出版界第3の勢力「本を聞く」
毎年約4万冊の新刊が出版される台湾だが、オーディオブックの普及は遅れた。主な原因は、欧米ほど国土の広くない台湾では通勤や移動時間が短く、需要が高くないことだろう。
「台湾の出版社は中小企業が多いことも原因です」と音声メディア「鏡好聴」の徐淑卿チーフ·ディレクターは言う。「紙、電子、オーディオ」は今や出版業界の三大主力商品だ。紙から電子書籍への変換は比較的容易だが、オーディオブックへの変換となると、文章の書き直し、吹替え、ミキシング、編集を経て、それからデザイン、マーケティングとなり、コストだけでなく新たに本を出版するほどの労力がかかる。しかもオーディオブックを聞く習慣がまだ消費者に浸透していないため、多くの出版社が踏み出せないできた。
2019年、「遍路文化」の設立が台湾オーディオブック市場の幕開けとなった。遍路文化の呉巧亮CEOは、オーディオ·プロダクツを選んだのは、台湾の出版能力を見込んだからだと言う。台湾には1000社を超える出版社があり、毎年何万冊もの新刊が出る。だが、ロングセラー型の商品を除けば、多くは発売から3ヵ月で姿を消し、チャート上位に入るのはごくわずかだ。「多くの優れたコンテンツがあるのに、死なせてしまうのは惜しいです」と彼女は熱く語る。
遍路文化の商品は大きく3種に分かれる。オンライン学習と、書籍を録音して音響効果を加えたオーディオブック、そして劇作家に依頼して名作を脚本化したオーディオドラマだ。呉巧亮はこう分析する。紙の本もオーディオブックもその編集ロジックに大差はない。最も価値があり、面白いものを掘り起こし、わかりやすく再構成する。これは本の編集者が常にやってきたことだ。だが「製品への理解と技術面で大きく異なります」
ジャンル間の「移し替え」作業を容易にするため、「鏡伝媒(ミラーメディア)」の傘下に音声プラットフォーム「鏡好聴」が設立された。準備初期にすぐさま五つのレコーディングスタジオを設置、また鏡好聴学院を設立してキャスターの募集·養成を行なった。こうした一貫式運営は業界でも初めてだった。
「鏡好聴」設立の発端は「鏡文学」の董成瑜·董事長だ。オーディオ·プロダクツのヘビーユーザーだった彼女は市場にも敏感だった。また鏡好聴は、ミラー·グループのニュースメディアや出版社などから豊かなリソースを共有できた。おかげで開設後すぐ、単品購入のほかに、聞き放題のサブスクリプション制も導入、やがて「華文音声コンテンツのNetflix」になると野望を抱く。
音声プロダクツをメインに打ち出す遍路文化は、台湾のオーディオエコノミーの幕開けを告げる。