台湾映画に春が来た!
数字を見ると、確かにこう言える。2011年、台湾映画の興行収入は台湾市場全体の17.5%を超え、十年来の最高を記録した。製作本数も増え続け、1998年は20本に満たなかったのが、2012年には45本まで増えた。さらに重要なのは、台湾映画への投資に興味を持つ人が増えていることだ。
しかし、国内市場で足場を固めた後、香港や中国大陸の映画と戦って市場規模を拡大し、より多様な作品を生み出していくことが新たな課題である。
2013年は映画プロデューサーの葉如芬にとって豊作の一年だった。映画製作に携わって20年、彼女がプロデュースした『総舗師(メインシェフへの道)』の興行成績が億単位に達したのである。だが、その一方でもう一つの作品『失魂(Soul)』は売れなかった。まったくスタイルの異なる二作品である。『総舗師』の売上は3億を突破したが、金馬賞では最優秀オリジナル音楽賞と最優秀オリジナル歌曲賞しか取れなかった。一方、サスペンスホラーの『失魂』は監督賞や主演男優賞など5項目でノミネートされ、2013年の台湾芸術映画の代表作と評価されたが、売上は伸びなかった。

キャスティング、スケール、ストーリーなどが映画のヒットを決める要素となる。黒社会に入ってしまう若者たちを描いた『艋舺(モンガに散る)』、学園青春映画『那些年,我們一起追的女孩(あの頃、君を追いかけた)』、アクションの『痞子英雄(ブラック&ホワイト)』、そして原住民族の抗日の戦いを描いた『賽徳克・巴莱(セデック・バレ)』と、台湾映画の興行成功が続いている。
葉如芬は2013年、まったくスタイルの異なる3つの映画をプロデュースし(もう1本は『台北工廠』)、「さまざまな分野で完成度を高めた」として最優秀台湾映画人賞(台湾傑出電影工作者賞)にノミネートされた。
葉如芬は1993年に新聞局の「映画年」プロデューサー育成カリキュラムに参加して映画の世界に入り、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)や林正盛(リン・チェンシェン)の作品をプロデュースした。また呉宇森(ジョン・ウー)について、大陸で製作費7000万米ドルの大作『レッドクリフ(赤壁)』に製作に携わり、ハリウッド流の専門作業を学んだ。ここ数年は、新鋭監督を世に打ち出そうと『九降風(九月に降る風)』『女朋友。男朋友(GF*BF)』など、文化的作品に力を注いできた。
台湾映画の冬の時代に業界に入り、今では億単位の興行成績を上げるまでになった。苦労の末にようやく明るい時代を迎えた彼女の20年は、台湾映画発展の縮図でもある。
さまざまなジャンルの作品を手掛ける葉如芬は「ここ数年は、台湾に根差した喜劇しかヒットせず、『失魂』のような、潜在意識を掘り下げた作品はなかなか見てもらえません」と言う。陳玉勲(チェン・ユーシュン)と鍾孟宏(チョン・モンホン)は経験豊富な監督だ。十数年、新作を撮っていなかった陳玉勲は、武侠アクションの『必殺技』の準備に取り組んできたが、製作には最低2億元かかり、その資金が調達できずにいた。そこで先に『総舗師』を製作することし、その戦略が成功したのである。

キャスティング、スケール、ストーリーなどが映画のヒットを決める要素となる。黒社会に入ってしまう若者たちを描いた『艋舺(モンガに散る)』、学園青春映画『那些年,我們一起追的女孩(あの頃、君を追いかけた)』、アクションの『痞子英雄(ブラック&ホワイト)』、そして原住民族の抗日の戦いを描いた『賽徳克・巴莱(セデック・バレ)』と、台湾映画の興行成功が続いている。
おかげで、投資家たちも陳玉勲の映画は当ると考えるようになり、資金調達がだいぶ楽になった。この状況は、魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督がまず『海角七号-君想う国境の南』を発表したことで、長年温めてきた『賽徳克・巴莱(セデック・バレ)』製作の機会を得たのと同じである。
2008年、『海角七号』がこの20年の台湾映画の状況を大きく変える現象を巻き起こした。スターの出ていないこの映画が国内で大ヒットし、5.3億元の興行成績は台湾映画史上最高額となった。これをきっかけに台湾映画のイメージが変わり、観客が戻ってきたのである。
魏徳聖は驚くべき精神力を見せると評論家の黄建業は言う。『海角七号』が人々を感動させるのは、登場する普通の人々を生き生きと深く描いていることによると考える。「若い観客の成長もあります。単純明快で気持ちが熱く、重い物語より楽しいものを好む観客が、優れた作品に出会ったのです」
台湾映画を一時のブームで終わらせるわけにはいかない。だが『海角七号』以来、不安な現象も見られる。金馬賞執行委員会の聞天祥は、観客も投資者も増えたが、題材を偏らせず、初心を貫くことが逆に課題になっていると指摘する。「課題は多様性が不十分なことです。誰もが売上ばかりを狙い、ヒットの要素が簡略化されているようです」

キャスティング、スケール、ストーリーなどが映画のヒットを決める要素となる。黒社会に入ってしまう若者たちを描いた『艋舺(モンガに散る)』、学園青春映画『那些年,我們一起追的女孩(あの頃、君を追いかけた)』、アクションの『痞子英雄(ブラック&ホワイト)』、そして原住民族の抗日の戦いを描いた『賽徳克・巴莱(セデック・バレ)』と、台湾映画の興行成功が続いている。
聞天祥は、高揚感やおかしさは悪いことではないが、作品の質には向上の余地があるという。『海角七号』は、寄せ集めのバンドが心を一つにしていく過程を描いているが、監督はそこに台湾の多様なエスニック文化を取り入れている。台湾で働く日本人、原住民族、そして日本時代の国境を超えた恋愛など、豊富な文化的意義が込められている。
魏徳聖がプロデューサーを務め、2014年に公開される『KANO』に聞天祥は期待を寄せる。これは1930年代、甲子園を目指す台湾の高校球児の物語だ。「完全に台湾土着の物語です。台湾の題材は一つの武器ですが表現手法は優れていなければなりません」
興行成績が映画の価値を示す強大な指標となった時、それが金馬賞受賞につながるか否かに多くの人が注目している。だが、2013年の金馬賞で受賞したのは蔡明亮の『郊遊/Stray Dogs(ピクニック)』と鍾孟宏の『失魂』だけだった。
『失魂』は、恐怖、暴力、サスペンス、家族愛などさまざまな要素から成る作品だが、見終わっても明確な答えはなく、異常に強烈なイメージの中で、人間性の複雑な絡みを考えさせる。
この作品の表現技術はずば抜けており、ベテラン俳優の王羽が物語のリズムを完全に掌握している。強烈な影像スタイルは台湾の山林を異常なほど美しく描き、人々を惹きつける。

魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)プロデュース、1930年代の台湾高校球児の奮闘を描く野球映画『KANO』は、2014年に公開される。
興行成績が伸びる一方で、映画の芸術的価値が軽視されることを危ぶむ声もあるが、台湾映画の状況を香港の業界は羨ましく見ている。
「台湾映画は十数年の低迷を乗り越えましたが、今は香港映画が最悪の状況で、何とかそれを乗り越えて台湾に追い付きたいと願っています」と、2011年に『桃姐(桃さんのしあわせ)』で最優秀主演男優賞を受賞した劉徳華(アンディ・ラウ)は語った。
聞天祥は、米国育ちで『一頁台北(台北の朝、僕は恋をする)』を製作した陳駿霖(アーヴィン・チェン)に、米国で映画を学んだのに、なぜ台湾に機会を求めたのか、と訊ねたことがある。
これに陳駿霖は、台湾では新人監督に他の国より多くの機会が与えられるからだと答えた。良い脚本と企画さえあれば、数百万元の映画助成金が得られ、国の保証があるというので投資家も安心して資金を出す。さらに地方政府に申請すれば撮影補助が得られ、多くの人が新人監督の夢の実現に協力してくれるのである。一つ一つ段階を踏んで進行するので、映画の質や露出度も確保できる。
「台湾の新人監督は大きな理想を抱いています。自宅を売って映画を撮る人もいますし、『作らずにいられない』という不思議な雰囲気があります」と聞天祥は言う。魏徳聖も林書宇(トム・リン)も、楊雅喆(ヤン・ヤーチェ)も、台湾映画の冬の時代に映画の世界に入り、ようやく訪れたチャンスをしっかりとつかんだ。低迷の中を耐え抜くことが映画人の精神なのだという。
多くの新人監督と仕事をした経験を持つ葉如芬は、台湾で次々と新人監督が生まれるのは監督になるハードルが低すぎるからだとも考える。少なからぬ新人には盲点があるため、まず映画製作のスタッフから始めて経験を積むことを勧める。

キャスティング、スケール、ストーリーなどが映画のヒットを決める要素となる。黒社会に入ってしまう若者たちを描いた『艋舺(モンガに散る)』、学園青春映画『那些年,我們一起追的女孩(あの頃、君を追いかけた)』、アクションの『痞子英雄(ブラック&ホワイト)』、そして原住民族の抗日の戦いを描いた『賽徳克・巴莱(セデック・バレ)』と、台湾映画の興行成功が続いている。
台湾映画は復活したが、台湾の市場規模には限界があり、中国大陸が魅力的な市場となる。
「大陸でも優れた映画が作られるようになり、台湾の責任はますます重くなります」と侯孝賢は言う。大陸の市場は大きく、映画製作資金の規模でもかなわないが、台湾の方が勝っているのは生活の勇気と人の自信だという。大陸ではまだ題材に関する審査が厳しく、現代の政治経済を扱うことは難しいため、歴史スペクタクルやラブロマンスが主流となっており、題材を自由に発展させられる台湾は、その優位性を発揮しなければならない。映画は予測の難しいハイリスクな産業であり、商業行為であると同時に文化芸術でもある。国民が台湾映画に自信を持つようになった今こそ、より多様な題材やテーマを追求していくべきであろう。

2013年の台湾映画の代表作。(左)台湾の宴席文化を題材にした『総舗師(メインシェフへの道)』の興行成績は3億台湾ドルを超えた。(右)人間の潜在意識を扱ったサスペンス『失魂(Soul)』は金馬賞の5項目でノミネートされ、最優秀音響効果賞を受賞した。