世界が目を見張る合唱力
合唱が国際舞台で台湾の名を高めている。
第8回世界合唱大会は7月にラトビアの首都リガで行われた。同大会の旧名称は「合唱オリンピック」、世界最大の合唱大会で、今年は73ヶ国から460チームが参加し、歌声を競い合った。
大会は年齢や性別、曲の形式によって29部門に分かれる。台湾からの7チームは、新北市少年合唱団、台中芸術家合唱団、清華大学合唱団がそれぞれ少年の部、現代歌曲の部、民謡の部で金メダルを獲得し、高い実力を認められた。
かつての記録では、台北市成功高校OBからなる「拉縴人合唱団」が2002年に室内男声の部で1位になり、授賞式での中華民国国旗掲揚が栄えある出来事だった。
近年は確かに国際舞台での受賞が増えている。やはり7月には台北フィル少年及児童合唱団が30年の歴史を持つカナダのカサウミュー国際合唱フェスティバルで、アメリカやニュージーランド、チェコ、ロシア、ケニアなどの強豪を破り、児童の部で1位に輝いた。また重要な開幕と閉幕公演も台北フィル少年及児童合唱団が受け持った。受賞だけでなく、世界公演の招きも相次いでいる。台北フィル合唱団の常任指揮兼音楽監督である古育仲は、「アジア合唱五強」と言えば、台湾、日本、韓国、フィリピン、インドネシアを指すと言う。
台北愛楽文教基金会芸術監督の杜黒は、台湾の合唱団が海外で好成績を収めるようになったのは、合唱力だけでなく、合唱で文化を伝える点が認められたからだと言う。
合唱テクニックだけでなく
台北フィル少年及児童合唱団がカサウミューの大会で歌ったのは、原住民の古い調べや、呂泉生、銭南章といった台湾の作曲家の曲、そして華人には馴染み深い、新疆ウィグル族の民謡を改編した「青春舞曲」などで、豊かな文化力を示した。
一方、中国大陸の合唱団に欠けているのは、まさにこの文化力だ。「中国大陸は国際コンテストへ多くのチームを送り出しています。コンテストでは普通10~15分で2~3曲歌いますから、実力を示すのにちょうどいい量です。でも、招待を受けて出演するフェスティバルなどでは大陸のチームはあまり見ません」と、自らも国際合唱連合(IFCM)台湾代表であり、世界合唱大会で2012年に審査員を務めた古育仲は言う。
古育仲によれば、フェスティバルでは多くの曲を、或いは公演全部を歌い通すことになるので、曲目や音楽スタイルを選び、いかに特色を出すか考えなければならない。こうしたことは大陸の多くの合唱団にとって難しいことだという。
台湾ではこの10年余り、合唱芸術や合唱文化に力を入れてきた。大会での受賞に満足するだけでなく、それを芸術の伝達にまで高めたのである。その大きな役割を果たしたのが、今年で14回を数える台北国際合唱フェスティバルだ。
フェスティバルが育む合唱文化
台北国際合唱フェスティバルは1991年に文化建設委員会(現在の文化部)が始めたもので、海外の合唱団を招き、交流や学習の場とした。
1996年から台北愛楽文教基金会の主催となり、2008年からは規模も拡大する。つまり毎年の開催となり、しかも国内外のプロの合唱団による公演や、台湾の合唱団同士の発表と交流、各地への巡回公演、指揮者や合唱団のための研修などが組み込まれ、国内の合唱団にとっては国際舞台へとつながる重要な場となっていった。
「1週間も続くフェスティバルは、コンテストではなく、コーラスそのものに焦点を置いたものです。このような音楽祭はアジアではあまり見られません」と古育仲は言う。
今年のフェスティバルでは、ドイツの著名な合唱指揮者であるヘルムート・リリングが開幕公演で、台北フィル合唱団によるブラームス『ドイツ・レクイエム』を指揮した。閉幕公演は、ハンガリーの指揮者ガボール・ホッレルングが台北フィル合唱団と節慶合唱団を指揮し、カール・オルフの大作「カルミナ・ブラーナ」を披露した。ここまで充実した内容の公演は、海外のコンサートホールでもめったにない。
ほかにも、オーストラリアのゴンドワナ・ヴォイシズ、フランスのミクロコスモス室内合唱団、カナダのアカペラグループCadence、フィリピンのU.P. Singing Ambassadors、そして中国大陸の合唱団では異彩を放つ内モンゴル青少年合唱団を招いて各地で公演し、小学生や地域の合唱団と交流を行った。
古育仲は、海外からの多様な合唱団にふれることで学ぶことは多いと言う。「コーラス芸術は抽象的で教えにくいものですが、世界レベルの合唱を間近に見ることで、それらを理解できます」
こうした台北国際合唱フェスティバルは、10数年で多くの人材を育んだ。「台湾の50歳以下の合唱指揮者のほとんどが、このフェスティバルの指揮者研修で学んでいます」と古育仲は言う。
音楽は自分を楽しませ、人をも楽しませる。台湾におけるこの10数年の積み重ねが、他者とともに楽しめる豊かな合唱シーンを生み出した。