「昔は王謝の屋敷の燕、今は尋常の百姓の家に飛び入る」と小さい頃から耳慣れた唐詩もあれば、荘子は「鳥は燕より智なるなし」とツバメを語る。昔からツバメは吉祥の鳥とされ、聡明なことから人に愛された。車の行きかう都会や、時がゆったり流れる古い町並みでも、大切に守られたツバメの巣を見かけ、毎年春を告げる家の宝となっている。
台湾でよく見かけるツバメは、人々に親しまれているが、実は長距離を渡ってくる夏の渡り鳥と知っている人は少ない。人とツバメの密接な接触はその生態にどのように影響しているのか、あまり知られていない秘密の生活はどのようなものなのか、探ってみよう。
台風一過の暑い八月の一日、夕暮に新北市二重の五股河川敷に老若様々な40人ほどの人が集まり、葦原の小道で空を見上げて小声で「戻ってきたの」と尋ねあっている。
夕焼けに照らされた景色の中、四方八方から群れをなしてツバメの大群が戻ってきた。あたかもF16戦闘機のように低空を降下し、また急上昇、急旋回する。遠くの葦原の上空には、小さな黒点がびっしりと集まり膨らんで行くが、夕闇が帳を下ろすと、鳥の群れはようやく葦原の間に羽を休め、静けさが戻ってきた。
「ここは春先から夏にかけて軒先に巣を作って繁殖していたツバメが、繁殖期を終えて集まる場所です。食べ物もあり、邪魔されることもない理想的な場所なので、成鳥が幼鳥に飛び方を教えます。間もなく、南に向って長距離の旅に発つからです」と、荒野保護協会が五股湿地生態区に派遣する解説員蘇秀蓉は話す。
川が海へと注ぐ五股湿地には、台湾北部最大の蘆原が19ヘクタールも広がっていて、現在知られている限りではツバメの南下前の集積地としても最大のもので、約2から3万羽も集まる。荒野協会は2003年からこの現象に気づき、4年前から8月中下旬にバードウォッチングの会を開催しているが、毎年申込者は増加している。

北投中央南路一帯の古い住宅街では、ツバメが家の軒先に巣を作れば福が来ると信じられており、人々はツバメとともに暮らすのに慣れている。
ツバメは学名をHirundo rusticaと言い、分類上はスズメ目ツバメ科に属す。アジア、ヨーロッパ、アフリカに広く見られる渡り鳥である。成鳥は体長17センチほど、喉と額が赤く、背は青黒く光沢がある。尾羽は二股で長く、腹は白く胸に黒い帯があり、燕尾服の名はここから来るとおり、まさに礼装でネクタイを締めた紳士のようである。
ツバメの足は短く力がないので、長く立ってはいられないが、飛行能力に優れる。羽は体より長く尖っていて空気抵抗が小さいので、飛行速度は速い。尾翼が長く、大きく広がるので、機敏に急上昇、急降下でき、急旋回も可能である。そのため、ツバメは鳥類の中でも飛行中に飛ぶ虫(シロアリ、トンボ、てんとう虫、カ、ハエ、蛾、蜂など)を捉え、止まることなく一口で飲み込む。
墾丁国家公園管理処保護研究課の蔡乙栄によると、アジアのツバメは春夏にシベリア、中国大陸、韓国、日本などで繁殖し、冬はタイ、シンガポール、インドネシアやボルネオで越冬するという。台湾はツバメの生息地の中間に位置し、渡りの途上にもあるので、春夏は南から繁殖に渡ってくる夏の渡り鳥が、秋冬は北から越冬に渡ってくる冬の渡り鳥が、そして春と秋は渡り途中の旅鳥が見られる。中には少数の留鳥まで存在する。

新北市の五股湿地は北台湾のツバメたちが8月に南へ渡る前の飛行練習場である。夜間は湿地の葦原に休み、多くの野鳥愛好家が訪れる。
台北市北投の中央南路と光明路の1キロほどの道の両脇には、200余りのツバメの巣があり、春夏には群れをなす。数年前に北投中央社区発展協会がボランティアを募り、ツバメの営巣と繁殖の形態を調査した。ボランティアの観察によると、ツバメは堤防や公園近くの旧式の建物の騎楼(2階がせり出し、その1階部分が歩道のように開放された中国南方の建築様式)に営巣するが、新しい建物がタイル張りなのに対して、旧式の建物はコンクリートのため、巣が粘着しやすいからだという。
ツバメの営巣能力は驚嘆もので、堤防や公園から集めた泥、草、枝や茎などを唾液で団子状にして積み上げ、お椀状の巣とする。最初の層が乾かないと上に積み上げられないので、巣を作るのに7日から10日かかる。ツバメは前年から残された古い巣を修理して使うことも多く、同じカップルが戻ってきたり、新しいカップルを連れてきて、古い巣を使わせたりすることもある。
巣の問題が解決すると、育児である。繁殖期に1から3回卵を孵し、1回に4から5羽の雛鳥を育てる。親鳥はカップルで雛を育てる。「一日中餌を与え、早朝と夕暮の多いときで、親鳥は数分毎に餌やりに戻ってきます。雛は中が黄色い口を大きく開けるので、薄暗い中でもはっきり分ります」と、北投社区のプランナー鍾慧珠は説明する。
雛は出生14日で羽が生え変わり、それから2週間ほどで尾羽と風切り羽が揃う。こうなると親鳥は食べ物をくわえて軒先を回り、羽を叩き幼鳥に見せて、飛ぶように促す。幼鳥が飛ぶと、今度は餌取りを教えて、自立できるようにする。

飛べるようになったばかりの若いツバメ。尾羽はまだ生え揃っていない。
台湾にはツバメ以外に、同じ属のリュウキュウツバメに、オオコシアカツバメ、コシアカツバメ、タイワンショウドウツバメ、ショウドウツバメ、イワツバメの6種が見られ、リュウキュウツバメには留鳥と旅鳥がいる。ショウドウツバメとコシアカツバメは純粋に旅鳥、それ以外は留鳥である。
「ツバメは数が多く、分布が広く、人工的な環境への適応力があるといえます」と、台北市野鳥学会の蒋功国は話す。軒先に営巣する理由は、雨風を避けるだけではなく、蛇や鷲などの天敵から守り、虫を捕まえやすいからである。毎年3~4月の北に帰る季節は二十四節気の啓蟄に当り、雨の後にシロアリが一斉に飛び立ち、街路灯や看板に集まる。普通の鳥は日中しか活動できないが、ツバメは地の利を生かしてこれを捕食する。
メリットは多いが、他のツバメ科の鳥は自然環境に営巣する。タイワンショウドウツバメは冬に繁殖し、川べりに穴を掘って巣を作るが、翌年増水すると巣は壊れ、冬にまた作り直しとなる。
勤勉に雛を育てるツバメの姿が人を感動させ、店子として守ってきたのだろうか。華人社会はツバメを吉祥と平安のシンボルと考えてきた。
台中市太平区中華小学校の教師李戊益は、長年太平区のコシアカツバメと人の共存を観察してきた。繁殖期に巣を覆ってスズメに占領されないようにしたり、屋内に巣を作られると毎朝早くに窓を開けてやるなど、多くの人がツバメを保護してきた。

交配時、雄鳥は雌鳥の背に乗り、数秒で交尾を終える。
恒春半島で長期にわたってアカモズ、サギや猛禽、ガンなどの旅鳥を観察してきた蔡乙栄は、台湾を渡りで通り過ぎるツバメが、毎年5月から8月の夜間、恒春半島で夜を過ごすことを、10年余り前に偶然発見した。「旅鳥にとって陸路は安全ですが、天候が安定せず、留まるところもない海路は危険です。体力を消耗しないように、海に出る前に休むのです」と言う。
旅鳥は水や草が豊富で、天敵が少なく、人目につかないところに数日留まるが、ツバメは人通りの多い屏東の車城や恒春市に一晩だけ留まる。しかも、ツバメは飛びながら捕食できるという利点がある。
恒春市街に一泊するツバメの数は数千羽、多い時は3万羽に上った。これは台風に足止めされたためである。夜になるとツバメは空中を旋回してから電線に10センチ間隔ほどで足を休める。
恒春半島には、リュウキュウツバメも群れをなして羽を休めるが、彼らは場所を選ぶ。ファイブスターの福華ホテルの地下駐車場で、天井の配管にびっしり止まって安全な一夜を過ごす。大変なのは、糞を落とされる車の持ち主である。ホテルは追い払っても入ってくるため、季節になると配管の下に網を張って糞を防いでいる。
最近では街角の電線も地下化し、糞便の問題があって住民に追われることもあるというのに、ツバメの宿泊数は安定的に増加傾向にあるという。「ツバメは野生の鳥類の中でも特異な種で、人為的な破壊があっても減少せず、逆に繁殖しています。スズメやハトに比べられるでしょう」と蔡乙栄は言う。
余りにも普通で、どこにでもいるために、台湾のツバメの群れの総数、種類、渡りの経路など、どれも具体的には答えられず、また優先的に研究されても来なかった。しかし、ツバメから自然研究の窓が開かれるし、庶民の家に春の温もりと祝いを届けてくれるかのようである。

「お腹がすいた!」一番左の幼いツバメは人間にもある白皮症だ。

動きが敏捷で旋回も得意なツバメは、空中で口を開けてそのまま餌を食べる。