文化もカネに向かう?
しかし、文化と産業はもともと両極に位置するもので、一種の緊張した関係にある。
「クリエイティブ産業は『産業』ですから、当然利益を追求するものです」と台北芸術大学の夏学理助教授は言う。「産業の重要なポイントは消費者志向という点にあり、消費者のニーズに迎合しなければなりませんから、高潔を自任する文化芸術界は考えを変える必要があります」と話すのは台湾経済研究院から文化建設委員会クリエイティブ産業プロジェクトセンターの主任に就任した朱正中さんは指摘する。
産業化は、大量化、標準化を意味するが、批判精神をもって時代の先端を行く芸術家がこれを受け入れられるのだろうか。
「産業化は悪いこととは限りません。文化と生活を近づけるもので、異化、狭化させるものではありません」と語るのは台北市のクリエイティブ産業顧問で仏光人文社会学院芸術研究所所長の林谷芳氏だ。
ただ、芸術、特に表現芸術の価値は複製できない経験という点にあり、唯一無二のオリジナル・コンテンツでなければならない。では、クリエイティブ産業のコアに位置するパフォーマンスや音楽、美術などの項目は、どのように大量化し標準化していけばいいのだろう。
クリエイティブ産業政策の推進者で、行政院の政務委員を務める陳其南氏は、クリエイティブ産業の構造から説明する。クリエイティブ産業は内から外へ3層に分かれている。一番内側のコアの部分は美術、演劇、音楽、文学などの本格的な芸術、その外側は応用面としての広告デザインや建築設計、メディアなど、そして一番外側は内側から派生する製造やサービス、観光など、つまり最も産業化しやすい部分である。「コアたる芸術創作について、文化建設委員会はテクノロジー産業における国家科学委員会のような役割を果たします。つまり国家の力を文化育成の源に注ぐということです」と陳其南氏は言う。
「もともと価値がなければ付加価値などありえません」と林谷芳氏は言う。純度の高い文化芸術があってこそ創意と産業が育ち、高付加価値産業を発展させることができる。

台湾の消費市場には外国の文化と価値観があふれている。クリエイティブ産業は利益を生むだけでなく、自国の文化と自信を再確立するものでもある。