製造業は台湾の根
2007年に経済部の「金商賞」を受賞した香港企業、瑞健(SHL)を見てみよう。台湾に来て12年になる管理職でカナダ人のカウフマンさんは、人材募集で困ったことはないと言う。台湾は製造面に強く、同社はすでに世界トップクラスの医療器材メーカーになっているため、高待遇で世界の人材を集められる。フランスやイギリスなどから来た同僚もいる。
桃園に本社を置く瑞健は、スウェーデン人のサミュエルソンさんが99年に設立した。ペン型注射器などの高級医療機器を開発生産、輸出しており、業界で確固たる地位にある。
台湾に根を下ろし、来年は新工場を建てるという瑞健の競争力は、台湾の製造面での強さから来るという。
台湾の人件費は低くないが、国際的な医薬メーカーからの特殊なニーズに応える高級医療機器の分野において、「台湾には優秀なエンジニアや作業員が大勢いて、質の高い製品ができる」とカウフマンさんは言う。また台湾には、プラスチックや機械部品などのサプライチェーンも整っている。
優れた起業環境
多くの外国人は、台湾の活力に満ちた起業環境が印象的だと言う。
カウフマンさんも、台湾のビジネス環境にはチャンスが満ちていて、裸一貫から身をおこしたという話をよく聞くと言う。瑞健を創設したサミュエルソンさんは、スウェーデンのいたるところに「台湾製」の商品があるのを見て、好奇心から台湾にやってきた。そして台湾製の品物を持ち帰って故郷で起業しようと思ったが、台湾の方がスウェーデンより起業に向いていると考え、ここで会社を起した。
「台湾の法令は明確で安定しており、健保制度なども整っているので安心できます。これは、瑞健が外国の人材を雇用する際の有利な条件になります」とカウフマンさんは言う。
ホンジュラスから来たアギュラーさんも、台湾の製造面での実力を賞賛する。7年前に来台し、政治大学で経営学修士の学位を取り、南投県に本社のあるU-Can Dynatexに入社して海外営業を担当した。この会社は、各種の計測機器を生産しており、その質の高さで世界市場をリードしている。ここで彼は多くを学んだと語る。
彼は今年、国際市場開拓の力を活かそうと、台湾のメーカーと協力して貿易会社を設立し、外国人として台湾で経営者になった。
よい環境で質の高い生活
社長になったアギュラーさんは、2年間交際してきた台湾人女性と今年結婚した。アメリカやスペインなどでも働いたことのある彼は、台湾社会の安定や治安の良さ、そして外国人に非常に友好的である点を賞賛する。
「台湾の中小企業が外国人管理職に支払う給与は、シンガポールや香港には及びませんが、台湾は物価が相対的に低く、美しい自然もあるので、全体的な生活の質は悪くありません」とアギュラーさんは言う。
国民の平均的なレベルの高さも、台湾の強みのひとつだ。
以前台湾で研究活動をしたことのあるアメリカ人のジュリア・ロスさんは今年初め、「台北でゴミの出し方を学んだ」と題してワシントンポストに投稿し、大きな話題になった。
彼女が感動したのは、台北木柵で体験したゴミ回収の「儀式」だ。ゴミを地面に置かない政策(ゴミ置き場を設置せず、出す人が回収車に直接手渡す)に対応して、地域住民は回収車が来る時刻に全員出動し、回収地点に並び、互いに声を掛け合う。ゴミは分類し、また有料ゴミ袋を使用するので、ゴミが多いほどお金もかかる。大家さんが分類方法を教えてくれ、ついでに「果物をたくさん食べなさい」と言ってくれたそうだ。
多数の国で暮らしたことのある彼女は、台湾でインタビューに対して「台湾は伝統的中国と日本とアメリカの文化の総合体で、国民は非常に友好的で、他の国ではこんなに心地よく感じたことはない」と語った。
人のふり見て我がふり直せ
こうした文化的素養こそ、香港やシンガポールとの違いである。
香港とシンガポールで働いたことのある台湾人管理職によると、香港人は仕事は仕事と割り切っていて、なかなか友人ができないと言う。シンガポールは国際的なイメージとギャップがあり、特定の観光エリアを離れると、レストランや商店のサービスは悪く、一般市民を対象とする政府の手続は煩雑で効率が悪く、驚いたと言う。
また、シンガポールの高等教育は非常に優れているが、その機会は少数のエリートにしか開かれておらず、その多くは卒業後は公職に就く。だが、大多数の人は中学の頃から二等扱いされ、巨額の教育予算とは縁がない。そのため、シンガポールでは民間の人材が不足しており、外国人を招かざるを得ないのである。
もちろん台湾にも改善が必要な部分は多い。カウフマンさんは瑞健での経験からこう語る。一般に会社が軌道に乗れば、外国人採用に対する政府の審査は煩雑ではないが、学校を卒業したばかりで2年以上の職業経験のない外国人を採用することは許されていない。「優秀な人材をすぐに採用できない場合、その人が別の国に行ってしまったら、後に台湾で働く可能性は大幅に下るでしょう」と指摘する。
アギュラーさんは、台湾に来たばかりの頃の経験から、台湾企業の人事部門はもっと外国人に協力するべきだと指摘する。特に、生活面でのサポートや職業訓練などの面は強化できる。
外国の人材を迎える環境は、どの国も改善の余地がある。我が国で必要なのは、台湾の発展における外国人材の重要性に関するコンセンサスを得、誠意をもって相対することだ。彼らがさらに多くの外国人に台湾での就職や起業を勧めてくれれば、台湾には大きな助けになるに違いない。