必要に迫られた発明
缶詰植物の開発に取り組んでいたある日、陳さんは大きなナタマメの粒を見ていてふとこんな考えが浮かんだ。「字や絵を刻んだ豆が土の中から出てきたら、すごいのではないか」と。
1年後、缶詰から豆が発芽する「魔豆」は市場に出るや大きな反響を呼び、売上げも軽く1000万元を超えて缶詰植物を上回った。しかも日本の玩具メーカー「トミー」が提携を申し出てきた。
ところが、中国大陸や韓国で廉価な模造品が売られ始めるという事態が出現する。そこで陳さんは技術や質をさらに高め、缶詰の代わりに卵の殻を破って豆が発芽するという「魔蛋」を開発した。
「初めのうちは本物の卵の殻を使っていたのですが、出荷量が増えるにつれて、入手できる卵の殻の量が追いつかなくなりました」そこで、作り物の卵で代用することにした。だが、割れにくく、しかも豆の芽が突き破ることのできるような適度な硬度を持つ殻を作るのは容易ではない。これは独力では無理だと、陳さんは嘉義大学に協力を頼み、沈栄哲教授とその学生たちとの協力を得て、プラスチックの殻を開発した。この「魔蛋」は多くの国で特許を申請し、日本のトミーとも提携して、販売ルートを拡大していった。
「日本で月10万個近く売れると、その勢いに乗って台湾や他国での売上げも伸びました」台湾では缶詰植物も魔豆も思うように売上げが伸びなかったのに、ひとたび日本でブームに火がつくと、再び台湾に返り咲いたのである。ただし、かつてナイトマーケットなどと無闇に廉価で取引きしていた頃の関係を断ち切るため、陳さんはしばらく台湾での販売を停止することにした。
「長年の取引き関係をすべてご破算にしようというわけではありません。でも、もうそろそろ市場を安定させるべき時です」と陳さんは言う。台湾では現在、豆に企業のトレードマークを刻印したものなどを、企業の贈答品や宣伝グッズとして使ってもらうような場合の商品に限っている。今年の母の日にはコンビニの統一超商と提携し、母の日記念グッズとして発売した。
「これはまだ手始めで、今後も新商品を開発し続けます。おもしろいアイディアはまだまだありますから」と陳さんは自信にあふれる。趣味だった園芸をついに商品として花咲かせることに陳さんは成功した。ひょっとしたら何年か後には、蛍光色に光る缶詰植物や、音楽につれて踊りだす鉢植えなどが世界中で流行しているということもあるのかもしれない。

「卵から文字入りの植物が生まれる」というシンプルな構想だが、その背後には多数の技術的困難と販売上の障害があった。(荘坤儒撮影)

昔から農家ばかりの嘉義県渓口郷には、他の産業が進出していないので雇用の機会はほとんどなかった。それが魔蛋が大ヒットしたことで、住民たちも農業の業態転換に夢と希望を抱くようになった。

「マメデルモンのたまご」の缶を開けて水をやり、8時間すると卵の殻が割れて豆の芽が伸びてくる。2日後には文字や絵の入った豆が姿をあらわし、1週間後には緑の葉が伸びて立派な植物になる。

「マメデルモンのたまご」の缶を開けて水をやり、8時間すると卵の殻が割れて豆の芽が伸びてくる。2日後には文字や絵の入った豆が姿をあらわし、1週間後には緑の葉が伸びて立派な植物になる。

ナタマメにどうやって細かい文字や絵を刻むのか、落としても割れない卵の殻からどうやって植物の芽を出させるのか。小さな魔蛋だが、さまざまな技術が活かされている。

売上を伸ばし続ける魔蛋は、可愛らしい文字や絵が出てくるというだけでなく、流行や話題などさまざまなマーケティング手法を駆使して成功した。