スマホでアップルに挑戦
ノートパソコンに続く次のタッチ・コントローラー市場はスマホである。
2007年6月にアップルが第一世代のiPhoneを発表してから、携帯市場に革新と競争の嵐が巻き起った。一夜の間にマルチフィンガーのスマートフォンがブームとなり、それまでのキーボードタイプの従来型携帯電話はこれに席を譲り、時代遅れとなっていった。
マルチフィンガー・タッチ・コントローラーを得意とするELANも、無論のこと、このビジネスチャンスを狙ったが、そこで再び特許戦争に巻き込まれた。しかも、今度の相手は業界でも公認の難しい相手、アップルだった。
葉董事長によると、最初に自社のマルチフィンガー・タッチ・コントローラの製品を持ってサムスンに商談に出かけたとき、相手はまず「アップルの特許を侵害しているのではないのか」と聞いてきたという。
「どれだけ説明しても、ELANの特許と技術を信用してもらえませんでした。シナプティクスとの特許訴訟での和解ケースを持ち出しても、相手はとにかく取り合ってくれませんでした」と葉董事長は話す。
顧客の信頼を勝ち得るとともに、スマートフォン市場への参入の権利を求めて、2009年4月にELANは小企業ながら、再び市場の巨人アップルに戦いを挑んだ。
アメリカでの訴訟は弁護士費用が高額に上るため、必勝の見通しがなければ自分から訴訟に持ち込む会社は少ないと葉董事長は言う。特許侵害の1項目を訴えても、相手は10項目の特許で訴訟を返してくるし、そのために訴訟プロセスには時間がかかる。その結果、どれだけ費用がかかるかわからないのである。
アップルとの訴訟合戦は、その難しさと言い、プレッシャーの大きさと言い、シナプティクスの時の数倍に上るものだったが、ELANは確かにコア技術を所有していたため、常に高姿勢のアップルでさえ最後には折れてきて、3年後の2012年3月には和解が成立し、双方が互いに特許を許諾することになった。
トップメーカーの戦略的パートナーに
ELANにとっては、国際的な大企業を相手に国境を越えた特許訴訟に二回も勝ったことで、会社のさらなる発展につながった。2000万米ドルに上る巨額のロイヤリティを得たばかりではなく、タッチスクリーン・コントローラー市場における競争の優位性を強化することができた。ここからノートパソコン、スマホ、タブレット、スマートテレビなど、多様な電子製品に手を広げることができるようになったのである。
その一方、葉董事長は将来を見通し、過去の幸運が将来の幸運を約束するものではないと、気を引き締める。ビジネスチャンスを逃さず、将来の特許戦争で不利にならないために。ELANではこれからも研究開発を強化し、知的財産権の世界戦略を推進していく。さらに、積極的に自社製品が市場のデファクト・スタンダードとなることを目指している。
ここ数年、ELANはマイクロソフト、インテル、グーグルなどの業界大手の戦略的パートナーとなることに成功している。まず、世界で最初にWindows8のタッチスクリーン・コントローラーの認証を受け(現在、Windows8のタッチスクリーン・コントローラーではシェア世界一)、次いでインテルと協力して新しいプラットフォームHaswell LPML1を開発し、またグーグルとは第二世代アンドロイドのタブレットを開発している。さらには3Dフォースセンサー技術を用いて、世界最初の多機能スマートテレビのリモコンなど、多様な製品を開発している。
シナプティクスとアップルにロイヤリティを支払わせることに成功した台湾最初の企業として、ELANはコア技術と周到な特許戦略を武器に、市場に確固たる地位を築いた。小企業ながら大企業に挑戦する精神により、今日の世界のタッチスクリーン・コントローラー市場をリードすることができたのである。その経験は、国境をまたぐ特許戦争で苦闘する多くのメーカーにとって、貴重な手本となることだろう。