「蘭嶼」という名前が出現する前、タオ族の人々はここを「人の島」と呼んでいた。しかし、ここでは人は最も謙虚な存在だ。
海はしたい放題。激しく島を抱き込み、土地への愛情を示して海岸にサンゴの花束を残す。
山はしたい放題。海から数歩退いただけで険しくそそり立ち、海と集落を見下ろす。
夜になると、原始の鳴き声と明るい星がすべての人の動きを抑えこむ。世界に千羽のみとなった蘭嶼コノハズクが懸命に仲間に声をかけ、互いが生きていることを確認しあう。
「人の島」というのは、人に属する島という意味ではない。謙虚に大自然と共存し、島から受け入れられてきたタオの人々は、人が治める島ではなく、人が住む島と呼んできたのである。
だからこそ、彼らは木を一本倒せば、すぐに木を一本植え、祖先が認めた食物しか食べず、食べる分しか魚を捕らない。並べて日に干したトビウオは、それよりずっと多くの生き物が海の中で悠々と繁殖していることを示している。
山にハイキングコースを設けることさえ拒むタオの人々が、漢人が横暴にも持ち込んだ放射性廃棄物を悪霊かのように追い払おうとするのは当然だ。
人は、この世でしたい放題してよい存在ではない――これはタオの祖先からの教えだ。その見返りとして、彼らは最も青い海と緑の山、そして美しい故郷を得ているのである。

「天池」はタオの人々の間では悪魔の地とされているが、今は人気のある観光スポットだ。

カヌー「併板舟」は山の恵みだが、その技術は忘れられつつある。

日が傾くと、蘭嶼の街には家路を急ぐ人のほかに、のんびりと散歩する豚の一家も出てくる。

この可愛らしいキノボリトカゲは、驚くと腕立て伏せをして敵を威嚇する。