「恒月三途」の女性ボーカル
「今回のフィンランド公演を前にとても興奮しています。ヘヴィメタルの聖地と呼ばれる国のステージに立てるというのは、非常に得難い経験です」と語るのは、「F:F:F」の団長を務める「恒月三途(クレセント・ラメント)」のメインボーカル周慕姿さんだ。彼女は著名な作家でもある。男性的なイメージのあるヘヴィメタルの世界で、恒月三途はめずらしく女性ボーカルを中心としており、華麗で耽美な魅力で注目されている。周慕姿さんは伸びやかな高音で、歴史に翻弄されてきた台湾人の心と力強さを歌い上げる。
恒月三途の歌詞は虚構のストーリーを中心としているが、物語の背景である白色テロや二二八事件といった歴史事件は詳細に考証しており、架空の名もない人物の心の葛藤と忍耐を描き出す。二胡の悠揚たる音色がメタル音楽に融合し、オリエンタルなイメージを際立たせる。心理カウンセラーでもある周慕姿さんは、音楽とカウンセリングには相通じるものがあり、いずれも心の傷をいやす効果を持つと考えている。歌のテーマが政治的過ぎると言う人もいるかもしれないが、歴史の傷跡は早くから台湾人の記憶に刻まれており、そうした物語を音楽を通して伝えることで多くの人に理解してもらい、また世界にも台湾の物語と声を聴いてもらいたいと考えている。
今回のフィンランド公演で、恒月三途は10月に出した新曲「薫篋仔内的批(台湾語で「煙草箱の中の手紙」という意味)」を披露する。二二八事件の受難者である潘木枝医師の物語からインスピレーションを得た内容だ。煙草の箱の中に書かれた遺書には、時代の痛みと優しさが込められている。恒月三途のこうした理念の通り、激しいヘヴィメタルの響きの中で台湾の歴史が歌い継がれていく。

「F:F:F」の団長を務める周慕姿さん。台湾のバンドを率いてヘヴィメタルの聖地であるフィンランドで演奏し、多くの人に台湾の物語を知ってもらい、両国のバンドが交流できることに大きな期待を寄せている。(荘坤儒撮影)