食品の安全性が日増しに重視されるようになった昨今、台湾の畜産業も体質を転換し、ブランドが次々に生れている。豚肉だけで大麦豚、自然豚、ヨーグルト豚や香草豚、海藻豚など20余りを数える。肉や卵など日常に必要な食品は、量だけでなく質が重視されるようになってきた。
しかし、肉や卵をどう選ぶのか、認証やマークはあるのか、知っておくべき基本知識を挙げよう。
台東県関山鎮の永清祥牧場を訪れると、豚舎が水田の隣にあることに驚く。さらに4000頭の豚を飼育する豚舎に匂いがないことに驚かされる。
牧場のご主人で、台東養豚協会理事長の呂紹青は自慢げに、飼育場は定時に洗浄消毒し、通風や散水などの自動管理の設備を設置していると言う。その防臭方法は、飼料に酵素とプロバイオティクスを加え、排泄物の臭いを減らすというものだ。このため毎年30万元余りの費用がかかるが、肉質はよくなる。

食品安全の認証を取得した現代的な鶏卵場では、洗浄や等級分けなどさまざまな処理を経て出荷する。
40歳の坂を越えた呂紹青は、除隊後に500頭から養豚を始めた。小さい頃から近隣の養豚場が仲買に搾取される苦労を目にし、また病死した豚が出回るなどの悪評があって、真面目に経営していた関山豚も影響を受けた。12年前に養豚班長に選出されると志を同じくする仲間とブランド「東方明猪」(猪は豚の意味で、珠と同音)を立ち上げ、農業研究機関の指導を受け、肉質の向上に努めた。
東方明猪は生産、飼料配合から処理、包装まですべてHACCP食品安全管理規定により、複雑な追跡記録システムに依拠して安全を保証し、問題が起きてもすぐ解決できる。養豚場は防疫、衛生と飼料まで基準を満たしているので、豚の免疫が高まり、薬品に頼らずとも健康でいられる。
飼育環境と共に食味も重視しているが、その鍵は飼育期間210日を守ることである。「期間を長く取ることで、肉にさし(大理石模様)が入り味がよくなります」と呂紹青はいう。しかし、それでは飼料コストがかかるので、通常は180日で処理している。
それでもブランド確立の路は険しく、かつて台北に拠点を設置したことがあるが、マーケティングの概念に乏しく撤退してしまった。他の仲間が資金難や、複雑な安全管理などの手間に耐え切れず、元の道に戻る中、残るのは彼だけとなった。
今では永清祥牧場の東方明猪ブランドは口コミと宅配で基礎を固め、忠誠心ある顧客が増え、しかも精肉大手の台畜からも受注するようになった。
次は、270日をかけてより味のいい黒豚を飼育しアジアトップの畜産を目指している。

人道的な養鶏場では、家禽の生まれながらの習性に合わせて寝床や遮蔽された施設を設け、餌を啄ばみ、砂浴びをできるようにしている。写真は高雄那瑪夏の「秘密鶏地」農場。
永清祥牧場の努力は、台湾畜産業アップグレードの縮図でもある。
『2001年台湾養豚統計ハンドブック』によると、台湾人は年平均76キロの肉類を消費しており、うち豚肉が37キロ、家禽が33キロで、牛肉は5キロを下回る。最大の豚肉では、品質味共によい国産ブランド豚は数十種に上るが、生産量は豚肉市場全体から見ると5%足らずと市場規模は小さい。
認証取得のブランド肉は値段が高すぎ、有名ブランド化して庶民には手が出ないという人もいる。それでも安全、味、質が揃うには代価が必要だ。
台湾動物科技術研究所の副研究員で、台湾農業標準学会の廖震元事務長によると、台湾の牧畜業はかつて口蹄疫で輸出に打撃を受け、さらにWTO加盟で輸入の低価格競争に巻き込まれたため、ここ十数年、安全や防疫などの改革を進めてきたという。
「現在の畜産品の残留薬品リスクは、植物性食品より低いのです」と廖震元は言う。畜産品は処理、カットなどの工程を取るが、処理工場は獣医の検査や残留薬品検査を受けないと出荷できないので、安全に対して基本的な保障がある。
しかし、農政部門の残留薬品規定は最低基準に過ぎず、検査技術にも限りがあり、サンプルが合格しても全体が合格とは限らない。検査項目に限りがあるため、悪質な商品は防ぎようがなく、本当に厳しく安全を管理するには、川上から川下まで通した安全管理システムが必要と言う。
廖震元は台湾安全農法、ISO22000またはHACCPなどの認証があるものを薦める。後の二つは国際的に厳格に施行され信用力があり、前者は台湾農業標準学会が定めたもので、産地表示を特徴とする。政府は積極的に生産履歴、CAS認証を推進するが、これは基本条件に過ぎず、これに安全管理システムの認証を加える必要がある。
では、一般の人が関心を持つ有機食品は、100%安心といえるのだろうか。
廖震元によると、有機生産の基本は環境保護と自然回帰だが、台湾は狭い土地に人口が多く、有機飼料の量産は難しい一方、輸入品は高いため、現段階での有機畜産は経済的に難しい。「安全管理による生産モデルで、有機農法の95%の安全性を確保でき、しかもコストはずっと安いのです」と語る。

新北市の板農活力スーパーでは、生産履歴があり、安全が保証された食肉のコーナーを設けている。品揃えも豊富だ。
安全に加え食味もアップグレードの目標である。
養豚業者がクラシック音楽を豚に聞かせるのはなぜかと、消費者は不審に思うかもしれないが、多くの人は放し飼いの鶏は運動をするので肉に弾力があり、放牧の乳牛は草を多く食べるので、牛乳が香り高く美味しいと考える。
最近の牧畜業界でしばしば「人道的な飼育」が話題となるが、生命倫理の問題だけではなく、精肉製品の品質向上にも効果がある。
動物福祉の論点は、まずイギリスの畜産動物福祉諮問委員会より提出された。人間が動物を利用する時に、少なくとも動物に栄養不足、疾病や傷害、生理及び心理的不快、恐怖と緊迫から免れ、自然の行為を行なえるという基本的五条件を満足させるというものである。
サラダ油と飼料の老舗企業福寿実業の三代目経営者洪堯昆は、早くからグリーンの理念を理解し、工場の省エネ熱源設備に投資し、有機肥料を推進し、生物性の肥料と農薬、グリーン農産物の生産販売などの方針の青写真を描いてきた。
まず身をもって示そうと、霧に包まれ緑なす山々に抱かれた南投に養鶏場を設立し、地鶏を人道的に放し飼いにした。鶏は悠然と歩き、草を啄ばみ、互いに追いかけあい、用意された箱に卵を産む。飼育は自然の習性に則っている。養鶏場の景観にも心を配り、果樹や花が植えられ、将来は豚も飼育し、動物の天国となる予定である。

母豚が横になった時に子豚を押しつぶさないように専用の柵が設けられ、子豚がすくすくと育つよう、温度と環境がコントロールされている。(右)妊娠中の雌豚は、喧嘩などで流産しないよう、一頭ずつ柵で分けられている。
人道的な飼育に国際基準はあるのだろうか。
廖震元によると、人道認証には世界的な統一基準はなく、アメリカやフランスなど先進国では、産業の進歩と農家の収益向上のため、民間組織を通じて自発的に高い人道基準を適用している。これには動物により広い活動空間を与え、拘束を減少し、豊かな成長環境を提供するもので、特色ある飼育方法で新たな市場セグメントを創り出す。
国外の経験から見ると、人道的な飼育は精肉製品の品質にプラスの影響がある。生産過程で動物のストレスによる緊張を避け、また遊びや運動により成長を促し、肉質はジューシーで柔らかくなる。
人道的な輸送と処理も、肉質に影響する。輸送や競り、処理過程が不適切だと、酸性度に変化が生じて肉質が悪くなる。例えばph6以上だと色が黒く、乾いて硬くなり、微生物汚染を受けやすく、加工と保存に不利になる。Ph5.5以下だと白くなり、柔らかいが血や水分が出やすく、保水力がないため、栄養や風味が水分と共に流失する。
「台湾ではすでに人道的処理が広まっています。10年前には、人道的などと言うと、処理場では作業が遅くなると文句を言ったことでしょう。今では現場の怒鳴り声は、俺の豚を虐待するなという声に変わりました」と廖震元は笑う。
人道的飼育の利点は数多いが、優良な生産環境を作り出すには、広い土地に人手が必要で、しかも味を求めると生産効率が下がるし、認証申請に別途費用がかかり、それが価格に反映する。そのため、台湾では養豚場1ヶ所、養鶏場3ヶ所、鶏卵場4ヶ所が認証を受けているに過ぎない。

母豚が横になった時に子豚を押しつぶさないように専用の柵が設けられ、子豚がすくすくと育つよう、温度と環境がコントロールされている。(右)妊娠中の雌豚は、喧嘩などで流産しないよう、一頭ずつ柵で分けられている。
国外の経験を借りて、人道のレベルもアップグレードするには、消費者も選択眼を具えて、良心的な生産者に経済的なサポートを提供する必要がある。生産者に利益があれば、レベルアップに努めるし、政府も自然と立法を推進する。
現在の問題は、畜産品の品質に対する消費者の知識不足で、食品への要求もようやく価格一辺倒から安全の段階に入ったばかりである。
常温肉の存在が、畜産品に対する台湾人の認識不足を物語る。現在、国産豚肉の7割が昔ながらの市場の売り場で常温で販売されている。地鶏でも、合法的に登記した処理場で処理されるのは僅かに8~22%である。台湾人は常温の肉が新鮮で美味と信じていて、こういった食肉が実は明け方に処理されていて、冷蔵や冷凍されないまま直接外気に曝され、翌日の昼まで売られていることを知らない。これでは極めて不衛生で、しかも薬品検査報告もなく、処理以前に安全のため何段階も管理していた効果が、全く水の泡である。
台湾ではまだ主流とはいえないブランド化、安全認証、人道的飼育だが、それでもこれが将来の方向性であることが認識されつつある。
限られた台湾の土地では飼料作物は栽培できず、輸入に頼らざるを得ないし、販売サイドでは仲買が価格を支配していると廖震元は言う。国際的に飼料価格が高騰を続ける中で、将来的に畜産農家の選択肢は二つしかない。飼料工場や処理場を持つ大企業の契約農家となるか、畜産品をブランド化して、努力を価格に反映させるかしかない。

永清祥牧場は薬品の入っていない飼料のための専用車を導入し、他の飼料からの交差汚染を防いでいる。
当然ながら、こういった努力には消費者の評価と支持が必要である。
狂牛病や肉の赤身を増やす薬品(ラクトパミン)など、安全問題が頻出するが、解決方法は正確で公正な表示をして消費者の選択に供することだ。
例えば、日本ではラクトパミン使用を「輸入肉には認め、国内は禁止」というスタンスで、ハンバーグなどの加工品も含むすべての肉類に原産地標示を義務付けており、台湾もこれに倣うべきだ。
「肥満や高血圧、ガンやアレルギー、酸性体質などは肉食が原因と言う人が多いのですが、実際には過食などの食習慣と食品の残留薬品などが関係します」と廖震元は言う。
今日からは、慎重に良い肉を選ぼう。その行為が畜産業の健全な発展を促すのである。