当たり前の日常の背後には、実は知られていない人々の努力と数々の物語がある。今月の『台湾光華』は、こうした普段は目に入らないが重要な物語を掘り起こし、台湾に深く根を張った文化と自然の美を見ていく。大規模な鉄道建設において、世界26ヶ国の専門家と5000人を超える技術者が力を合わせてさまざまな課題を解決したことをご存じだろうか。その線路の建築限界測定に用いられた通称「花魁車」が、実は日本の新幹線0系電車だった。この0系車両は今は高鉄台南駅に展示されている。鉄道文化の重要なコレクションであると同時に、台湾と日本との特殊な縁を物語っている。
天灯や猫の多い町で知られる東北角の鉄道平渓支線に目を向けると、沿線の山間の町にも豊かで深い歴史がある。特に驚かされるのは、清の時代に「平渓」は台湾の藍染原料である「大菁(リュウキュウアイ)」の重要な産地であり、当時の台湾経済を支える主要産業だったことだ。
さらに感動させられるのは、高齢の黄昭夫さんが、草木に埋もれた古道を手作業で修復し、「忘憂古道」を開いたことだ。そこには200年前に石を積み上げて築いた大菁の段々畑があり、かつての藍染産業の繁栄を伝えている。そしてボランティアの努力により、大菁が路傍に自生するようになったのである。
人々の想像を超える台湾独特のアイスクリームにも地元ならではの創意が見られる。「永富」と「雪王」という二軒の老舗ではどのように人々の記憶の中の懐かしい味を守っているのだろう。ローカルな特色に満ちたアイスクリームは、私たちの舌を楽しませてくれるだけでなく、そこには台湾人の勤勉さと創意工夫、そして伝統を大切にする思いが込められている。
もう一つ感動させられるのは、渡り鳥のコアジサシの生息地を守る活動だ。工業区に隣接する砂浜を地元のボランティアが見回り、多くの人の努力を経てコアジサシの繁殖成功率は30%から80%以上にまで上昇したのである。自然と共存しようという人々の想いと実践によって、開発の進んだ都市部であっても野生の生きものの美しい家を守ることができる。これはコアジサシだけでなく、台湾の海岸生態系を守る活動でもある。
こうした数々の物語が台湾独特の魅力を生み出している。素晴らしい暮らしは何もせずに手に入るものではなく、一人ひとりの熱意と努力によってもたらされるものなのだ。今度列車に乗り、おいしいものを味わい、古道を歩く時、歩みを止めて「見えない」ところに目をやり、「知られていない」物語に耳を傾けてはどうだろう。自ら体験し、リアルに触れてこそ、真の豊かな台湾に触れられるのだから。