リスク3;人件費と原価の上昇
この一年はインドネシアでも人件費が上昇し、台湾企業を苦しめている。昨年10月末の全国規模のストでは20万人がデモ行進し、給与引き上げを求めた。11月、ジャカルタ近郊のタンゲランでも100人近い労働者がビラを配った。
伸昌の蕭文伸董事長によると、給与引き上げの比率は毎年異なり、地域の組合代表と地元政府の話し合いで決まるという。
ジャカルタの場合、昨年は40%上昇、今年は11%上る見込みだ。平均月給は244万ルピア(台湾ドルで約6600元)に達しており、今後も上り続けるため企業の原価と利益に大きく影響する。
そこで、工場移転を決める台湾企業もある。既製服大手の聚陽は、人件費がまだ比較的低い中部ジャワ州のスマランへの移転を決め、ジャカルタ工場の規模を縮小していく予定だ。
だが、ISIの林振興副総経理の考えは違う。地方の労働者も給与の高い地域へ移動するので、工場を地方に移しても労働者不足に陥る可能性があるからだ。「人件費が上るたびに工場を移転していたのでは、きりがないでしょう」と言う。インドネシア人が生活の質を追求するようになった今、台湾企業も浮草のように移転を続けるのではなく、産業のグレードを高めていかなければ現地市場とウィンウィンの関係を築くことはできない。
リスク4:パートナーの選択
「過去に成功の経験があっても、インドネシアに来たらすべてゼロからの再スタートです」と話すのはCSA公司の江慶誠董事長だ。かつてインドネシア政府は国内産業を保護するため、投資を開放する一部の産業について、外国資本と現地資本の比率を定めていた。そこで、一部の台湾企業は現地の人の名義を借りて投資し、そのために会社を乗っ取られるなどの問題も起きていた。
そこで、インドネシア投資では現地パートナーを慎重に選ぶ必要がある。ジャカルタ台湾貿易センターの林立凱主任は、特に飲食産業などのサービス業は、インドネシアの消費文化や流通ルートに詳しいパートナーを選ぶ必要があると指摘する。
台湾のレストラン鼎泰豊は、インドネシアの3代目華僑である姚皇泓と手を組むことで、市場参入に成功した。インドネシアにはイスラム教徒が多いため、姚皇泓は鼎泰豊の楊紀華董事長に鶏肉の小籠包や牛肉料理を出すことを提案した。またインドネシアの人々は色鮮やかなものを好むので、小籠包もカラフルにしたところ、好評を博している。
一方、すでにアメリカやオーストラリア、マレーシアなどにも進出している茶飲料チェーンの日出茶太は、昨年4月に現地の長友グループのルートを通して進出した。「インドネシアに進出する飲食業は『グローカライズ』の方法を考えなければなりません」と対外貿易協会・研考委員の陳広哲は言う。
課題:台湾ブランドの位置付け
昨年から、台湾の少なからぬ企業視察団がインドネシアを訪れているが、実際の行動に出る企業は少ない。「インドネシア市場は美しいが手の届かない月のようなもので、魅力はあっても、どうやって行けばいいのか分からないのです」と林立凱は言う。
ジャカルタの環状道路沿いには次々と巨大な看板が立てられている。韓国のサムスンやLGなどのブランドが目立つが、台湾企業はというと、対外貿易協会やタイヤメーカーの正新などの看板がところどころにあるだけだ。富裕層をターゲットとする台湾企業にとっては、台湾ブランドの位置付けが曖昧で、認知度が高くない、と林立凱は指摘する。
その原因は、Acerや三陽などの台湾の大手企業の大多数が個別にマーケティングを行なっているため、台湾全体のブランドイメージが定着しにくいという点にある。そこで対外貿易協会は2年前から台湾ブランドの統合を開始し、デパートの展示会などの方法で、高級陶磁器のフランツやバドミントン用具のビクタースポーツなどのブランドを紹介し、台湾の高品質製品のイメージを高めている。
対外貿易協会の陳広哲は中国大陸とインドネシアの市場をこう比較する。中国大陸は漏斗型の市場で、誰にでも機会があるが競争は激しく、最後まで生き延びられるのはごく少数である。インドネシアは漏斗を逆さにしたような市場で、言語や文化から消費習慣までまったく台湾とは異なるため、最初のハードルは高いが、その試練を乗り越えられれば大きな市場が得られるのである。