パフォーマンスのために生まれた空間
台北市公館の台湾電力ビル近くの路地裏にある「河岸留言音楽芸文珈琲」。ファンはここを「小河岸」と呼び、2008年創業の西門紅楼展演館にある「大河岸」と区別している。小河岸は広いとは言えない地下室だが、今ではビッグスターとなった五月天(メイデイ)や伍佰(ウーバイ)、許哲珮、旺福、Tizzy bacなども、皆かつてはここのステージに立っていた。創業から20年、河岸留言は台湾のインディーズシーンの発展に重要な役割を果たしてきたのである。
河岸留言を創業した林正如は、米国のミュージシャンズ・インスティテュートに留学していた時、現地のライブハウスを体験した。「アメリカで生演奏のあるバーではドア・チャージがあって、音楽は有料なんです」と言う。
帰国後、台湾のミュージックシーンを見渡した時、フォークソングが聞けるレストランは収容人数が100人に満たず、ミュージシャンは大きなステージに対応する練習の機会を持てないことに気づいた。「台北アリーナのステージに立つには、300回、500回の舞台を経験していなければなりません」と言う林正如は海外の例を挙げる。ニューヨークには、ブロードウェイの他にオフ・ブロードウェイがあり、パフォーマーは100人規模の劇場から1000人、10000人規模と、一歩ずつ大きな劇場へと経験を積んでいける。
「河岸留言は、まさにこうした目的で作ったのです」と語る林正如は、店内の音響効果に心を砕いた。「標準的なコンサート会場でなければならず、スピーカーシステムも常にチューニングしています。これらを通して演奏者は舞台でどのような音を聞けばいいのか練習できるのです」
「小河岸は夢を見る人々のスタート地点になります」と言うが、もちろん夢が一挙にかなうわけではない。「ライブハウスの役割は、ミュージシャンが将来の本格的なコンサートに備えられるよう、十分な舞台経験を積むのに協力することです」と言う。
2008年、小河岸の創業当初から一緒に成長してきたバンドがより大きなステージに挑戦しようとしていた。そこで林正如はさらに広い空間を探し、500人を収容できる河岸留言西門紅楼展演館を開いたのである。
小河岸は音楽業界に足を踏み入れたばかりの人にとってやさしい環境を整えており、夢を追う者のスタート地点となる。(河岸留言提供)