Q:馬総統は選挙時に経済振興を強調しましたが、現在の最大の課題と政策についてお話しください。
A:政府は経済の新たな活力を生み出し、国際競争力を高めるために、戦略やプランを推進しなければなりません。例えば「台湾を愛する12項の建設」では内需を活性化させ、また高付加価値・高品質のサービス業を発展させます。医療や金融、文化創意産業などの「ソフト・パワー」産業です。製造業は付加価値を高める方向に向かい、省エネや低炭素といった方向へ発展させていきます。新しい概念を導入した後は、企業は変革していき、新たな産業も生まれるでしょう。
もう一つは、両岸の経済関係です。今は両岸ともに争点を棚上げし、意見の相違がない部分から進めることに同意しています。これが順調に進めば、台湾経済の活力復興の可能性が非常に高くなります。
新政権発足から3日目に、私たちは第1回行政院会で三つのプランを採択しました。ひとつは1144億台湾ドルの内需拡大プラン、もうひとつは市場メカニズム復活と石油価格や電気料金の正常化に物価安定措置を組み合わせたプラン、三つ目は台湾海峡の週末直航チャーター便の就航と大陸観光客受入れプランです。これらを平行して推進し、早急に経済を活性化します。しかも、すべて今年度の予算を用いて年内に実施を終えることになっているので、今年下半期の経済成長には一定の貢献ができるはずです。
Q:両岸関係は台湾経済再興の重要な一環です。「12項の建設」について、蕭万長副総統は4月中旬の博鰲フォーラムで、大陸資本による投資を歓迎すると呼びかけましたが、大陸資本の導入については野党や民間から大きな疑問の声も上っています。大陸資本の導入を、どのような手続でどのように管理なさるお考えでしょう。
A:12項の建設に必要な資金はおよそ4兆台湾ドルで、うち1.34兆は内外の民間から集めたいと考えています。ここへ大陸資本が加われば、より実施しやすくなります。きちんとした計画の下で、インフラ整備に大陸資本を導入するメリットは大きいと考ますが、そのルールについてはさらに検討が必要です。7月に週末直航チャーター便が就航し、大陸からの観光客受け入れが始まって、両岸関係が良好な循環に向っていけば、それに続く計画や措置もしだいに安定していくでしょう。
ただ、7月の目標が達成できなければ両岸の他の交渉ができないということではありません。多くの人は、向うが何かをしたら、こちらも何かする、という前提条件を設けたがりますが、両岸関係の推進はそうではなく、全体の方向が確定したら一歩ずつ進めていきます。
Q:両岸ともに「争点は棚上げする」としていますが、2月には王金平立法院長が韓国のイ・ミョンバク大統領就任式に出席できず、5月の世界保健総会では台湾の参加に関する討論が拒絶されるなど、中共は善意を見せていないようです。新政権は両岸開放の成果を急ぐあまり、堅持すべきところを放棄することはないのでしょうか。
A:これは関わりのない複数の問題を一緒にした言い方です。現在の両岸雪解けの切り口は経済で、この方面で良好な関係ができてから、より敏感な政治や外交のテーマに触れる可能性が出てきます。すべての事柄を一緒に論じたのでは、過去の道に戻るだけです。その道はもう8年も歩んできて、先へ進めないことが証明されています。新政権の両岸政策が過去と違うのは、争点を棚上げして双方にとって有利な事柄から始めようとしている点です。
Q:馬総統は5月20日の就任演説で「外交停戦」と述べましたが、外交と両岸関係は密接に関わっています。国連への加盟や再加盟は推進しないということでしょうか。
A:国連に入ることは全国民の意志ですから、今後も積極的に推進します。ただ、国際宣伝を前面に出すのではなく、またこれを両岸和解の前提条件にもしません。施政には短期、中期、長期の目標があり、一部の施政は長期的になります。双方に関わる問題で、こちらが一方的に処理することは出来ないので、結果が期待通りになるかどうかは分かりませんが、一歩ずつ着実に進めていきます。
例を挙げましょう。1962年のキューバ核ミサイル危機を描いた映画「13デイズ」の中で、攻撃を主張するタカ派や双方の駆け引きに直面した時、ケネディ大統領の参謀総長は「これは戦争ではなく対話だ」と語ります。相手に善意があるかどうかを観察し、わずかでも善意が見出せれば、それに少しの善意で応えていく。そうして少しずつ災難を未然に防ぐことができるのです。
老臣というのは、周到で表に現さず、専門性と忍耐力を重んじるもので、決して強硬な態度に出たり、スローガンだけを叫んだりするものではありません。その過程は外部から見えるとは限りませんが、重点は推進者が努力して互いの善意を見出し、コンセンサスを求めていくことにあり、そうして一歩ずつ前進していくのです。これは、過去8年の、故意に相手の善意とは言えない部分を取り上げ、それをもって国内の政治とエスニックを操作するという方法とは大きく異なります。
Q:博鰲フォーラムでは両岸ともに「経済貿易の正常化」を強調しましたが、現在はすべて大陸委員会が海峡交流基金会に権限を委譲するという形の非公式の対話です。将来的に公式の接触はあるでしょうか。
A:今は政治的な要因で中間の民間を通していますが、重要なのは過程ではなく結果です。我々が求める正常化というのは結果であり、対等で尊厳があり、双方に有利な結果であって、プロセスではありません。1994年に私が交通部長(交通相)在任中に域外中継センター計画を推進したした時には、マカオ航空との間で着陸時に便名を変更するだけで機体を変えなくてもよいという話でまとまりました。一般の人々が心配する国旗の問題もなく、大陸のコンテナも高雄港まで来ていました。これには双方の交通相が署名を交わす必要はないのです。臨機応変に対応すれば、民間でできないことはありません。もちろん将来的には交渉も正常化できるかも知れませんが、それは現在ではありません。
ですから、ベテランというのは年齢が高いことではなく、十分に経験があることを指すのです。He knows the business. He knows what he's doingということです。
Q:内需面では財政難が心配されています。選挙時には「負所得税」など税制改革に関する政見が多数ありましたが、財政と税制改革についてお話しいただけますか。
A:税制改革は非常に規模の大きい仕事で、産業の競争力を高めつつ、社会の公平と正義を守るものですから、全体を見なければなりません。
現在、行政院直属の賦税改革委員会を準備中で、発足後は委員会で税制改革全体を検討し統合していきます。政見は国民に対する約束ですから、選挙中に提出したものも約束は約束で、実現に向けて努力しなければなりません。しかし、一言で表現された政見を具体的政策へと展開するには多方面の考慮や措置が必要なので周到な手順を踏まなければならず、学理にもかなう必要があります。
Q:政権が代わりましたが、選挙で民進党候補に投票した544万の有権者は、失望し不安を抱いていると思われます。エスニックの和解という面で、どのような方法で善意を示されるお考えでしょう。
A:この問題は馬総統に尋ねた方がいいと思います。総統こそ、エスニックの対立を解消して融合させ、和やかな社会を築くスケールと影響力を備えているからです。馬総統はこの点を非常に重視していて、具体的な考えや方法をお持ちです。行政院にできるのは、施政面で総統の理念に協力することです。重要なのはブルー、グリーン陣営に分かたない平等な態度で、選挙を考慮するのではなく、専門的な考慮から資源を分配することです。ただ、これは口で言うほど簡単なことではなく、政権にある者が態度で示し、国民に全民政府であると感じてもらわなければなりません。
Q:最後に、行政院長になられたお気持ちをお話ください。
A:正直なところ、私は朝から晩まで縛られる行政院長になりたくはありませんでした。自分の時間が持てる自由な暮らし方が好きですから。
今は自由になりませんが、自分の原則は貫きます。まず仕事を家に持ち帰らず、あまり残業をしないことです。私は人を信頼し、物事は専門家に任せた方が自分でやるより良いと考えています。最初は閣僚との理念の疎通に時間をかけますが、後は彼らに任せていきます。
また、行政院長であるために自分を変えるのでなく、できるだけ本来の生活を維持したいと考えています。難しいでしょうが、自分らしくあるために努力したいと思っています。