電子書籍が主流になりつつある中、台湾の出版業界では興味深い現象が起きている。「財政部営利事業社数および営業額統計資料」を見ると、2019年の出版業の売上は約513億元で、2015年の502億元から2.2%成長、前年の2018年の459.6億元と比べると11.6%成長している。これは、出版業全体は衰退するどころか、安定的に成長していることを示している。
そのうち「雑誌」の売上は2019年は167.9億元で9.69%成長、「書籍」の売上は190.7億元で1.19%成長だったが、「デジタル出版(デジタル雑誌、電子書籍など)」の売上は6.1億元で「出版産業全体」の1.2%しか占めていない。これは台湾人が、今も紙に印刷した活字を読む習慣を保っていることを意味している。
輸出を見ると、2019年の正体字書籍の輸出額は9917万元で16.38%成長。内訳は香港が9.1%減の3362万米ドル、中国が7.6%増の3077万米ドル、米国が13.36%減の1038万米ドル、ASEAN諸国が26.67%増の1553万米ドル、日本が18.0%増の407万米ドルだった。米国は減少したが、東南アジアや日本などの華人が今も台湾の出版物に興味を持っていることがうかがえる。
また、国家図書館による「2020年台湾閲読風貌および全民閲読力年度報告」によると、コロナ禍の2020年でも図書貸出冊数は前年比1.41%減の8015万冊で、全国の図書館利用登録件数は1839万件で前年比8.88%の成長だった。紙の本の閲覧数は前年とほぼ変わらず、電子書籍の閲覧数は42.35%成長して363万冊に達した。コロナの期間中、普段は本を読まない人が電子書籍を借りていたと思われる。
紙の本であれデジタルであれ、ひとつのメディアが広告と購読料だけで存続するのは容易ではない。特にデジタルメディアは大量の閲覧量を必要とするため相当量のコンテンツがなければならず、従来の紙の本より原価がかかる。そのため独自のブランド価値を構築することが重要となる。近年は発行部数は多くないが内容やデザイン面で高い質を維持する雑誌が増えていることからも、この現状がうかがえる。
オンラインの読者がSNSでさまざまな文章を読む行為とは異なり、紙の雑誌の読者はわざわざ開いて読むのだからオンラインの読者よりブランド意識が高い。私たちはリアルな世界に生きており、リアルなもの(カフェや書店の陳列など)は目に入りやすい。将来的にデジタルで本を読むことが主流になったとしても、実体ある雑誌は現在の黒いレコードのように、人々の趣味やセンスの象徴となるだろう。
では、どのように内容の深い魅力的な雑誌を作ればいいのだろう。将来の複合型の読書形態(ネット、紙、空間、映像、音声など)に、どう対応すればいいのか。マーケチング面では、どのように知的財産(IP)を活かしてイベントや映像化、周辺商品を生み出すか。——『光華』今月号のカバーストーリーに、何らかのヒントが見出せるかも知れない。