台湾各地で花開く塗装
長年教育現場に立ってきた陳協建は、「子どもに塗装を学ばせる」と聞くだけで、保護者が「きつくて体に悪い仕事だ」という先入観から拒否反応を示す現実を率直に語る。しかし、職業教育制度が徐々に整い、環境に配慮した無害な塗料が普及し、さらに国際大会での塗装台湾代表の度重なる受賞によって、状況は着実に変わりつつある。陳協建は恩師・陳殿礼とともに、技能競技の「油漆装潢(塗装・内装)」を「漆作装潢(Painting and Decorating。意匠塗装・装飾の意)」へと改称する運動を推進した。これは欧州と同じ技術的系譜に立ち返り、工法と芸術性を併せ持つ分野として塗装を再定義する試みだ。ヨーロッパでよく見られる壁画や、宮殿内に見られる石柱を模した装飾も漆作の範疇に含まれ、その歴史はすでに百年以上に及ぶ。
陳協建のもとで学んだ生徒たちは、今では各地に広がり、会社を立ち上げて仕事を請け負ったり、教育に携わったり、後進を教えたりしており、産業の好循環を生み出している。「若い世代はプロ意識が高く、礼儀正しいうえ、現場も以前よりずっと整ってきました」と陳協建は業界全体の質が明らかに向上していると感じている。
今、最も気にかけているのは、社会的に弱い立場にある子どもたちだという。「そういう子達こそ、身を立てるための確かな技術が必要なんです」。塗装は参入のハードルが低く、道具もシンプルだ。学ぶ意欲さえあれば、技術で自立することができる。経験や美的感覚、創造性を積み重ねることで、仕事にさらなる付加価値を与えることも可能だ。
「ヨーロッパを歩けば、あちこちの街角に彩りあふれるペイントがあるんですよ。でも台湾の屋外の壁面は、今も灰色が大半なんです」と話す陳協建にとって、この状態はまさに“塗装のブルーオーシャン”だ。より多くの人がこの産業の可能性に気づき、塗装によって台湾を彩り、少しずつ都市の風景を変えていく――陳協建はそんな未来を思い描いている。
.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
台漆線漆作工作室に並ぶ数々のサンプルから、塗装表現の多様さがうかがえる。
.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
陳協建(中央)は多くの人材を育ててきたが、技術指導だけでなく、人間性や仕事への姿勢を何より重視している。(陳協建提供)
.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
教師、審査員、審査員長として、歴代の塗装台湾代表を束ね、後進育成に力を注ぐ陳協建(右から4人目)。台湾の選手は国際技能競技大会でも優秀な成績を収めている。(陳協建提供)
.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
陳協建は職業訓練課程の指導にも携わり、再就職を目指す人や業界の職人がアートペインティングの技術を高められるよう支援している。(陳協建提供)
.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
塗装には、スポンジ、ローラー、刷毛、コテ、エアブラシという五大工具がある。技術を柔軟に運用し、色彩と創意を加えることで、表現の可能性は無限に広がる。
.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
学生時代から塗装に触れてきた陳協建は、この分野に30年近く携わってきた。(陳協建提供)
.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
陳協建が松山文創園区に手がけた作品『菸縷時光』。タバコ工場の歴史をたどれるだけでなく、躍動感ある画面から制作時の喜びが伝わってくる。
.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
台湾の技職教育制度は成熟を深め、政府は中学生の段階から職業探索を促す施策を進めている。写真は2025年アジア技能競技大会で意匠塗装・装飾部門の金メダルを獲得した台湾代表・洪錦瑋。
.jpg?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
陳協建が金門の水頭埠頭に制作した壁画には、金門大橋や風獅爺など、地域の象徴が取り入れられている。(陳協建提供)
.JPG?w=1080&mode=crop&format=webp&quality=80)
台中国際空港の到着ロビーにあるアートウォール「媽祖遶境」。神輿担ぎ、家将(守護・鎮邪の役割を担う宗教的存在)、信徒、街並みなどが細やかに描かれ、濃厚な台湾らしさに満ちている。(蘇俐穎撮影)