スマートウェアが遠隔リハビリを実現
映画ではバットマンやスパイダーマンのスーツが注目されるが、現実のスマートウェアに派手さはない。台北市内湖区にある三軍総医院リハビリテーション理学療法科主任の蒋尚霖は、2018年からTTRIと共同でスマートウェアを臨床に応用している。これによって「国家医療品質賞」銅賞を授与された蒋尚霖が、患者が着る「ウェアラブル心拍センサーウェア」を見せてくれた。胸元に薄くて小さなトランスミッタがついているほかは、見た目も普通のシャツである。
このウェアの前身は、実は二、三十年前に現れた心拍ベルトである。心拍ベルトは導電性ゴムを用いて胸部周りに装着し、心拍で体表面に生じるミリボルト(mV)レベルの電位差から心拍数を算出する。これをウェア型にして導電性の銀メッキ繊維をファブリックに織り込むと、着るだけで心拍数や運動強度などバイタルデータを取得できる。快適さと実用性が大幅に向上した。
4年余りの間に、蒋尚霖はウェアを呼吸‧心臓リハビリテーションの患者百人以上に使ってきた。従来なら患者が定期的に病院に行き、心電図の電極を体に貼って運動し、理学療法士がそばで指導するが、それでは患者の時間、交通、経済的条件に制限されてしまう。「統計によると、リハビリが必要な患者の実に20%しか病院に来ないのです。残りの80%がスマートウェアのポテンシャルです」と蒋尚霖は考える。
スマートウェアを取り入れれば、医師は運動の処方を決めて、処方内容をアプリに入力するだけでいい。患者は家でウェアを着て、自分でリハビリトレーニングができる。データをクラウドにアップロードすると、医療チームが遠隔でリアルタイムに把握でき、利便性が大きく増進する。このシステムはこれまで、心筋梗塞や心不全の患者に活用されてきた。蒋尚霖は、ポストコロナ時代に入り、新型コロナウィルス感染症が治癒した患者が激増すると、人件費も大幅に圧縮できるスマートウェアが重要な役割を果たすと断言する。