かつて農業社会では、人々の暮らしは祭りが節目になっていた。春節、端午節、中秋節、冬至など、「祈り」「諸災消除」「一家団欒」といった意義があり、農繁期の後の「休息」の意味も持っていた。そうした中で台湾に入ってきた媽祖信仰はエスニックや地域を超え、しだいに台湾文化と融合し、さまざまな祭典文化と巡行進香活動を発展させてきた。
2010年、政府の文化部文化資産局は「大甲媽祖巡行進香」「北港朝天宮迎媽祖」「白沙屯媽祖進香」を国定の重要民俗活動に指定した。今月号のカバーストーリーでは、台湾における媽祖信仰の独自性や、廟の建築や工芸、媽祖の祭典の記録写真、そして進香活動に参加した外国人の体験などを通して、台湾で今日まで続く媽祖文化をご覧いただきたい。
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今月号の「産業イノベーション」と「グローバル‧アウトルック」では、台湾の研究開発の力をご紹介する。世界の50余ヶ国で使用されている中薬(生薬)の新型コロナ治療薬「清冠一号」(NRICM101)と、2021年にアメリカのR&D 100アワードに輝いた工業技術研究院の「生体適合を促進するバイオミメティクス(生体模倣)3Dプリント技術」、そして2018年に同じくR&D 100アワードを受賞した王奕嵐(Allen Y. Wang)博士の「吸収性局所止血剤」(SURGICEL Powder)の開発は、いずれも台湾のイノベーションの力を象徴している。
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百年の時を経て人々の目に触れることとなった彫刻作品「甘露水」は、故郷に思いを寄せ続けた天才彫刻家‧黄土水が台湾のために残した作品と言えるだろう。それが半年をかけた修復の後に展示され、多くの人が一目見ようと足を運んでいる。同じように60年の時を経て、一度は絶滅したのではないかと見られていた「ヒガシシナアジサシ」が馬祖に現われた。自然ドキュメンタリー監督の梁皆得が4対の成鳥と4羽の幼鳥を発見し、歴史上初めてその繁殖が記録された。
台湾への移住の足跡とともに媽祖信仰が入ってきたとすれば、それは移民史の記録であり、社会と民心を「安定」させる力と言える。歴史的芸術作品の保存や絶滅に瀕した生物種の保護、さらには環境のために力を尽くすBコーポレーションなどは、台湾のサステナブルな「再生」の力である。そして医療機器や医薬品の分野における絶え間ないイノベーションと研究開発は、台湾を前進させ続ける「核心的」な力と言えるだろう。