実績としては国家表演芸術センター両庁院、台北栄民総病院、成功大学医学部付属病院などがある。2018年には「アジア太平洋インテリジェント‧グリーン‧ビルディング‧アライアンス‧アワード」のシステム部門でプラチナ賞を受賞した。さらに注目に値するのは、同年に同賞デザイン部門でプラチナ賞を受賞した群光インテリジェントグリーンエネルギービルと、既存建築物改造部門でプラチナ賞に輝いた台湾電力総管理処ビルのいずれもLuconのモニタリング&コントロールシステムを使用していることだ。これについて、Luconのアシスタント‧ヴァイス‧プレジデント林翠玲はこう話す。「群光インテリジェント‧グリーンエネルギービルはゼロからの案件で、モニタリング&コントロールのノードは2万4546ヶ所もあり、非常に難しい仕事でした。一方の台湾電力ビルの方は、セントラル制御システムの更新で、十数年来ずっと当社が担当してきたので、こちらも特別な意義があります」
台湾におけるモニタリング&コントロール技術の萌芽期からこの分野の研究を進めてきた陳勇誠は、その重点をこう解釈する。「私たちの強みはインテグレーションにあります。インテリジェントビルのモニタリング&コントロールシステムでは数十のシステムを統合しなければなりません。例えば、火災報知システム、冷却水循環装置システム、デジタル電気メーター、無停電電源装置、ドアロック管理システム、パブリックインフォメーションシステム、クラウドエネルギー管理システムなどがありますが、これらはそれぞれメーカーが異なるので、システムもインターフェースや規格も違います。こうした状況で、すべての情報を一ヶ所に集める方法を考えなければ全体的な連動が取れないのです」例えば、以前はつながっていなかった火災報知システムとモニタリングシステムを今はつなぐことができる。火災警報が鳴った時、モニタリングカメラがその発火点の映像をとらえ、誤作動ではないかどうかをスマートに判断できるのである。
複雑な原理だが、インテリジェントビルの実際の運営を見てみようと訪ねると、そこにはごく普通のコントロールルームがあるだけだ。林翠玲は、このモニタリング&コントロールシステムをオートフォーカスカメラに譬えて説明する。すべてはプログラムに入っているので、絞りやシャッタースピードを自分で設定する必要はないのである。とても分かりやすい喩えだ。
「インテリジェントビルは一つのサービスシステムです」と温琇玲は言う。テクノロジーが発達するにつれ、今後はさらに多くの新たな技術が建築物にも導入されていくことだろう。ただ、最終的に人とつながるワンマイルは、使用者の立場に立った設計になっていなければならない。人にやさしいインターフェースがあってこそ操作しやすく、スマートでサステナブル、省エネという未来が開かれるのである。

デモサイト内のグリーンエネルギー生活体験コミュニティでは、発電、蓄電から電力使用までを最適化し、ネット‧ゼロ‧エネルギーを実現している。(工業技術研究院提供)


家電メーカー禾聯(Heran)の蔡柏毅‧副董事長は早くからスマート家電の潜在力に目をつけ、IoTを導入してスマート市場に進出し、未来の生活のビジョンを描き出している。

Lucon Automation(永録自動化公司)の陳勇誠‧総経理は、国内のインテリジェントビルのモニタリング&コントロールシステムの開発に取り組んできた。台湾初のインテリジェントビルである台湾電力総管理処ビルのプロジェクトにも参加してきた。

台湾電力総管理処ビルは2018年に「アジア太平洋インテリジェント‧グリーン‧ビルディング‧アライアンス‧アワード」の既存建築物改造部門でプラチナ賞を受賞した。

インテリジェントビルの手法を用いることで、建築物をサステナブルな省エネの方向へ向かわせることは今後の趨勢である。(工業技術研究院提供)