恐れを知らない男の子
今年のアニメ映画「ファイヤーボール」は『西遊記』が元になっている。これは孫悟空と紅孩児の友情と冒険の物語であり、宏広初のオリジナル作品だ。
制作期間3年、費用は新聞局からの助成金1500万元、経済部工業局から借り入れた5000万元など計1億5000万元が費やされた。8月からの興行成績は1000万元を突破、台湾映画では蔡明亮の「浮気雲(天辺一朵雲)」、陳正道の「宅変」に続いた。
監督の王童は、宏広の王中元社長の弟で「無言の丘(無言的山丘)」「村と爆弾(稲草人)」などで高い評価を得てきた。2002年には中央電影を退職、映画低迷でやはり転換期を迎えていた王童は宏広に入社、演出、監督などを担当し、宏広のオリジナル制作の舵取りを任されたのだ。
受注制作の場合は、脚本とキャラクターがすでにあり、1本6ヶ月で作業が終わるが、利潤は大きくない。だがオリジナル作品は、企画から販売まで最低3年はかかり資金も億単位が必要で、リスクも高い。だが成功すれば、利益や名声も知名度も得られ、その効果は受注の場合とは比べ物にならない。
宏広はオリジナル作品を手がけるにあたって、物語とビジュアルスタイルを特に慎重に選んだ。西遊記を題材にしたのは、カンフーのアクションもあり、エスニックな雰囲気もある神話だからだ。王童は「だから心理面を詳細に描く必要がなく、アニメに適しているのです。文化的な違いも小さく、説明の必要が少ないので、海外にも売りやすいのです」と言う。ここ数年の世界的な中国ブームも、ファイヤーボールが世界に躍り出る後押しになるだろう。
しかし、王童の以前の作品の真骨頂は、重厚で綿密な描写だった。このためアニメ制作は、彼のそれまでの作品とは全く違う。「テンポのいい展開、オーバーな動き、若者言葉などで、現代的で国際的なイメージを持たせるのが今までと違う点です」
若者の心をつかむため、主人公紅孩児と孫悟空の掛け合いでは英語や流行語が頻出し、牛魔王は求愛の場面でフラメンコを踊り、三蔵法師一行の旅のBGMは人気バンド五月天(メイデイ)だ。こうしたコラージュ的な手法について王童は「西遊記のイメージを一新し、全く新しい現代的なイメージを持たせたいのです」と意欲的だ。宏広のベテラン技術ディレクターの呉為章さんは、技術面から見れば、「ファイヤーボール」も以前の受注作品とはそれほど違わないと言う。だがそれが華人の物語であり、宏広の作品なので「絵に心がこもり、自分の子供のような気持ちです」と言う。

「ファイヤーボール」の原画。アニメーターはこれを基に、キャラクターが動いて見えるように間のコマを描いていく。