ここでは薫り高いコーヒーが味わえるとは限らないが、コンピュータは絶対ある。利用者から「網咖(ネットカフェ)」と呼ばれるインターネット・カフェである。一昨年当りから台湾の北から南まで開店が続き、24時間営業が多い。客が詰めかけ、現金が入ってくるため、ほかの店を羨ましがらせている。
台北駅前の一等地を見ると、企業化経営を進める大規模なネットカフェがある。広い店内はフローリングに皮のソファ、10万冊を越える漫画や雑誌が並び、コンピュータには15インチの液晶モニターが装備されている。一方、南部の屏東県の小さな町には、最低限の設備に質素なインテリア、「飲物はおかわり自由」というサービスもない小さなカフェがある。
業界の見積りでは、台湾には2000から2500店のネットカフェがあり、今年には3000店になると言う。
実際には、今始ったネットカフェは新しい商売ではない。5年ほど前にも流行したのだが、その時の台湾のネット人口はやっと100万人規模で、接続のスピードは遅いし費用は高いしということで、一時大流行したエッグタルトの店と同じように、流行も速かったが廃れるのも速かった。それが一昨年頃から、世界的にネット環境が成熟し大容量高速通信が普及したこともあって、接続のスピードが急速に上がり、オンラインでのゲームソフトも次々に出てくるようになった。台湾もネットエクスプレスに乗りこみ、それにつれここ2年でネットカフェが再び急増してきたのである。
ネットカフェであれ、ゲームソフト会社であれ、韓国を例に引きながら、両者の切っても切れない関係を説明しようとする。
群益証券のネットカフェ市場のリポートによると、世界的なネットカフェ市場の発展では韓国が最も進んでいると言う。韓国政府はネットとソフト産業発展のために、ソフト開発用の研究開発ビルを建設し、業者向けにハード・ソフト設備を提供したし、さらに兵役制度まで改正し、ソフト会社で5年以上の勤務に同意すれば、兵役を免除したのである。
「ネットカフェの魅力はオンラインです。一人でゲームをしているとコンピュータの癖が分ってしまいますが、オンラインのゲームの相手は予測がつかないので、より刺激的なのです」とソフトスター・エンターテインメント社業務部の林強さんは言う。この会社は昔ながらのゲーム、モノポリのデジタル版を出し、また韓国ゲームソフトのファンタジーを代理している。林さんによると、ゲームソフト業者にとってネットカフェは版権を稼げるばかりではなく、新製品の販売促進にもつながるという。ネットカフェのプラットフォームに試供版を置いておき、面白いと思った人が買っていく。
韓国を例に取ると、政府の積極的な育成策により、ゲームソフト産業が発展を始めた。1997年には200万足らずであったネット人口は、現在1000万まで急増したが、これには1万6000店と言われるネットカフェの貢献が少なくない。
韓国の盛況を目の当りにし、わが国の業界も楽観的である。現在、国内のネット人口は少なくとも600万、ネットカフェ市場は5000店規模が見込まれるのである。
今回のネットカフェの流行では、その経営形態から小規模な個人経営と、チェーン店の二つに分類でき、料金は1時間20から90台湾ドルである。アズテックやゴーゴー・ネットといった大規模なネットカフェ・チェーンは、フランチャイズ方式を採用して、急速に全国網を展開している。その中でも展開のスピードが一番速いのが中環グループとソフトチャイナ社が投資しているアズテックだろう。
アズテックは一昨年9月に1号店が開店してから1年半で46店を展開、去年9月には7000万台湾ドルを費やし、地価の高い台北駅前の一等地に千坪のスペースを持つアジア最大のインターネットカフェを出店した。そこにはオンラインのゲームだけではなく、モバイル・オフィス、ビデオ会議の設備があり、小規模な映画館まで揃っている。アズテックは広く快適なスペースで都会のネット族を引きつけ、1分当り1.5台湾ドルと高い料金にもかかわらず、客足は落ちない。
アズテックのような豪華なネットカフェに対し、コンピュータ周辺機器の卸販売からネットカフェに転身したゴーゴーネットでは、安い料金で若い利用者を引きつける。その李槐堂社長によると、ネットカフェが次々に開店しているのは失業率の上昇と関連していると言う。フランチャイズ加盟店の中には、リストラにあった中高年のサラリーマンが退職金を元手に何か商売をと、いろいろ考えてネットカフェを始める例が少なくない。1ヵ月に平均して20人余りがフランチャイズの相談にやってくるが、去年はもっと多かったそうである。
コンビニ、泡沫紅茶の店に続き、ネットカフェもフランチャイズ加盟の新しい選択肢の一つになった。こういったフランチャイズ・システムの企業では、原価見積り、インテリア、設備、管理販売コストなどのデータをネット上に公開しているところも少なくなく、21世紀に最も儲かる業種と宣伝しているところさえある。
ネットカフェはそんなに儲かるのだろうか。
群益証券のリポートでは、台湾北部で50坪、40台のコンピュータを備えたネットカフェの開店コストが365万台湾ドル、そのうちコンピュータ設備が38から44パーセントに上る。
ネットカフェの参入の敷居は高くないと李槐堂社長は言う。ゴーゴーネットの台北駅前本店は300坪、コンピュータ200台で原価は1000万台湾ドルだが、1年半で回収した。300万の小さな店をうまく経営すれば、8から12ヶ月で回収できる。
半年前台北県に三重市に開業したネットカフェ「スターウォーズ」の経営者張文芸さんは、そんなに儲かるものかと苦笑する。誰もが一斉に投資するものだから、三重一帯のネットカフェはすでに50店近く、値下げ競争がはじまっている。
ネットカフェの急速な発展と激しい競争は言うまでもないが、個人経営ではチェーン店に勝てないと心配する人もいる。現在、台湾のネットカフェのうちチェーン店は10パーセントで、残りの90パーセントは小規模な個人経営である。ネットカフェの将来も、大きいものがより大きくなる道を行くのだろうか。
群益証券のレポートでは、チェーン店はコスト、マーケティング、ブランドで優位に立ち、ネットカフェ市場が飽和していく時に、主要なチェーン店がますます大きくなり、小規模な個人経営の店は吸収されるか、閉鎖に追い込まれるとしている。
しかし、異なる意見の人もいる。「特色のあるネットカフェなら生き残れるでしょう。わが国には誠品、新学友、金石堂、何嘉仁の四大書店チェーンがありますが、これ以外にも個性的な書店が残っています」と、あるゲームソフト関係者は言う。
ビジネスチャンスが転がり、潜在力が見込まれるネットカフェにも、そこここにリスクは潜んでいる。
現在、ネットカフェは3つの営業項目に分れて営業登記されている。電子情報提供サービス業、その他娯楽業、飲料店業である。しかし、多くの地方自治体では「ゲームセンター管理条例」を盾に、コンピュータを使ってCDやネットゲームを提供し、映像、音響効果を作り出すネットカフェは、ゲームセンターに属するものと分類する。台北市都市使用区分管制規定によると、商業区にしか設置できないし、学校や託児所、病院などの公共施設から1キロ以上離れていなければならない。このために台北地区のネットカフェは、国の所轄の会社登記と自治体所轄の営業登記証が異なるという問題が発生している。
ゲームセンター条例の規定によれば、台北市では基隆河の河川改修で出来た元の川筋の地域と、福徳ゴミ処理場付近にしか開店できないと、李槐堂社長は法令と現実との大きな落差を指摘する。
ネットカフェ業界では、政府に立法措置により位置付けを明確にすることを期待している。去年7月には高雄市のネットカフェ業者が率先してコンピュータ・インターネット発展協会を設立し、これが全国規模の協会に格上された。その事務長の頼世彬さんによると、これから積極的に当局と交渉を進め、専門の法律を制定して業界の権益の保障を図ると言う。その一方では業界でも、賭博やポルノなどの情報提供を自粛していく。
ゲームセンター、カラオケボックスから今日のネットカフェまで、新しい刺激を求める人々の欲求は止まることを知らない。新しいゲームがネットカフェを生みだし、ネットカフェが不況に強い業種となった。しかしネットカフェの主要な利用者層である若者が、ネットカフェに入り浸り、モニターのスピードと刺激を求め続けるとしたら、本当に心身の健康に叶うものなのか心配になってくる。

仲間と一緒にインターネットカフェに行き、一緒にオンラインのコンピュータゲームに興ずるというのが若者の間で流行している。何人かで同じゲームで戦えるというのがネットカフェの大きな魅力だ。

ゲームの流行もネット人口の増加に拍車をかけ、ソフト業界はネットカフェから版権収入を上げている。写真は先月世界貿易センターで開催されたソフト展の様子だ。