チョコで社会にコミット
「現代アートも社会への関心を作品に込めることが多く、チョコレートでも同じことができる」と呉さんは考える。
高級チョコレートには良質の原料が求められる。その理念を大切にする呉さんは、台湾産の食材を厳選している。
「台湾にはすばらしい果物の数々があります。新鮮なマンゴー、レイシ、パイナップル、そしてパッションフルーツの品質はフランス人をも驚かせるほどです。美食都市・香港でもあまり知られていないマルベリー(桑の実)もあります。また台湾は青梅の採れる数少ない国の一つで、ほかにも各地特産の穀物類や根茎類、花卉、原住民の香辛料などが豊富にあります」と呉さんは語る。
また作品に社会的なテーマも取り入れている。2023年には、ジンジャーリリー、バラ、ジャスミンなどの花に女性の力を象徴させた作品を作った。これは、花の香りを抽出する独自の技術を用いたもので、世界大会の3部門で金賞を獲得した。ヨーロッパでの授賞式で、呉さんは作品に込めたジェンダー平等の理念について語り、観客から熱烈な拍手を受けている。
2024年には、新型コロナウイルス感染で半年も嗅覚を失っていたにもかかわらず、台湾の食材を用い、印象派のモネの絵画を再解釈したと言える作品「モネの花園」を生み出して再び金賞に輝いた。
同年には、各界で黙々と努力を続ける職人たちに敬意を表した作品も創作している。友人のミクソロジストである鄭奕倫さんが作るカクテルからインスピレーションを受け、ヌルデやカラスザンショウといった台湾で採れるスパイスを用いた作品を作り、これも銀賞に輝いた。
チョコも呉葵妮さんも、もろく砕けそうに見えて、実は揺るぎない。呉さんにとって、チョコレートは夢であり、事業であり、心の内を吐露する創作なのだ。しかもそれは、常に呉さんとともにあり続け、今や世界に輝く栄光をもたらしてくれた不可欠な存在でもある。
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花の香りを抽出する独自の技術を用いてジンジャーリリーの香りを含ませた作品はICAで金賞に輝いた。
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フィリング用ドライフルーツには、西洋諸国ではオレンジを使うことが多いが、呉さんは台湾の青マンゴーを用いて新たな風味を生み出した。「ヒーリングフルーツ・シリーズ――青マンゴー」は世界大会で金賞を獲得した。
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「母のお腹にいる時からチョコレート漬けだった」と言う呉さんは、男性主導のスイーツ業界で独自の地位を築いた。