情熱を育てる
「幸い台湾ではすでに創造力の重要性が認められており、それを包容する態度が生まれています。手本となる代表的人物もいるので、これからに期待できるでしょう」と語る呉静吉さんは、文化面での弱点は改善されつつあるが、それは系統だった変化ではないと指摘する。教育部門は、すでに創造力を教育の核心と位置づけているが、産官学の足並みが揃っておらず、これが一体となれば大きな力になるだろう。
実際、アメリカでの特許登録件数を見ると、台湾は、アメリカとドイツと日本に次いで世界で4番目に多く、これは創造や発明の力があることを示している。ただ台湾の権威的で競争を重視する教育方法が、皆の頭を縛り付けているのである。
2002年に教育部が「創造力教育白書」を出してから我が国の創造力プロジェクトがスタートしたが、生徒の創造力を育てるには、どのような方法があるのだろうか。
「創造力教育白書」は、まず創意に対する一般の誤解を解いている。例えば、創意とは天性のもので後天的に学べるものではないという誤解、また大部分の人は変化を恐れて創意を楽しめないという誤解などである。創造力は長い時間をかけて育むもので、間違えながら学ぶことも必要だ。しかし、進学が重視される台湾では学校教育は学科の成績と短期間での成果を求めるため、創意がおろそかにされてきたのである。
創造力教育の顧問を務める政治大学商学部の呉思華学部長は、創造力の提唱は、台湾経済が従来型から知識型へと転換してきたことと関わっていると説明する。「製造業は大規模な連続生産を求めるため、規律がなければ品質の安定した製品はできません。それがナレッジエコノミーの時代になると、価値は生産効率ではなく、革新や個人の創意から生まれるため、創造力の活用範囲が大きく広がったのです」と言う。
ただし、少なからぬ教員や親が教育改革政策に失望している現状があり、創造力教育がもう一つの教育改革とされないよう、重点はカリキュラムの変化には置かないと呉思華教授は言う。これまでの教育改革は批判を強調しすぎ、情熱を奨励しなかった点に問題がある。
創造力教育は4年間の実験計画で、年間6000万の予算が組まれている。精神面では多様化や差別化を奨励し、実務面では教育方法の革新、教材改革、生徒の創意表現から学校空間の改造まで、よいアイディアはすべて支持される。このようなボトムアップ方式で行なわれるため、阻害も少ない。

文化大学マスコミ学科の卒業展を宣伝するために、街に繰り出した学生たち。