葬礼会場におけるパフォーマンス
この葬礼のマーチングバンドのことを知るために、私たちは草屯大衆女子楽隊を訪ね、楽隊メンバーとともに田舎の葬儀会場を訪ねた。メンバーが車を降りると、すぐに温かい人情を感じることとなる。喪主の近所の人々が早くから簡単なランチボックスと飲み物を用意していて、遠くから来てくれた楽隊のメンバーに、まずは腹ごしらえをしてもらおうと渡してくれるのだ。
準備が整い、時刻になると、草屯大衆女子楽団は指揮者を先頭に、ドラム、サクソフォン、アコーディオンなどの奏者が足並みを揃えて会場に入っていく。軽やかなステップで隊列を変えながらリズミカルなメロディが次々と奏でられると、参列者も思わず音楽に聞き入ってパフォーマンスを観賞し、葬儀の会場も生気を取り戻す。入場が終わると、家族と参列者による儀式が行なわれ、後ろに控えていた楽隊は心をいやすやさしい音楽を演奏して雰囲気を醸し出す。
葬儀が終わると、楽隊が再び会場に入り、柩を囲んで演奏し、続いて出棺の葬列のために道を開く。天気がどんなに悪かろうと、目的地がどれほど遠かろうと、大衆女子楽団は次々と楽曲を演奏しながら葬列を先導し、故人の最後に寄り添うのである。
華やかな制服を着た彼女たちだが、常に練習に励んでいる。全国各地を駆け回る楽団の本拠地は南投県草屯にあるが、多くのメンバーは台中や彰化など他の地域に住んでいる。大衆女子楽団の団長を務める許雅慈さんによると、この楽団に加わるための第一の条件は時間を厳守できることだと言う。葬儀の時間は厳格に決められており、決して遅れることがあってはならないからだ。時には一日に複数の葬儀を掛け持つこともある。そんな時は、靴擦れができたり、足にマメができたりすることも多い。それでもメンバーたちは、故人と遺族の役に立つことができ、儀式が円満に終了すれば、やってよかったと思うのである。
このように葬礼の陣頭を務めるマーチングバンド「西楽隊」は、台湾では「西索米(シソミ)」とも呼ばれる。昔の葬儀で演奏された葬送曲は、七音音階の「シ」「ソ」「ミ」で始まるものが多く、人々は「葬礼」という言葉を使うことを忌み嫌って「西索米(シソミ)」と呼んだのである。かつては、「死」を忌み嫌う考えがあり、そのため西索米楽団は縁起が悪いと言われたり、西索米楽団の制服を着ていると食堂への入店を断られることもあったそうだ。
しかし、現在ではこうしたイメージも払拭されている。学者や専門家が文化芸術の角度からこうした楽団の意義を説明することで、多くの人の意識も変わってきた。草屯大衆女子楽団の場合、誕生日のお祝いでの演奏を依頼されたこともある。誕生日の主役が何も知らない状況で、突然この楽団が現われ、主役を取り囲んで演奏すると、誕生日パーティはますます楽しい雰囲気に包まれた。この映像がネットで公開されると大きな反響があった。葬儀での陣頭がしだいに衰退していく中、大衆女子楽団は1ヶ月に少なくとも30回余りの依頼を受けており、一日に4つの会場を掛け持ちすることもある。

葬儀会場に入る時に哀悼の意を表す草屯大衆女子楽団のメンバーたち。