オーストロネシアの刺青文化をつなぐ
オーストロネシア系諸族は広大な範囲に暮らしているが、互いにそのタトゥーを見ると、すぐに親しみを覚える。宋海華の友人で清華大学人類学科助教の林浩立によると、以前、台湾大学とニュージーランドの学校が協同でカリキュラムを設けた時、マオリの学生が交流のために台湾を訪れた。そして林浩立が授業でパイワン族の手彫りの刺青文化を紹介したところ、マオリの学生たちは宋海華に会いたいと言ってきた。これらの学生たちが宋海華のアトリエを訪れた時は、まるで古い友人と再会したかのように互いに抱擁し、それぞれの身体に彫られたタトゥーについて話し始めた。初めて会った人同士にはまったく見えなかったというのである。
林浩立は、ハンドパッティングの起源は、オーストロネシア系諸族が初期に製作していた土器の伝統と関わるのではないかと考えている。土器の制作には棒でたたいてならす工程があり、また出土した焼き物の模様はタトゥーで見られる図案と似ているからだ。「ハンドパッティングの動作は、オーストロネシア人にとって顕著な肉体の記憶なのでしょう」と語る。
マーシャル諸島から来たNannu Kabuaさんによると、彼女の家族もこの失われた技術を知っているそうだ。姉で、マーシャル諸島の外交・貿易相でもあるKitlang Kabua氏も、絵の才能がある妹がパイワン族の彫り師である宋海華に出会え、手彫りの刺青技術を学ぶことを喜んでいる。この技術はマーシャル諸島にとって非常に貴重な文化だからである。Nannu Kabuaさんによると、他の家族もハンドパッティングの意義を知っており、家族の特定のメンバーだけが入れられる刺青や、どの部位に刺青を入れるかなどについても知っているそうだ。さらに重要なのは、タトゥーはルーツを知る鍵のようなもので、祖先について知る扉を開くものなのである。
Nannu Kabuaさんは、手彫りの刺青を学ぶことでオーストロネシア系諸族の歴史や太平洋の島々のつながりを知ることができたという。また宋海華を通して彼女もハワイのKeone Nunesと会うことができ、それぞれの故郷の航海文化について語り合った。
この3人の不思議なつながりは、手彫りの刺青文化の継承をもたらしている。2019年に高雄で開かれた国際タトゥー博覧会で、宋海華はKeone Nunesのアシスタントを務め、2022年にはNannu Kabuaさんが宋海華の助手を務めた。彼らの友人である林浩立にとって、これらはすべて学術研究を越える貴重なシーンだったと言う。オーストロネシア文化を知ることは決して難しくない。まず、彼らの身体に刻まれた刺青の図案から話を広げていけば、太平洋の島々の探索を始めることができるのである。