大学でのタイ語教育
場所を大学のキャンパスに移そう。台湾大学人類学研究所の博士課程に学ぶ劉康定は、台湾大学文学部と政治大学外交センターのタイ語教師でもある。タイ出身の彼は、かつて中国大陸で1年間中国語を学び、タイに戻ってしばらく通訳をしていたが、中国語能力を高めようと、2007年に台湾に留学してきた。
台湾大学新聞学研究所の修士課程を修了して広告会社で働いていた時、政治大学外交センターのタイ語教師の仕事を紹介された。まさか台湾でタイ語を教えることになるとは思ってもおらず、「これはすごいことだ」と思ったという。そこでタイ語教育発展のために、週にわずか2時間だけの時給の講師であるにもかかわらず、彼は会社を辞め、タイ語教育に専念することにした。「たいへんな決意でした。時給は550元なのですから」と言う。タイ人でありながら中国語も非常に流暢なので、彼の活躍の場は政治大学から台湾大学、中原大学、警察学校、救国団、対外貿易センターなどにまで広がった。
劉康定が教える対象は学生が中心で、台湾人学生の他に、マレーシアやミャンマー、それにタイ人の留学生もいる。ここ数年は東南アジアが注目されていることもあって、受講する生徒は増えており、そのために台湾大学では初級タイ語のカリキュラムを開設した。
履修する学生の動機はさまざまである。タイ文化が好きだから、タイ旅行に行きたいから、タイ北部でボランティアをしたいからという人もいるし、将来東南アジアで働くことになった時のために、と言う人もいる。「タイ語の学習は、想像するほど容易ではないので、生徒たちには自分がタイ語を学ぶ理由をよく考えるようにと言い聞かせています」と言う。ブームに流されるのではなく、明確な目的を持ってほしいからだ。
タイ語の能力は就職に役立つかという問いに対し、鄭海倫も劉康定も同じ考えを話してくれた。タイ語能力は加点要素にはなるかもしれないが、それが採用の鍵になるとは言えない。自分の専門分野の能力を高めるのが最も重要だ、と言う。
タイ語学習者が増えたことから、2015年には「台湾-タイ文化・言語交流協会」が設立された。協会はタイ語教育カリキュラムを開設し、台湾でタイ語検定を行なうなど、タイ語学習を台湾各地に広げようとしている。
「微笑みの国」と呼ばれるタイには、奥深い文化があり、多くの旅行者を惹きつける。それが言語学習の動機になり、言語学習こそ一つの文化を知る最良の方法でもある。台湾のタイ語学習ブームが、台湾とタイとの間の新たな友情の架け橋となることに期待しようではないか。
教楽しい雰囲気でタイ語が学べる「目的達」の教室は、笑顔とタイの香りに 満ちている。
教室で鄭海倫は、生徒にタイ語で生活経験を話させる。言語を活用することで生徒の自信も深まる。
さまざまな教材が タイ語学習を楽しく してくれる。.
タイ出身で中国語能力が高い劉康定は、台湾でタイ語教育という活躍の場を見出した。
大学ではタイ語学習がブームになっている。さまざまな学科の学生が一緒にタイ語を学び、タイ文化の魅力に触れている。