調理に注意
陳署長によると、間接喫煙や調理時に出る煙が肺腺癌をまねく危険因子となっているとする研究結果が出た。
よく知られているように喫煙は肺癌を引き起こす重大な危険因子である。リスクは喫煙しない人の3〜5倍に及ぶとされている。ただし、間接喫煙の場合も、一般の約2倍とリスクは高い。つまりは、やはり禁煙が要点なのである。また、風通しのよくない場所で調理をした場合もリスクは3倍に高まる。
頼基銘さんによれば、喫煙者によって1回「ろ過」された煙と同様、調理で出る煙や煤煙などは分子が比較的小さな発癌物質で、気管支の末端まで達しやすく、肺腺癌を引き起こしやすい。
国泰病院胸部外科の劉栄森医師は、中国大陸河北省熊県の例を挙げる。その地方では洞穴の中で煮炊きするため、女性の肺癌罹患率は他地域の8倍に上っているという。
調理の煙を決して侮ってはいけない。統計によれば、調理に換気扇を使わない女性が肺腺癌にかかる割合は使用者の2.47倍、動物油を使う人は植物油を使う人の4.32倍だ。換気扇の位置をできるだけ低くして排気性を高める以外にも、油を使わず蒸す、煮るといった調理法に変えたり、調理が終った後も10分ほど換気扇を回し続ける、また鍋に材料を入れる前に油を熱し過ぎないようにするなどの工夫が必要だ。
ほかにも、炭や油から出る煙、線香の煙にも発癌物質が含まれるので注意しなくてはいけない。
これら外的要因だけでなく、遺伝子に対しても研究が進んでいる。
国家科学委員会の研究計画に参加している台湾大学病院内科部胸部科の楊泮池医師によれば、台湾、香港、シンガポール、中国大陸東南海岸地帯では肺腺癌の発生率が異常に高いという。欧米諸国では肺癌のうち腺癌の割合は35%に過ぎないが、台湾では70%にも上るため、遺伝子との関係が疑われる。母親や姉妹が肺腺癌に罹った人はリスクが2〜5倍に高まり、親子代々罹患するという悲劇も見られる。同じ環境にいるというだけでなく、遺伝子も大きく関与している可能性が高いと、陳建仁さんは指摘する。
国家衛生研究所は台湾大学や栄民総合病院と協力してCYP1A1、CYP1A2、CYP2C19といった20以上に及ぶ遺伝子が肺癌と関係あることを突き止めた。これらは薬物代謝やDNA修復酵素、女性ホルモンのレセプターなどと関係があり、具体的な発癌のしくみについては更に研究が続けられなくてはならない。陳建仁さんによれば、研究結果が出れば、遺伝子的に癌に罹りやすい人がわかり、定期的に検査を行なえるようになるという。

喫煙は肺癌の最大の原因である。2000年、フロリダ州の数十万の喫煙患者が集団で煙草メーカーを訴え、メーカー側は「半世紀の間に数百万のアメリカ人の命を奪った」として1450万米ドルの賠償金を支払うこととなった。