価値外交から付加価値外交へ
林佳龍氏は外相就任以来、多くの国を訪問してきたが、訪問先で最もよく聞かれるのは、「台湾の半導体産業の投資先に我が国はいかがですか」という内容だと笑顔で語る。
「テクノロジーアイランド」という台湾のイメージは世界に深く浸透している。しかし林佳龍氏は、これからは台湾のより多くの面を世界に知ってもらう必要があると考え、そこで「総合外交」を打ち出したのである。
「対象となる国や地域によって、それぞれ異なる方法、異なる重点で、互いが共感できる点を見出す必要があります」と林佳龍外相は語る。例えば、先頃開かれた「ワルシャワ安全保障フォーラム」において、林佳龍氏はデモクラティック・サプライチェーン(民主主義陣営のサプライチェーン)の再構築を提言した。また、台湾は理念を共有する民主主義のパートナーととして、シンクタンク交流や政策対話の上で重要な役割を果たすことができると強調した。これは「シンクタンク外交」の具体的な実践と言える。
一方の南向外交について、林佳龍外相はフィリピンを対象とする「総合外交」を例に挙げる。
台湾とフィリピンは同じ民主主義国家として価値観を共有している。安全保障面では、両国ともに第一列島線にあり、中国の権威主義的拡張に直面しており、両者の運命は緊密につながっている。台湾海峡情勢のいかなる変化も、インド太平洋地域全体の安定に影響を及ぼす。
こうした基礎の上で、双方はさらなる経済協力を進め、国民の生活を実質的に向上させていく必要がある。そこで台湾は「台湾フィリピン経済回廊」構想を打ち出し、米国、日本、フィリピンが推進する「ルソン経済回廊」とつなぐ形で、地域のパートナーシップを深化させていく。
「これこそが、台湾が『価値外交』から『付加価値外交』へと向かうべき理由です」と林佳龍氏は言う。理念を共有することはもちろん重要だが、それに加えて双方が付加価値を生み出し、協力によって実質的な利益がもたらされれば、それこそ新時代の台湾外交において最も大きな説得力を持つからである。

チェコ国立博物館で開催されている「故宮文物百選とその物語」特別展。有名な「翠玉白菜」と「清院本 清明上河図」が海を渡ったことからも、台湾がこの文化交流をいかに重視しているかがわかる。(楊婉瑜撮影)