数人で始めた会社は、40年たって社員150名、月20冊の新刊を出す大手出版社に成長した。董事長の王栄文は、その成功の理由を「運の良さです」と言う。2008年の金鼎賞「特別貢献賞」の授賞式でも王栄文は「これまで出会ってきた人々のおかげです」と感謝した。
遠流には確かに多くの著名な人材が関わってきた。王栄文には人と出会う才能があるのではないだろうか。「その人が出版業に愛情を持つかどうかを見るだけです」本当に出版という仕事が好きで、知識欲があれば、問題はないと彼は言う。
王栄文は「退却を知らない」出版人で、商売替えを考えたことは一度もない。「楽しくやれるのは社会で最も聡明な頭脳に出会えるからです」
「1冊の本が台湾全体に影響を与える。これは最大の栄誉であり、報酬です」ベストセラーは金銭的な収益をもたらすだけでなく、新たなジャンル、新たな思想を巻き起こす。それは何にも勝る収穫だと王栄文は言う。これまで、李敖、柏楊、金庸、李登輝といった人々がベストセラーを生み、社会に影響を及ぼしてきた。
遠流vs光華
出版界にとって打撃となったデジタル化の波を、遠流は新たなチャンスとして捉えた。
百科事典出版が夢だった王栄文は、ネット時代を迎え、2000年にオンライン百科事典「智慧蔵」を立ち上げる。『ブリタニカ百科事典』『中国大百科全書』などのネット・リソースや、自社の『科学人』中・英文アーカイブを利用したほか、彼は「光華」にも注目した。「台湾には英文訳付きの雑誌は少なく、『光華』は内容も中・英文の質も高いので、価値の高い知識ベースなのです」
王栄文のオンライン百科事典は無料のウィキペディアに勝てなかったものの、この「光華智慧蔵」はバイリンガル・コーパスとして最適だと、清華大学情報学科の張俊盛教授によって研究に用いられた。
事業経営の持続には、先駆性が求められる。ここ数年、王栄文は文化クリエイティブ産業に進出し、華山1941文創パークや文化サロンなどの運営によって、紙の書籍、デジタル、空間という三つのメディアの統合を図る。「遠流出版、台湾クラウド書庫、華山文創パークはどれも文化のプラットホームとなり、出会うべき人たちを巡り合せます」と王栄文は誇らしげに語る。
『光華』は、質の高い中国語と外国語で台湾の美しい暮らしの様々な姿を切り取り、文化の窓、文化外交の利器となってきました。今後は、自由な題材、ジャンルや業界を越えたコラボという方向への邁進を祈ります。『光』輝く『華』へと。
――王栄文