昨今「台湾感性」という言葉がネット上で話題となっているが、それは何を指すのだろう。新しさの中に少し懐かしさを感じさせるもの、あるいは温もりのある自由な雰囲気か。だが、具体的に言えば、古い家屋や赤レンガ、窓の飾り格子、通りの景色、そして海棠花の模様入りガラスなどと切り離すことはできないようだ。これらはすべて台湾の日常に根差した通りや路地の独特の美学であり、曖昧だが心に残る「台湾感性」を生み出している。
日本統治時代の公共建築から戦後の集合住宅(公寓)まで、窓や棚、間仕切りなどに、海棠花(ベゴニア)や銀河、ダイヤなどさまざまな模様入り型板ガラスがあしらわれている。また、新北市の三峡拱橋から台北市迪化街の町屋建築や牌楼まで、コンクリート洗い出しと赤レンガ、外壁タイルが独特の落ち着いた景観を造り上げ、静かな語り部のように都市発展の物語とこの土地の哲学を伝えている。
これら「愛らしく、ノスタルジックでリラックスできる」街の景観が多くの外国人観光客を引き寄せ、韓流アーティストのミュージックビデオのロケ地にもなった。そして夜の帳が下りると、都市の感性は夜市において存分に発揮される。人々は短パンにサンダル履きで自由に行き交い、活気あふれる屋台が並び、美食と人情味が生き生きとした画面を構成する。
台湾在住の日本人YouTuber大久保麻梨子さんは、最初は台湾の夜市に興奮が止まなかったが、それはしだいに日常の暮らしの一部となり、自分の台所のように思えると語っている。フランス人YouTuberのクーさんは、電線や看板の錯綜する台湾の町を見ていると、まるでアジア映画の中にいるように感じるという。夜市の屋台料理、におい、人ごみ、そしてゲームの屋台などの雑多な空間にいると、台湾人にとって当たり前のことが、自分にとっては「不思議」なことだと気付くそうだ。ベトナム人YouTuberの阮秋■さんは、台湾の夜市を「グルメ博物館」と形容する。夜市でもベトナム料理の屋台が増えているのは明らかで、台湾社会と新住民文化の融合と寛容性に感動していると語る。
「台湾感性」というのは曖昧で説明し難い言葉だが、私たちの日常の情景のディテールの中に確かに存在する。今月の「台湾光華」ではこのほかに、台湾風クロワッサン、国際スポーツイベント、東南アジアとの文化交流などをご紹介する。台湾を訪れる方々には、目と鼻と舌で、さらには手で触れて、あなた自身の「台湾感性」を感じ取っていただきたい。