映画『ホビット 決戦のゆくえ』は2014年12月の公開と同時に世界中でヒットし、ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』及び『ホビット』の各三部作は、映画産業におけるニュージーランドの地位を大いに高めた。三期連続で政権を担うジョン・キー首相も、世界を回ってマーケティングに努め、ニュージーランドで映画撮影をしてもらおうと各国の映画監督に呼びかける。こうしたニュージーランド映画産業の盛況を、アメリカン・フィルム・インスティチュートは「世界でもまれに見る成功例」と形容する。
10年前、台湾とニュージーランドの初の合作3D特撮映画『白蛇伝』を作る話が持ち上がり、結局は実現しなかったことがあった。
ところが今、再びチャンスが訪れている。台湾とニュージーランドの間で締結された経済協力協定(ANZTEC)の条項に、映画共同制作が盛り込まれたからだ。締結2年目となる今年、両国はそれをどのように進めているのだろうか。
アメリカ在住の台湾人監督、アン・リーによる2000年の『グリーン・デスティニー』は、世界で2億1350米ドルの興行成績を上げ、第73回米アカデミー賞で外国語映画賞など4部門を受賞した。それから14年、世界中のファンが待ちかねる『グリーン・デスティニー2(臥虎蔵龍2:青冥宝剣)』のロケ地をニュージーランドとする話が持ち上がる。一度は実現が危ぶまれたが、無事予定通り撮影された。

かつて、台湾とニュージーランドの初の協力による3D特撮映画『白蛇伝』制作の話が持ち上がったが、結局は実現しなかった。写真は、台南芸術大学の余為政教授が描いた映画『白蛇伝』の絵コンテ。
『グリーン・デスティニー2』は、アメリカと中国大陸の共同出資で、ユエン・ウーピン(袁和平)監督がメガホンを執る。兪秀蓮役は前作と同じくミシェール・ヨー(楊紫瓊)が、そして主役の孟思昭役は香港のドニー・イェン(甄子丹)が演じる。撮影スタッフは2014年6月にニュージーランドに赴き、オークランド・フィルム・スタジオでセット撮影を行った。
市が運営する同スタジオでは近年、ニュージーランドのアンドリュー・アダムソン監督の『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』や同『第2章:カスピアン王子の角笛』、そしてイギリスのピーター・ウェーバー監督の『終戦のエンペラー』など国際巨編が作られている。
2014年7月31日明け方、同スタジオで火災が発生、出火地点はまさに『グリーン・デスティニー2』撮影チームが道具を置くスタジオだった。消防車18台、消防士60数名による消火でまもなく鎮火され、財物に損失は出たもののスタッフにはケガはなく、撮影進度にも影響はなかった。
火災後、同作品のプロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインがアメリカから駆けつけた。その際、記者たちに、ニュージーランドの風景やスタジオのセットを称賛し、『グリーン・デスティニー2』では想像を超えたシーンが撮影できるだろうと語った。
確かにニュージーランドには多くの映画関係者が訪れて山河や原野、フィヨルドなどの景観に魅せられ、また特殊メイクや道具、特殊効果などの技術に称賛を惜しまない。今や北島にあるオークランドと首都ウェリントンは映画産業クラスターを形成してニュージーランドの二大映像産業都市となり、文化発信の役割をも果たす。

かつて、台湾とニュージーランドの初の協力による3D特撮映画『白蛇伝』制作の話が持ち上がったが、結局は実現しなかった。写真は、台南芸術大学の余為政教授が描いた映画『白蛇伝』の絵コンテ。
ニュージーランド統計局によれば、2013年、同国の3000社に及ぶ映像関連企業のうち、2500社余りがオークランド或いはウェリントンにある。両地は映像産業の二大中心地なのだ。
オークランドは映画撮影が中心で、国内の映画製作会社の6割が集中する。一方、ウェリントンは編集などポストプロダクションの中心地で、いわゆるポスプロ企業が942社集まり、これも全国の6割に達する。中でも有名なのは、『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』のピーター・ジャクソン監督らが設立した「WETAデジタル」だ。
人口わずか450万人のニュージーランドにとって映像産業の規模は小さくない。2013年には長編40作が撮影され、産業全体の売上は14億620万NZドル(350億8800万台湾元)、これは、ニュージーランドのGDP1000ドルのうち7ドルが映像産業によるものという計算になる。
今年に入っても、ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』三部曲やディズニーのリメイク版『ピートとドラゴン』の撮影や編集がニュージーランドで行われている。オークランドで火災に遭った『グリーン・デスティニー2』は、昨年10月に撮影を終えている。ニュージーランド政府によれば、控えめに見積もって1977年からすでに150作以上の長編が国内で撮影されている。
ピーター・ジャクソン監督は「ニュージーランドは小国ではなく、大きな村だ」と言う。彼の目に映るニュージーランドは、映画作りの夢を実現できる国であり、『ロード・オブ・ザ・リング』の原作者トールキンの描く「中つ国」でもある。
映画によってニュージーランドはもはや地球の下部ではなく、中心に位置するようになった。

映画がニュージーランドの観光産業を牽引している。映画ファンは『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビット』に登場するキャラクターを見にウェタケーブを訪れる。
経済協力協定締結より早く、台湾はニュージーランドと共同で映画を作る機会があったのだが、好機をうまくとらえられなかった。
当時はおりしも、2003年に『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』が前2作に続き大ヒット、11億米ドルの興行収入で同年トップになった。6位はトム・クルーズ主演の『ラストサムライ』だったが、これもニュージーランドでロケが行われ、北島のタラナキ山の風景が見られる。まさにニュージーランド映画産業が輝いた1年だった。
台湾のヒット曲『龍的伝人』で知られるフォークシンガー、侯徳健は当時すでにニュージーランドで市民権を得、デジタル・コンテンツ技術を習得していたほか、3D特撮産業にも触手を伸ばしていた。2001年、『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』の成功を目の当たりにして、侯は3D特撮の魅力を確信し、この西洋の科学技術で中国伝統の物語『白蛇伝』を映画化しようと考えた。
翌年の2004年7月、全編英語による『白蛇伝』3Dアニメ撮影計画を携えて台湾に帰国、記者会見を開き、ニュージーランドの2社と契約すると発表した。うち1社は映画制作会社Silverscreen(2007年に任意整理によって倒産)、もう1社は『ロード・オブ・ザ・リング』の特撮を担当したOktobor社だった。
『白蛇伝』は主に台湾とニュージーランドから資金4000万米ドル(13億台湾元)を募る計画で、両国政府とも大いに興味を示していた。我が国の新聞局と経済部は、デジタルコンテンツ産業推進にとって重要な投資と見ていた。侯徳健の友人で、国立台南芸術大学アニメ芸術及映像美学研究所の余為政・教授は当時、技術面での協力を買って出て、主要シーンの絵コンテを作成した。
余為政は当時「光華」の取材を受けた時、具体的なロケ地まで決めていた。『ラストサムライ』で使われた日本のロケ地を中国の西湖に見立て、白蛇と僧が戦う「水漫金山寺」のシーンは、波を起こす池のセットを作ることになっていた。また、ニュージーランド側はハリウッドの監督を2人推薦していた。うち一人は『13デイズ』の監督、ロジャー・ドナルドソンだったという。
キャストは、ニュージーランド側の意向で、法海和尚役に『ロード・オブ・ザ・リング』でガンダルフ役を演じたイアン・マッケランの名が上がっていたが、結局は『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスになった。また台湾側からも、『グリーン・デスティニー』で玉嬌龍を演じた章子怡に白蛇役を、相手役の許仙には金城武を第一候補とする希望が出され、了承も得ていた。
2006年のクランクインが予定され、あらゆる準備が進んでいたが、結局は実現しなかった。資金繰りが大きな原因だった。「台湾のベンチャーキャピタルとは話が進み、問題はなかったのですが、主要資金源からの承諾が遅々として得られませんでした」当時は政府がまだ3D映画に自信を持てなかったことが原因ではないかと、余為政は考える。「あと一歩だったのですが」
台湾とニュージーランドが映画産業で初めて接点を持ち、すれちがった出来事だった。

かつて、台湾とニュージーランドの初の協力による3D特撮映画『白蛇伝』制作の話が持ち上がったが、結局は実現しなかった。写真は、台南芸術大学の余為政教授が描いた映画『白蛇伝』の絵コンテ。
『白蛇伝』の話が消えた後、当時のニュージーランド台北商工弁事処のクレア・ファーンリー処長の協力を得て、余為政は600万米ドルの小規模予算で両国合作のSFラブストーリー『時光恋人』制作を計画した。それは、余為政が長年構想・準備してきた英語によるデジタル作品で、米国在住の小説家、張系国の『夜曲』を改編したものだ。原作の1960年代の台北市青田街という時代設定を、1930年代の上海に置き換えた。ヒロインがタイムスリップして過去の男性と恋愛するが、結局は歴史を変えられないという話だ。
2005年に余為政は、教育部による第1回「芸術及び設計リーダー海外育成プロジェクト」に協力した際、参加した学生たちに『時光恋人』についての90秒短編フィルムを作らせた。その制作は『ナルニア国物語』のポストプロダクションが行われたオークランドのケリー・パーク・フィルム・ビッレッジで行われた。結局は600万米ドル合作の話はまとまらなかったが、翌年、ケリー・パーク・フィルム・ビッレッジから『時光恋人』の版権を買いたいと申し出があった。だが、「製作に関わることが前提であり、売るだけというのは考えられない」と余は考えをきっぱり伝えた。
ANZTECが締結された今、『白蛇伝』で果たせなかった台湾・ニュージーランド合作の夢を、『時光恋人』で叶えられればと余は願っている。
ニュージーランド映画振興委員会のムラデン・イヴァンチッチはこう語る。どんな映画でも合作実現は難しい。監督選びも、各国の市場を満足させるのも難しい。「巨編を急いで作って世界興行を行ない、評判を下げるより、まずは台湾とニュージーランドでヒットするような映画を作るほうが賢明です」「始まったばかりなので双方の映画人が理解し合える機会が必要です。だからまず機会を作らなければ」と、ニュージーランドらしい着実な方向をイヴァンチッチは示す。
ANZTECは両国の仲人役のようなものと言えるかもしれない。良縁がまとまるには、フィーリングだけでなく、両者の意向や損得勘定のバランスも大切だ。すでにチャンスは二度訪れた。台湾もまた着実に歩みを進めることを期待したい。

ニュージーランドは「中つ国」に築かれた映画王国である。ここの目を見張るような自然景観が『ホビット』のはなれ山や裂け谷のロケ地となった。

かつて、台湾とニュージーランドの初の協力による3D特撮映画『白蛇伝』制作の話が持ち上がったが、結局は実現しなかった。写真は、台南芸術大学の余為政教授が描いた映画『白蛇伝』の絵コンテ。