完璧なタイワンマスを
台湾固有種の最初の作品は、保護種に指定されているタイワンマスだった。最初は写真を見てデザインし、完成した作品を専門家に見てもらおうと、農業委員会特有生物研究保育センターに郵送した。修正を加えながら何回もやり取りを繰り返すと、専門家に「そこまでタイワンマスにこだわらなくても単に『ペーパーアート・フィッシュ』と呼べばいいではないか」と言われた。
だが洪新富の志は高く、「だめ。必ずタイワンマスに挑戦する。でなければ専門家に教えを請う意味がない」と、生物的特徴をもっと知るために写真集も買ってきた。するといくつかの間違いに気づいた。脂びれを背びれと勘違いしていたし、背にあるべき曲線がなく、頭も小さかった。幾度も修正し、15カ月かけてやっと思い通りの作品となった。展示の際には「専門家に太鼓判をもらったので発表できます」と自信を見せた。
2002年に彼のタイワンマスがカナダで展示されると、バンクーバーにある博物館の館長の目に留まり、翌年には同館で展示することになった。特別にタイワンマスの回遊の様子を作って展示し、展示後は同館に寄贈した。彼はタイワンマスの作品を手に取って我々に見せながら言う。「タイワンマスは本当に台湾に似ています。頭側が広くて尾の方は狭い。中央山脈があって、険しい花東地方と、肥沃な嘉南地方が広がります」
特有生物研究保育センター棲地生態チームの助理研究員である楊正雄によれば、台湾固有亜種のタイワンマスは、世界でも珍しく亜熱帯に生息する温帯冷水性魚類で、台湾の大甲渓上流だけに見られる。氷河期に台湾に回遊してきた後に気候と地形の変化によって台湾の陸地に留まった陸封型の魚類と考えられ、それには大甲渓上流の河床の勾配の緩やかさが関係していると推測される。
またタイワンマスの中国語名「桜花鉤吻鮭」はその繁殖期と体の特徴から来ていると楊正雄は説明する。台湾で最も注目を浴びている淡水魚で、体側面の中央に楕円形の斑紋が一列に並び、その上部にも黒い斑点が多数ある。珍しい種であるうえ、開発によって生息地が大きく縮小したことから、台湾では絶滅危惧種に指定されており、一度は生息数が500匹を下回ったこともあった。
だが1970年代から政府によって研究観察や生息地の保護、人工増殖などが進められ、この20年間は雪覇国家公園によって、生息地付近の堰の撤去や河川への放流などが行われている。モニタリングによれば、個体数や分布範囲が大幅に増えており、台湾における種の保護の成功例の一つとなっている。洪信富の作ったタイワンマスはまるで動き出しそうで、しかも脂びれの特徴まで残してあり、難度がうかがえる。

絶滅の危機に瀕するタイワンヤマネコは近年全国の関心を集めている。洪新富は線を活かしてタイワンヤマネコの額と目の特徴を表現し、保護を呼びかけている。