21世紀はエネルギー効率の向上が重要なカギを握る。台湾の産業をリードするICT(情報通信技術)の力が大いに発揮できる時代だ。コンピュータのインテリジェンスとネットワーク能力は、生産現場でも市民の生活の場でも、交通機関の運営においても、エネルギー使用をよりフレキシブルにし、効率を上げるものである。
グローバル・eサステナビリティ・イニシアチブ(GeSI)のリポート「スマート2020」は、情報通信産業は他の産業の温室効果ガス排出量削減に大きく貢献でき、これによって2020年には対2002年比で15%削減の目標が達成できるとしている。鋭敏な台湾の情報通信業界は、すでにこのチャンスを嗅ぎ取っている。電気通信事業最大手の中華電信は、インテリジェント輸送システム、インテリジェント省エネプラットホーム、クラウド・サービスなどを打ち出し、他の産業の排出量削減に一役買おうとしている。今後さらに関連法規やインフラが成熟すれば、最先端の「スマート・グリッド」にも参入する予定である。
「インテリジェント輸送システム」は決して新しいものではない。残業で終電に乗り損ねた時、タクシー会社に電話をすれば、数分で指定の場所に来てくれる。これまでは、一番近くにいる車を探すために、会社と各車の運転手が無線でやりとりをしていたが、これが大きく変ったのである。今ではタクシー会社のモニターの地図上に、赤い点が多数点滅しており、その中から最も近い車を選べばよい。そして、その車に搭載した通信機器(携帯電話網を使用)に指令を送り、運転手がキーを押して応えれば、それで指令は完了するのである。
これはGPS(グローバル・ポジショニング・システム)とGIS(地理情報システム)、GPRS(汎用パケット通信サービス)を合わせたシステムで、以前より早く公平に車を呼べるようになった。タクシー会社も運転手の業績統計が取れ、モニターで各車の位置が確認できるため、管理効率と乗客の安全も大幅に向上した。
このシステムは、現金輸送車やパトカー、トラックなどにも広く応用されている。車両の手配に有効なだけでなく、スピード違反や違法駐車、あるいは指定のルートから外れていないかなどの確認もでき、ガソリン代の浪費も少なくなった。警備会社の現金輸送車が、指定されていない場所で長時間停まっていれば、すぐに運転手と連絡できるので、強奪事件などが発生しても素早く対応できる。

美しい夜景だが、それは膨大な電力消費によって支えられている。エネルギー効率の向上が求められる時代、台湾の情報通信産業がその力を発揮し、よりフレキシブルかつ効率よく電力を使用する技術を開発しており、その成長が期待されている。
情報通信技術は、交通運輸の管理効率を向上させるだけでなく、建築物やオフィスビルの分野でも力を発揮する。中華電信が昨年正式にスタートさせた「iENインテリジェント省エネプラットホーム」がその試みである。
オフィスビルあるいは学校などの公共空間の空調や照明、あるいはボイラーや冷凍設備、排水システムなどは、いずれも電力やエネルギーの消費量が非常に大きい設備だ。iENはネットワーク(イントラネットとインターネット)を通して、これらのシステムを一つの「クラウド」と呼ばれるセントラル管理プラットホーム(27ページの図を参照)とリンクさせ、集中的かつ機動的にモニタリングし管理するものだ。
「iENはもともと私たちが情報通信技術を応用して機械室をモニタリングしてきた経験から生まれたものです」と話すのは中華電信バイスプレジデントの洪豊玉だ。中華電信は全国各地に1000にのぼる機械室を持つ。24時間稼働の機械室の消費電力を削減するために、彼らは管理プラットホームを通して空調を調節してきた。例えば、高温になる昼間は10台のエアコンを全開にし、夕方以降は5台を1組として間隔を空けて動かし、季節ごとに変えていくという具合だ。また、ネット使用が多いピーク時には、サーバーのCPUがフル稼働するため放熱量が多くなるので、空調も強くする必要がある。
各地に分散する機械設備を統一管理するため、中華電信ではこれを本社で集中コントロールするモデルを開発し、2012年には2007年比で1.38億kWhの電力消費量を削減できる見込みだという。二酸化炭素排出量にして8万6250トン、10%の削減となる。
「省エネと排出量削減が盛んになってきたので、他の分野でも同様のニーズがあると考え、iENとして発展させることにしました」と洪豊玉は言う。
実際、台湾では多くの商業ビルや工場でエネルギーの浪費が習慣化しており、全面的な検討が必要な時期に来ている。

「630路線バスは約1分後に到着」。台北市で試験中の中華電信のインテリジェント運輸システムは今後広く導入される予定だ。
台湾では、商業ビルや工場が落成すると、経営者は電力会社と「契約容量」を定める。台湾電力は安定した供給を確保するため、予告なく契約容量を超えて電力を使用した顧客には罰金を科すこととしている。その罰金を避けるために、使用者は消費電力を多めに見積もり、最大の需要量で契約を交わすことになる。そして契約を交わすと、使用量が限度に達しなくても料金は返還されないのである。
何事も多めに見積もるというのが習慣になり「工場の生産設備についても、例えばクリーンルームなら、フル稼働時で気温が最も高い状況を想定して容量を設計してあります」と財団法人産業サービス基金会マネージャーの馬勝雄は言う。こうして無意識のうちに浪費を生じさせている。3000ccの車は、どうやっても1600ccの車より燃費が悪いのと同じである。
こうした不経済なエネルギー使用状況を改善しようと、最近台湾ではESCO(エネルギー・サービス・カンパニー)がブームになっている。これは顧客である企業のエネルギー使用状況を診断し、合理的な設計や設備に変える業務を行なう会社だ。設計・設備変更には巨額の費用がかかるため、ESCOが顧客に代って銀行融資を交渉し、顧客の省エネが実現した後、その差益から分割で返済するという形も採られる。
「中華電信のiENは、現在のESCOと同様の業務であるだけでなく、さらに『遠隔モニタリング』『動態管理』の機能も備えています」と洪豊玉は言う。情報通信技術はもともと中華電信の強みであり、彼らは完全なネットワーク設備と強大な情報処理力、そして「クラウド」管理能力を有している。それが省エネ産業に参入すれば、設備の省エネ化だけに限られていたESCOのサービスレベルを国際的なレベルにまで高められる。「私たちはESCOの市場を奪うのではなく、協力し合って新たな産業を開発したいと思っています」と言う。

iENはプラットホームを通して顧客のエネルギー使用状況をモニタリングし、機動的な管理を行なう。当然、そのためには使用空間の各種設備に一つ一つセンサーやコントローラーを設置してセントラルプラットホームとつなぐ必要がある。
学校の場合、コントロールシステムと各教室の時間割をリンクさせる。午前10時から授業がある時、システムは9時50分に自動的に電源を入れて照明や空調をつけ、授業が終わると自動的に電源を切る。予定外で教室を使用する場合、使用者はあらかじめオンライン上で申請しておく。
さらにiENは、使用者の悪い習慣を「強制的」に変えさせることもできる。
例えば、小中学校で「一人当たりの水道使用量」や「一人当たりの電力消費量」を決めておけば、システムが毎月、建物ごとの各種使用量の統計を取り、学校はこれを参考に賞罰を決めることができる。この方法をオフィスビルに適用すると、退社時に照明や空調を切り忘れているエリアがあれば、システムが警備員に知らせて電源を切ると同時にそれらを記録しておき、省エネ習慣の徹底していない部門の指導に役立てられる。
工場では、iENはさらに大きな力を発揮する。電力系統「最適化」管理を例にとると、モニタリングシステムは顧客の実際の電力消費データを取り、そこから新しい合理的な契約容量を提案してくれ、さらに毎月の電力使用分布の詳細な分析と動態管理もしてくれる。例えば、一部の生産ラインを移動させるとか、電力料金の安い非ピーク時に分散させるなどといった提案がなされる。
生産ラインがフル稼働している時に、電力使用量が契約容量を超えて罰金を科されないよう、モニタリングシステムは各設備の電力消費量を精確につかみ、容量を超えそうになったら警報を発する。そして顧客があらかじめ定めておいた優先順位にしたがって、一部エリアの電力供給を停止し、絶対に電力を止めてはならないエリアの操業に影響が出ないようにする。
省エネの「誘因」に期待また、工場の製造工程における省エネ効率はその設備(蒸気、空圧、機械など)のエネルギー効率と密接に関わっており、経営者も設備を変えれば効率を上げられることは知っている。しかし、設備を変えるだけでメンテナンスをしなければ、エネルギー効率はどんどん低下していくのである。
中華電信企業顧客部門のディレクター、王皋雄によると、一般にはメーカーが定期的に人を派遣して設備をメンテナンスするだけだが、長期間モニタリングしたデータを見ていないので、メンテナンスの技術者も、異常なエネルギー消費がないかどうか確認できない。iENで常にデータを取っていれば、その数値に異常が出た時に、すぐにそれをメーカーに知らせてメンテナンスすることができる。設備が故障する前に異常が分かるため、常に最良の状態を確保でき、エネルギー効率も高い状態を維持できる。
iENという先端サービスの費用は「システム構築」と「後続のメンテナンスと管理」の二つの部分に別れており、前者はモニタリング設備の数と設置ポイント数によって数十から数千万元までとなる。センサーや通信システムを月々レンタルすることも可能だ。後者の場合、多くは月々の料金を支払う形で、顧客のニーズに従ってメンテナンス期限を定める。
iENを打ち出して1年、今では苗栗署立病院、台北栄総病院、南投の暨;南大学、雲林科技大学、それに多くの小中学校や政府機関がこれを導入しているが、民間企業では政府の補助金がないため、まだあまり導入していない。
だが、これが普及しない根本的な原因は、台湾の電力料金が安すぎること(工業用は日本の48%、イギリスの88%)だ。省エネの誘因が不十分なため、iENもESCOもなかなか普及しないのである。
しかし、中華電信は今後を楽観視している。台湾ではここ3年、年間20億元以上の潜在的市場があるからだ。彼らは、政府の政策が変わるのを待ちながら、現在の一つ一つの機会をとらえて訓練を重ねている。台湾も地球も、もう待ってはいられないのである。