かつて泥地は汚くて埋め立てるのが何よりと考えられていたが、近年は湿地の保護が呼びかけられ、環境保護団体が湿地の環境変化を観察して、湿地植物保護センターが設立されるなど、湿地の大規模な消滅にややブレーキがかかってきた。その中でも彰化県鹿港付近の福興郷では、捨てられた農地を湿地として蘇らせ、水鳥の天国となった。これはエコツーリズムを通して自然を蘇らせた最良のケースだと、中華民国エコツーリズム協会では話す。
「福興郷の湿地は、偶然生まれた自然の楽園です」と、彰化県環境保護連盟のボランティアで、東海大学環境科学学科研究員の蔡嘉揚さんは話す。その物語は60年代に台湾西海岸で盛んとなった養殖に始まる。その当時の福興郷福宝村では、中部や南部の海岸と同じく養殖と農業が主要産業で、地下水を汲み上げすぎたために地盤が沈下し、土壌塩害が進み、70年代以降はサトウキビ畑が牧草地に変えられ、酪農に転進していった。それがさらに、近隣の彰浜工業区の埋立用土砂の掘削が始まり、さらに台湾大地震の影響を受けて地盤沈下がさらに進んだ。
「塩分が多すぎて畑にならなくなりました」と、福宝村の黄建財村長は廃棄された農地を指差す。塩害のためにマメ科のシロゴチョウなどの牧草さえ生えなくなり、休耕補助も受けられず、数十ヘクタールの土地が荒れるに任された。そのころ、環境保護団体が隣の漢宝村の休耕地を借り受けて水鳥の生息地としているという新聞記事を読んだ村長は、村の土地も貸し出したいと考えた。
休耕地の転機
「自然保護管理の方法で休耕地や荒れ地を自然保護区とし、また地域おこしの観点から、住民も生息地の保護に積極的に参加してほしいと思いました。さらにエコツーリズムと環境保護教育の収入で村に経済効果をもたらします」と蔡さんは話す。こんな構想も最初は住民の賛同を十分に得られなかった。しかし、黄村長の支持を得て、彰化環境保護連盟は2000年から農業委員会に経費を申請し、20ヘクタールの休耕地を借り受けて、計画的な生息地造成を開始した。
「生息地の特性によって目標を定めて運営しています」と蔡さんは話す。例えば餌場を例に取る。水鳥が越冬に来た時は生息地への要求は高くない。養殖池の一つもあれば数千羽の鳥がひしめくことになるが、より大切なのは食物の補給である。カニや貝、エビなどの底生生物が十分かどうかがポイントになる。
底生生物が繁殖できるかどうかは水質に関係する。付近の養殖池は塩分が高すぎ、藻類が大量に発生して、水と土壌の酸素が欠乏(富栄養化)して、底生生物は死滅してしまう。そこでまず藻類を除去し、水質改善と水の循環を回復する。富栄養化が進みすぎた土壌は、掘り返して土を空気に触れさせる。また水位が高すぎると、シギやチドリは餌を捕れないので、水位のコントロールも必要となる。
水鳥には餌場に加えて繁殖地の造成や多様な生息地も必要だし、現地の固有の環境の保護も加わる。こうして一つ一つ実現していき、3年のプログラム実施後、今では160種類の鳥類が湿地に生息し、10数種が繁殖している。
地域総動員
「この生息地保護の過程で、野鳥鑑賞ハウスや土の掘り返しなど、村長を始め住民の手を借りました」と蔡さんが言うように、成果が出ると住民の評価も変わってくる。最近推進している解説員の訓練も成果が上がり、120時間の研修と56時間の実習で正式な資格を得られるが、すでに20人あまりの住民が資格を取った。エコツアーの解説をすると一日2000台湾ドルの収入になる。
福宝村ではバードウォッチングや湿地体験に加え、カキの養殖場や酪農家との協力も進め、多様なエコツアーを開発しようとしている。そのスケジュールにはバードウォッチングと海岸植物の旅、潮間帯でのカキ養殖観察、カキの収穫、さらには潮の満ち引きの間にカニが砂を動く様も見られる。ハマグリの養殖池ではハマグリの生態を知り、午後の満潮時には、カキの養殖場がすべて水没する奇観が見られる。
福宝自然保護区は2002年末に開放され、すでに30あまりの団体がエコツアーに訪れた。
「現在、半日の日程で一人150台湾元、支出を控除すると利益は余り残らず、地域還元にはなっていません」と蔡さんは言う。将来は、観光客に新鮮な牛乳やカキなどの農産物を販売し、記念品なども開発して地域への経済効果を目指す。
小さいころから育成
赤煉瓦の伝統的建物の福宝旅行センターでは、解説員が子供たちと水鳥の渡りルートのゲームを楽しんでいる。地面にはシベリアから日本、中国、台湾、フィリピンを経てオーストラリアに至る渡りのルートが示され、解説員が渡りの中継地の重要性を説明する。渡りで体力を消耗した鳥は、中継地の底生生物を食べて体力をつけなければならない。その中継地の環境が破壊されたら、渡りはできないのである。
環境保護教育の進んだスウェーデンでは、小中学生が付近でフィールドワークを行い、環境の変化を長期的に観察する。スウェーデンが環境教育を重視するのは、環境汚染が科学者の問題ではなく一人一人の問題だからである。
台湾の環境教育は始まったばかりだが、すでに多くの人がいろいろな角度から手をつけ始めた。福宝のエコツアーも、子供たちが自然に親しむ方法である。自然に関心を持ち、子供と一緒に楽しいエコツアーに出かけようではないか。