竹の椅子に込められた知識
台南市北区にある信二竹店にやってきた。ここは、家具作りの継承がすでに4代目になる手作りの竹製家具店であり、台南市では唯一「包管竹技法(一方の竹を包むような繋ぎ方をする技法)」を維持している店だ。3代目の当主、王壬煇は決して楽とは言えない歳月を経てきたが、今でも毎日店を開け、竹を打つ音を店内に高らかに響かせている。
竹について語り始めると、王壬煇の話は止まらず、何を聞いても答えてくれる。家具を作るには3年ほど育った桂竹(タイワンマダケ)を使う。若すぎる竹は繊維が柔らかすぎ、老いた竹は折れやすいからだ。竹が入荷されると、室内に15日間置いたままにし、できるだけ乾燥させてから制作にかかる。材料に対する様々なこだわりで、彼の家具は質が高く、確かな評価を得ている。1999年の台湾大地震の後、多くの歴史的木造建築物や廟の修復が必要となったが、その際、台中霧峰の林家花園や鹿港龍山寺では、王壬煇の作った竹釘が用いられた。「地面から三節目の竹しか私は使いません。この部分が最も強度が高いのです。竹釘は6~7月の暑い日に少なくとも15日乾燥させ、使う前には熱した油に数時間浸す必要があります。そうすれば表面に保護膜が作られ、防腐効果があります」と言う。
木造建築に木の釘を使わないのはどういうわけだろう。「木の繊維は縦や横に走ったり、曲がったりしているので、木の釘は力がかかると折れやすいのです。また鉄釘の場合は、木材に残っている水分で釘が錆びます。その点、竹は繊維がまっすぐで、しかもうちでは竹の最も硬い部分を使いますから、建物の構造にかかる力に耐え得るのです。また手作りの竹釘は四角く削ってあり、打ち込む穴は丸いので、釘を打ち込むと四隅がのめり込んで引っかかります。そのうえ木材の水分を吸収して竹釘が膨張するので、よりしっかりと接合できます」
一つの質問に、まさに至れり尽くせりの解答だった。この仕事には様々な知識があるが、それは彼の40年余りの経験の蓄積である。
解説しながらも、王壬煇は椅子を作る長い竹を品定めしていた。選んだのは両端にフシのあるものだ。「椅子の脚にはこういうのが堅くて良いのです」竹の表面に印をつけてから、ノミを軽く当ててその部分を取り除いた後、竹の内壁を削っていく。手を動かしながら、「ここは後で火であぶって折り曲げる部分です。角度をきちんとつけておかないと、ぴったりと組み合わせることができません」と説明してくれた。
その工程が進んでいる間、そばで4代目の王升南が火をおこしていた。大きい火で、素早くやらなければならない。さきほど削って半分ほどくり抜いた竹を火に近づける。「竹は火であぶると、しなりやすくなるので、そうして必要な角度に曲げます」と王升南が言う。「時間の加減が大切で、あぶりすぎてはいけません」王升南は両手に竹の変化を感じたところで、あぶった竹を手早く曲げ、もう1本の竹を軸にして2本を合わせる。そこに王壬煇が縄を巻いて、椅子の脚の角度を固定していく。
親子がぴたりと連携し、一人が終ると一人がそれをつなぐ。まるでこの家族における技術の伝承を見るようだった。