8月24日、陳水扁総統が就任後初めての外交の旅を終え、25日に帰国した。今回、陳総統はドミニカの大統領就任式典に出席して、同国の指導者と会談した他、ニカラグア、ガンビア、チャドとの共同コミュニケに署名を交わし、またドミニカがIMF世界通貨基金から借款するための保証金として、460万米ドルの融資を行なうことに同意した。
かねてより「外交上の困難は、中共による圧力を口実とすることはできない」と語ってきた陳水扁総統は、外交活動は休むべきではなく、むしろ積極的に行なうべきだということを行動をもって示した。
陳水扁総統は8月13日から、中米のドミニカ、ニカラグア、コスタリカ、そして西アフリカのガンビア、ブルキナファソ、チャドの6ヶ国を訪問した。就任以来初めての、13日間にわたる海外訪問は「民主外交、友誼の旅」と名付けられた。
8月13日、陳総統は出発前に「台湾は立ち上がり、歩み出なければならない」という談話を発表した。陳総統は、今回の海外訪問によって、中華民国の各方面での成功を世界の人々と分かち合い、また同時に、国交関係をより強固なものとし、国際的な友好を持ち帰りたいと語った。
今回、陳総統に随行した訪問団の規模は、これまでになく大きなものだった。政府部門からは、国家安全会議の荘銘耀秘書長、田弘茂・外交部長(外相)、林信義・経済部長(通産相に相当)、陳希煌・農業委員会主任委員、鍾琴・新聞局長など主な部門のトップが総統に随行した。さらに、産業界のリーダーとしては、工商協進会の辜濂松理事長、全国商業総会全国工業総会の王又曽理事長、全国工業総会の林坤鐘理事長、また立法委員では洪奇昌氏、朱鳳芝氏、馮定国氏、そして近々駐米副代表に就任する李慶元氏らが随行した。これにマスコミ記者が50名余り加わり、訪問団は200人近い規模となった。
今回の6ヶ国訪問のスケジュールは極めて多忙なものだった。まず、8月13日に経由地のロサンゼルスに一泊し、14日にドミニカに到着、16日には同国の大統領就任式に参加して、他の友好国の元首や特使とも会談した。続く17日にはニカラグアを訪問して勲章を授与されると同時に演説を行ない、18日にはニカラグアの大統領と共同コミュニケに署名を交わした。その後、コスタリカへ移って同国大統領から勲章を授与され、20日には大西洋を越えてアフリカへ向った。西アフリカのガンビアではジャメ大統領と会談し、さらにブルキナファソを訪問してコンパオレ大統領と会談した。そして23日には同国の国会で演説を行ない、さらにチャドへ移動して大統領と会談し、共同コミュニケに署名を交わした後、記者会見を行なった。そして25日、我が国で大型台風による被害が生じたため、予定を切り上げ、早めに帰国した。
8月13日、陳総統はアメリカのロサンゼルスを経由地として一泊したが、中共からの強い抗議と、アメリカ国務省からの働きかけがあったため、本来予定されていたアメリカ国会議員との非公式の会談を前日に取り止めた。そのため、カリフォルニアに居住する台湾出身者が臨時に動員をかけ、台湾出身者数百人が陳水扁総統の宿泊するホテルの前に集まって陳総統を歓迎すると同時に、アメリカ政府が中共の顔色をうかがって台湾を軽視しているとして抗議した。
14日、陳総統一行は最初の訪問先である中米のドミニカに到着し、現地に駐在する台湾企業の代表100名以上が空港で出迎えた。その晩、700名を超える台湾企業関係者や華僑が、陳総統の宿泊するホテルで総統を歓迎する盛大なパーティを行なった。翌日、陳総統は、ドミニカの総統就任式に出席するために来訪していたエルサルバドルの副大統領やパナマの第二副大統領ら、友好国の要人とも会談した。16日、総統はドミニカ新大統領の就任式典に出席した。中華民国の代表団は、就任式典に参加した各国代表団の中で最大規模のものだった。
我が国と正式な国交関係のある国は現在29ヶ国だが、その半数は中米とカリブ海地域にあるため、この一帯は我が国の外交にとって重要な地域とされている。しかし近年、中国大陸は、我が国と国交関係のある国々に対して貿易上の接触を強化しており、多くの国が政治的、経済的利益を考慮しているため、我が国との関係も試練に直面している。
ドミニカでも、陳水扁総統が訪問する直前に、中国大陸がドミニカで大規模な火力発電所を建設する計画があることが同国政府から発表された。またドミニカは2002年に国連の非常任理事国になろうとしており、そのためには積極的に中共との関係を強化しなければならないため、我が国との関係にも影響が出る可能性がある。
しかし、こうした中でも今回の訪問を通して、我が国は大きな成果をあげた。陳総統が18日にドミニカを訪問した際、これまで中華民国の国連加盟を支持することを婉曲に断わり続けてきたドミニカ政府が、公に支持することを明らかにしたのである。また今回、ドミニカの総統は、同国にある中華加工輸出区や台湾糖業の蘭裁培地、技術学校などを陳水扁総統とともに視察した。
訪問団は中米での活動を終えた後、20日にアフリカへ向った。アフリカには我が国と正式な国交関係のある国が8か国あるが、我が国の元首がアフリカを訪問したのは今回が初めてだった。西アフリカの3ヶ国から我が国への輸出は少なく、貿易による相互補完関係はないため、国交は農業技術と経済面での援助を主として維持されている。ブルキナファソでは我が国から派遣された農業専門家が働いており、1000ヘクタールの開墾区は砂漠から良質の農地へと生まれ変わっている。ガンビアでも、台湾から移植したトマトやインゲン豆、葉野菜などの作物が育っている。こうした技術支援の他に、社会基盤建設面での協力も行なわれており、ガンビアの空港ビルも我が国の強力で建てられたものだ。
ガンビアのジャメ大統領は、中華民国の国連加盟への支持を再び声明し、さらに中華民国のパスポートを持って入国する者は、ビザを申請せずに90日間滞在できることを発表した。
陳総統による今回の「民主外交・友誼の旅」の収穫は大きく、盛んに報道されたが、検討すべき点も挙げられている。
まずニカラグアの外相が、陳総統の訪問前に、我が国の政府がかつて同国に対して約束した1億米ドルの援助を実施するよう求める談話を発表したことが挙げられる。これに対して国内では、新政権も前の政権の「マネー外交」を脱却できないのではないかという疑問の声が上がった。
これについて陳総統は、新政府は新しい援助計画は立てていないが、政府が以前に約束した援助計画を覆すことはできないと語った。田宏茂外相も、陳水扁総統の今回の友好国訪問の目的は、国交関係をより強固なものにすることにあり、既存の基礎の上で協力計画を推進するもので、新しい援助計画を約束する予定はないと語った。しかし、陳総統がニカラグアを訪問した際、熱烈な歓迎を受けると同時に、地元のマスメディアは「マネー外交」という見出しで、陳総統の来訪を報じた。
我が国のニカラグア駐在大使である蔡徳三氏は、陳総統にニカラグアの政情を報告する際、我が国からの同国への援助方法について次のように直言した。ニカラグアの大統領府や外務省のビル建設に我が国は協力してきたが、ニカラグアの野党からは、こうした協力は国民の利益とは無関係だという批判の声が上がっており、また欧米各国からも疑問の声が出ているというのである。
こうした問題の他に、今回の陳総統の海外訪問前には、総統が不在の間、国内で誰が総統の職務を代行するかが問題になった。これについて総統府は、総統は常に三軍の統帥であり、海外にあっても、常に国内の各部門と専用の電話で連絡を取り合い、国内の政情安定には万全の準備を整えているため、総統代理の問題は生じないと説明した。
対外援助は国際社会への還元なのか、それともマネー外交なのかという点について、無任所大使の陸以正氏は文章で次のように説明している。対外援助はもともと一種の外交手段であると同時に人道上必要なことでもあり、これを行なっていない国はないのだから、我が国だけが無理に清廉であろうとする必要はない。また世界の既開発国の対外援助額は、平均すると各国の国民所得の0.24パーセントを占めているが、我が国のそれは0.17パーセントに過ぎない。我が国の経済力から言えば、対外援助は縮小するより、むしろ適度に増やすべきだという。
近年、政府のマネー外交に対する疑問の声は内外で常に上がっているが、総統の海外訪問中の代理の問題が広く議論されたのは今回が初めてだった。このような問題が議論されたということは、国民が新政府の施政能力に多かれ少なかれ不安を抱いていることを示しており、この点に新政府は注意する必要があるだろう。